日本語の表記において、漢字は大切な要素の1つです。
多くの人は「日本人なんだから漢字くらいわかるよ」と言うかもしれません。

実際、現代ではパソコンの浸透により、漢字はより手軽に記述できるものとなりました。
しかし、漢字は使い方によって文章を読みづらくしてしまう側面もあります。

例えば以下の文章を読んでみてください。

「藝術家の一人、草間彌生による大規模個展の開催が明らかになった。」

この文章は日本語としての意味は掴めるものの、なんとなく読みにくさを感じるのではないでしょうか。

「芸術家のひとり、草間彌生(くさま やよい)による大規模個展の開催が明らかになった。」

このように漢字の表記を意識して書き換えると、読みやすさが向上します。
常用漢字を用いたり、漢字をひらがなに直したりと、小さなポイントをおさえるだけで読みやすさに大きな差が生まれます。

今回は、漢字を使って文章を書く際に気を付けたい5つの注意点を解説します。

日本語の基本的な要素だからこそ、漢字の表記は掴んでおくべき知識です。
誰にとっても読みやすい文章を目指して、ライティングの知識を学んでいきましょう。

漢字の種類

現在、日本国で利用されている漢字には大きくわけて3つの種類があります。
  

1.常用漢字

一般の社会生活において利用する目安となる2136字の漢字です。
内閣府によって告示されている『常用漢字表』では以下のとおり、説明されています。

1 この表は,法令,公⽤⽂書,新聞,雑誌,放送など,⼀般の社会⽣活において,現代の国語を書き表す場合の漢字使⽤の⽬安を⽰すものである。
2 この表は,科学,技術,芸術その他の各種専⾨分野や個々⼈の表記にまで及ぼそうとするものではない。ただし,専⾨分野の語であっても,⼀般の社会⽣活と
密接に関連する語の表記については,この表を参考とすることが望ましい。
3 この表は,都道府県名に⽤いる漢字及びそれに準じる漢字を除き,固有名詞を対象とするものではない。
4 この表は,過去の著作や⽂書における漢字使⽤を否定するものではない。
5 この表の運⽤に当たっては,個々の事情に応じて適切な考慮を加える余地のあるものである。

上記の「1」にあるように、常用漢字は新聞や行政の文書など公的な場所で用いられ、社会に広く定着してる漢字群です。
日本語で文章を書く際にも基本となる漢字と言えるでしょう。
  

2.教育漢字(学習漢字)

常用漢字の中でも、小学校で教えられるものとして『学年別漢字配当表』に定められた1006字のことです。
  

3.人名用漢字

新生児に付けられる名前として、『人名用漢字(別表)』に定められた285字のことです。
「乃」「也」「萌」「杏」「亘」などが該当します。

常用漢字と合わせて「政令漢字」と呼ぶ場合もあり、戸籍に登録可能な漢字として法務省から公開されています。

人名用漢字は音訓が定められている常用漢字とは異なり、基本的に読み方が限定されていません。

参考:
子の名に使える漢字|法務省
新「ことば」シリーズ14「言葉に関する問答集―よくある「ことば」の質問―」 問26|国立国語研究所
  

漢字表記に関する5つの注意点

日本語では漢字とひらがな、カタカナを合わせて使用することで、短い文字数の中でも多くの情報を表現することができます。
特に漢字は*「海(うみ)」*のように、1字の中に複数の音と意味を表すことができる便利な文字です。

そのようなメリットの反面、使い方を誤ると読みづらくなってしまったり、伝えたい内容が伝わらなかったりと言うデメリットもあります。

では、記事執筆の中でも特に気を付けたい5つのポイントについて解説していきます。
  

1.常用漢字を利用する

常用漢字とは*「⼀般の社会⽣活において,現代の国語を書き表す場合の漢字使⽤の⽬安」*です。
逆にいえば、「絆」や「戌」常用漢字以外の漢字は「表外漢字」と呼ばれ、公的な文書での利用は推奨されません。

学校教育の指導基準を定めた『学習指導要領』でも常用漢字での教育を基本としているため、表外漢字は多くの人が読めない可能性があります。

特別な意味をもたせて使用したい漢字でない限り、常用漢字を利用するように心がけましょう。

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引用:常用漢字表(平成22年内閣告示第2号|文化庁

文化庁のページからは、常用漢字表の音訓索引も可能です。
記事の執筆中に「これって常用漢字じゃないかも」と気になる漢字がでてきたら、検索して確かめてみましょう。

参考:

