特徴の異なる人たちが上手に融合し、多様性を活かすことで大きな成果が得られる。
  
スポーツの成功例としては、決して珍しい話ではありません。
以前ご紹介した記事コンテンツでは、陸上 男子4×100mリレー日本代表チームが、2008年の北京大会、2016年のリオ大会とオリンピック2大会でメダル獲得という快挙を成し遂げたシーンを例に、チームワークの理想形についてご説明しました。
  
参考:
"北京で銅"と"リオで銀" なぜメダルを獲得できたのか?「陸上競技4×100mリレー」から見るチームビルディングのヒント【スポーツ×ビジネス】|ferret
  

「理想形はわかったけど、どうすればそんなチームがつくれるのか」
「それを実現させるためにはどうしたらいいのか」

おそらく、上記のような疑問をお持ちの方もいらっしゃるはずです。

そこで今回は、チームワークの理想形を現実世界で表現するために必要なことは何か、というのをご紹介します。

今回の記事内容も前回同様スポーツの事例を交えますが、全てがビジネスの場面でも置き換えられるものばかりです。ぜひ本記事より業務に役立つヒントを1つでも見つけていただければ幸いです。
  

理想が現実に―― 何をすれば実現できるのかを紐解く

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「理想形」の話をしていると、響きが良く、使い勝手も良く、だけれども掴みどころのないフレーズがたくさん出てくると思いませんか。

例えば、「信頼しよう」「一体感を持とう」「団結しよう」「コミュニケーションをとろう」などというフレーズです。便利なのでよく使用しますが、「きちんと説明しろ」と言われてもできないですし、どうしたら実践できるのかもよくわからない、という方がほとんどです。また、よく耳にする「チームワークを大切にしよう」というフレーズも同様です。

ちなみに、皆さんの職場は「チームワークがいい」と胸を張って言えますか。

そう聞かれると、自信がない方も多く、そもそも「チームとは何なのか」「チームワークとは何なのか」が曖昧だから答えに困ってしまうという方もいるはずです。

まずは、本記事でも頻出する「チーム」「チームワーク」「チームビルディング」というキーワードについて整理していきましょう。これらを整理することによって、頭ではわかっていたはずの当たり前なことを再認識できるかも知れません。
  

「チーム」「チームワーク」「チームビルディング」とは何か?

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「チーム」という言葉に対して様々な定義がありますが、本記事では次のように解釈します。

私の考えるチームとは、「共通の目的、達成すべき目標に向かって多くのものを共有し、一定期間努力を続ける固定の集団」です。

これについて、丁寧に解説していきます。

まず、「多くのものを共有し」とありますが、単に時間・場所・道具の共有程度ではグループやサークル感覚です。目的・目標(企業ではMISSION、VISIONなど)に対する捉え方や、達成へのプロセス・役割意識まで共有できればチームらしくなっていきます。さらに、感情や過去の経験など、より個人的なことまで共有できると、いっそうチームらしくなります。

では、感情を共有できるとどんなメリットがあるのでしょう。

例えば、チーム内に自信に満ち溢れた10人と、不安を抱えた1人が混在しているサッカーチームがあったとします。お互いがその感情のズレを知らないまま、重要な試合に臨んだ場合、どんな結果が待っているでしょうか。おそらく、10人による積極的で見ごたえある連係プレーが、不安を抱えた1人によって分断されてしまうはずです。つまり、自信や不安といった感情面も共有できていなければ、真のチームに近付くことはできません。

一方で、ルーキーのデビュー戦、その選手がガチガチに緊張していることを周囲が察し、チーム全体が「デビュー戦であいつに勝利をプレゼントしてやろう」というムードになり、「お前のミスは俺たちが取り返してやるから思いっ切りプレーしろ」と声をかけて試合に臨めば、逆にチームはいつも以上に機能することもあるわけです。
  

目的・目標・価値観が曖昧なままでは成長が鈍化する

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続いて、「一定期間」というワードがありました。これはつまり、メンバーの入れ替えなども含め、チームはいつか解散する宿命にあることを意味しています。特にビジネスの世界でプロジェクトのために立ち上がったチームは、目標達成とともに解散するのが一般的です。

ここまで、チームの定義について考えてきましたが、グループやサークルとの違いは明確です。外国人観光グループとは言いますが、外国人観光チームとは言いません。ぼんやりとした目的(=観光)くらいは共有しているかもしれませんが、役割意識などは存在しないからです。

また、大学のスポーツサークルでは「サークルなんだから楽しく試合だけやろうよ」「せっかくやるんだからもう少し練習もやった方がいいと思う」「あいつは参加率が悪いから試合に出したくない」など、競技志向と遊びの間をさまようことが多いです。

これはまさに、目的・目標・価値観が曖昧なまま人が集まった典型事例だと考えられます。どんな組織もこの根幹部分が曖昧だと、永遠に意識の差が埋まることはありません。
  

チームワークを定義する上で、「個人の努力」は欠かせない

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ここからは、「チームワーク」について整理してみましょう。

皆さんのイメージでは、個々の力を如何に調和させ、「組織力」や「連携」を高めるかがチームワークだと理解していると思いますが、残念ながらそれでは50点の回答です。個々の弱点を補完するだけのチームでは、最後まで勝ち残ることは難しいのが現実です。

結局のところ、チーム力を高める上で最も有効なのは「個人の成長」だと思いませんか。

つまり、チームワークを定義する上で、「個人の努力」は欠かせない要素なのです。現状の知識・スキル・経験値に満足し向上心のない集団を、連係や組織力だけで成功に導くには限界があります。継続的に成長し続けるチームを下支えしているのは、メンバー個々の努力や成長なのです。

それらを総合すると、チームワークとは「チームの要求レベルに到達するためにメンバーが自己責任で努力を続けた上で、技術的・精神的・身体的な協力体制が整っている状態」と解釈できます。

少し前の話になりますが、2014年サッカーワールドカップブラジル大会に向けて、日本代表の本田圭佑選手がメディアの前で「個の成長が重要」というフレーズを繰り返し訴えていたことを思い出します。

おそらく日本人として、連携や組織力には一定の自信があったからこそ、個の成長(個人の技術やフィジカル的な側面)に伸びしろを見出したのだと思います。逆に捉えると、連携や組織力だけでは限界がくることを察知していたのかもしれません。
  

チーム力向上のために必要なこととは何か!

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最後に、チームビルディングという言葉を整理していきます。

読んで字のごとく、チームを構築するという意味ですが、「目標達成・生産性向上のために、メンバー間の連携を高める様々な手法の総称」とご理解ください。先述のチームワークの説明で触れた「個人の成長」については、それぞれの仕事における専門分野(特有な技術・知識・経験値など)のことですから、私が介入するのは難しい部分です。

ですから、技術的・精神的・身体的な協力体制を整えるために様々な手法を提供し、目標達成の手助けをするのが私の主な役目ということになります。