2. カンバン (Kanban)

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カンバンとは?

次に、プロジェクトマネジメントにおける「カンバン」について見ていきましょう。

もともと「かんばん方式」とはトヨタ自動車におけるジャストインタイム生産システム(JIT)を表す言葉で、ジャストインタイムとは*「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」*という意味になります。

自動車のように3万点以上にものぼる部品から成り立っている製品を、大量に、しかも効率良く生産するためには、部品の調達のために、緻密な生産計画を立てる必要があります。
生産計画に応じて「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」供給できれば、「ムダ、ムラ、ムリ」がなくなり、生産効率が向上する、という考え方です。

その根幹を担うのが、*「かんばん」*と呼ばれる商品情報を管理するカードです。スーパーマーケットや量販店では、商品名・品番・置き場所など、商品に関する情報が記載されている商品管理用のカードが使われています。
トヨタではこのカードを「かんばん」と呼び、生産管理の工程に道具として使用したことから、「かんばん方式」と呼ばれるようになりました。

一方、特にソフトウェア開発の現場では、従来の「かんばん」と区別するために、カタカナ表記の「カンバン」(もしくはアルファベット表記のKanban)という表記をつかって、プロジェクトマネジメントが行われています。
※注:明確な区別をしていない方もいます

プロジェクトマネジメントの現場では、商品管理用カードの代わりに、壁やコルクボードなどの「ボード」(Board)に貼られた付箋や情報カードのことを「カンバン」(Kanban)と呼びます。
このボードに、現在何をしていて、何をするべきかをカンバンで可視化し、プロジェクトを進めていきます。
  

プロジェクトを見える化する

カンバン手法にも様々なバリエーションが存在しますが、基本的には次のような手法で進めていきます。

1. 「バックログ」と呼ばれる場所に1タスクを1カンバンとして付箋に書き出して貼る

2. その中からプロジェクトマネジャーが「To Do」に優先事項のカンバンを移動

3. 「To Do」の中からメンバーにタスクを割り振り、カンバンを「開発中」に移動させる

4. 開発が終わったカンバンを「完了」に移動させて、デプロイ担当がカンバンを引き取ってデプロイする

5. 終わったカンバンを「公開」として上げる

カンバンではプロジェクト全体を見とおすことができるので、ボトルネックになっている(行き詰まってプロジェクトが進まなくなっている)部分に人的リソースを移動することで、プロジェクトをできるだけ進行させるようにします。
  

3. スクラム (Scrum)

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スクラムとは?

*「スクラム」*は、スポーツのラグビーにちなむ、近年注目されている開発手法の一つです。
分類としてはアジャイル型であると言われますが、カンバンのメリットも引き継いだ開発手法として、注目を集めています。

一つの場所に集まった少人数のチームがプロジェクトを短期サイクルで回していく、というアジャイルの特徴を残しながらも、よりチーム内でのコミュニケーションを重視しているのがスクラムの特徴です。

それでは、スクラムで行うプロジェクトマネジメントは、どのように行われるのでしょうか。

1. プロダクトバックログと呼ばれる場所に、プロダクトに必要な要素を書き出し、優先順位を並び替える

2. プロジェクトマネージャーは、マネジャースプリントと呼ばれる実際の開発工程で実現させたい項目を、プロダクトバックログから抜き出す

3. スプリント期間中、必ず毎朝「スクラム会議」と呼ばれる朝会を開き、実現したいバックログをメンバーに伝える。メンバーには「昨日やったこと」「今日やること」「障害になっていること」を確認する

4. ひとまとまりのスプリントが終わったら、スプリントレビューを行う。スプリントとスプリントレビューは、製品の機能や品質が十分であると顧客が判断するまで繰り返される

5. クロージャーと呼ばれる最終段階で、デバッグ、マーケティング、販売促進等を行う

毎朝定期的にレビューを行うことで、ボトルネックになっている部分が明確になり、プロジェクトを計画通りに進めやすいというメリットがあります。
  

計画 vs 経験

それでは、あえてスクラムを採用するメリットはどこにあるのでしょうか。
注目したいのは、リーダーであるプロジェクトマネージャーとメンバーとの関係性です。

従来のアジャイル型開発やカンバンによる開発では、リーダーは*「チームを引っ張る単一の責任者」として捉えられてきました。リーダーを中心に計画を行い、その指示に従ってメンバーはプロジェクトを着実に進めていきます。しかし、スクラムでは朝会を採用することで、「伝統的なリーダーが行ってきたことを、できる限りチーム自身が行う」*というスタイルをとります。

リーダーは細かくチームに指示することに責任を負うのではなく、自分たちで考えてプロジェクトを動かすことに責任を持ちます。朝会でもリーダーは方向性を示すことは行いますが、メンバーによる意見の掛け合わせがプロジェクトを前進させるのです。