常用漢字表の音訓索引|文化庁
  

2.難読語を使わない

例えば、*「耽溺(たんでき)」「波及(はきゅう)」「両雄(りょうゆう)」のように、常用漢字であっても読み方の難しい漢字があります。
ほかにも
「彌(や)」「藝(げい)」*のような旧字体を用いる時にも注意が必要です。

自分の届けたい読者が持っている知識に合わせて、わかりやすい言葉を選ぶように意識しましょう。

また、読むのが難しい漢字の中には同じ音で別の漢字を用いることが推奨されているものもあります。

【例】
 衣裳→衣装、遺蹟→遺跡、一挺→一丁 、叡智→英知

伝えたい内容からずれないのであれば、上記のような書き換えも利用しましょう。

参考:
問題例|日本漢字能力検定
「同音の漢字による書きかえ」について(報告)|文化庁
  

3.ひらがなに書き換える

より丁寧な言葉づかいを表現するために、漢字を多用していませんか?
そのような場合、むしろ読者にとって読みづらい文章になっている場合があります。

例えば、「宜しくお願い致します」という言葉も「よろしくお願いいたします」とひらがなへと書き換えることで読みやすくなります。

また、「表外読み」という常用漢字で表記されていない読み方での利用も注意が必要です。
*「徒に(いたずらに)」「頻りに(しきりに)」*のような語句は、漢字は一般的に利用されていても読み方は常用漢字外となっています。
一般には定着していない読み方なので、漢字を利用せずに「いたずらに」「しきりに」と言うひらがなで表記するように意識しましょう。

企業によっては表記のルールを決めて、どの語句をひらがなにするのか社内で統一している場合もあります。
複数のメンバーで記事の作成に取り組む場合は、ルールを決めて取り組むようにしましょう。

参考:
ちょっとひらがなに直すだけで、文章はこんなにプロっぽくなる
知ってる?「表外読み」読めない常用漢字に注意|日本漢字能力検定

4.送り仮名に注意する

漢字の後に続く「送り仮名」にも注意が必要です。
日本国では常用漢字を利用する際の「送り仮名の付け方」を目安として定めています。

例えば、「あたり」という言葉は「当り」という表記ではなく、「当たり」という送り仮名が推奨されています。

このように、送り仮名においても目安となるルールが存在します。
予測変換機能で出てきたものであっても、読者にとって読みやすい送り仮名になっているのかを立ち止まって考えてみましょう。
  

5.使い分けに注意する

漢字の中には「制作/製作」のように、同じ音であっても使いわけがされている語句があります。

*「特徴」「特長」*の違いを例に挙げましょう。

・特徴……ほかのものと違って目立つ点を指し、いい意味でも悪い意味でも使われる。
・特長……ほかのものと比べて優れた点を指し、悪い意味では使われない。

このように、同じように見えても使いわけや書きわけがされている場合もあります。
意味が異なってしまう場合もあるので気を付けましょう。

こちらの記事では使いわけの中でも特によく使用する10語について解説しています。
ぜひ参考にしてください。

参考:
間違って覚えてたら恥ずかしい!ライター、編集者は知っておくべき正しい漢字の使い方10選|ferret
書き分け、使い分け|日本漢字能力検定
  

まとめ

*日本国では、漢字の使い方について「常用漢字」を用いる事が基本的なルールとして定められています。*ですが、パソコンの浸透により、常用漢字以外の漢字でも入力が可能であり、気付かずに常用漢字外の漢字を利用してしまう方もいます。

誰にとっても読みやすい文章にするには、以下の点に気を付けて表記するようにしましょう。

・ 常用漢字を使う
・ 難読語を使わない
・ ひらがなに書き換える
・ 送り仮名に注意する
・ 使いわけに注意する

日本語は「漢字」「ひらがな」「カタカナ」と3つの表記が混ざり、わかりづらい文章になりがちです。
自社のホームページで記事を掲載する場合は自社内でも表記のルールを定め、統一した基準で文章を作成するようにしましょう。