ユーザーが心からプロダクトを買いたい、サービスに登録して使いたいと思うときは、どういう時でしょうか。
ある時は自分にメリットを感じる時かもしれませんし、またある時は使わないことによって生じるデメリットや恐怖感から利用するのかもしれません。

もしあなたがコンバージョン率を少しでも上げたいと思うのであれば、「動機付け」について知っておくのがよいでしょう。
ユーザーは、何らかの動機があるからこそ、商品を購入したり、サービスに登録したりするものです。
逆に言えば、上手に動機付けを行うことによって、購入やサービス登録に対するコンバージョン率が大きく上がる可能性があります。

今回は、UXデザインをするなら知っておきたい2つのタイプの動機づけについて、ご紹介いたします。
ユーザーが無我夢中になり、サービスに没頭することができるようになれば、ユーザーは1日に何度もあなたのホームページを開くことになります。
効果的に動機付けを与えるには、どうすればよいのでしょうか。

「動機づけ」とは?

*動機付け(motivation)*は、もともと心理学などでよく引用される考え方で、行動を促し、目標に向かって行動を維持・調整する機能や過程のことを言います。

動機付けは、人間を含めた動物の行動の原因となり、多く分けると行動の方向性を決定する要因と行動の程度を定める要因に分類できます。
例えば、動物が何らかの行動を起こしている場合、食事のためなのか、子どもを守るためなのかはケースバイケースですが、何らかの動機付けが作用していることが考えられます。
また、その動物の行動の程度を観察することにより、動機付けの強さの違いを確認することもできます。

2つの「動機付け」を使い分けよう

動機付けには、「内発的動機づけ」(intrinsic motivation)と「外発的動機付け」(extrinsic motivation)の2種類があります。
これらの動機付けを使い分けてUXデザインを行うことが大切です。

1. 内発的動機づけ

「内発的動機づけ」とは、興味や関心、好奇心など、内側からもたらされる動機付けです。
例えば、子どもは知的好奇心が非常に高いので、大人が普段はとらないような行動を取ろうとします。
さらには、自分で問題を設定して自発的に思考し、課題を主体的に解決することも、内発的な動機づけによるものだと考えられます。

2. 外発的動機づけ

「外発的動機づけ」とは、義務や賞罰、強制などによってもたらされる動機づけのことです。
内発的な動機付けは行動そのものが動機となり得ますが、外発的な動機付けの場合は何かの目的を達成するために与えられるものです。
例えば、昇給や上司に認められたくて仕事を一生懸命に行う場合や、テストで高得点を取るために勉強する場合は、外発的な動機付けだと考えられます。

2つの動機づけをUXに応用させてみよう

理論的には、2つの動機づけがあることは分かりました。
しかし、問題は2つの動機づけをUXデザインにどのように生かしていくのかということです。
ここでは、話をUXデザイン寄りに具体化させていきましょう。

1. ゲーミフィケーション

*ゲーミフィケーション(Gamification)*とは、ゲームを面白くするために使われる技術やノウハウをゲーム以外の分野に応用していく取り組みのことです。
ゲーミフィケーションが指していることは端的に言えば「ゲーム以外のものにゲーム的要素を加える」ということに過ぎませんが、「ポイントがもらえる」「スタンプがもらえる」「レベルが上がる」など、外発的な動機付けを与え続けることで、ユーザーがサービスを使い続けてくれるという効果が期待できます。

現実世界でもラジオ体操のスタンプカードなど、身の回りでもたくさんのものに取り入れられています。
Facebookでも、「いいね」をインセンティブとしてユーザーが投稿し、サービスが活発になるという流れがうまく取り入れられています。

2. フロー体験

認知科学者のドナルド・ノーマンによれば、「情動に訴えかける設計」が成立しているインターフェイス上では、ユーザーがコンテンツに対して無我夢中になり、没頭していくと解説しています。
ユーザーが情動の客体に没入する際、*「フロー体験」(flow experience)*に入っていくと言われています。

「フロー」とは、社会心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱した考え方で、内発的に動機付けられた情動で活動に没頭している状態のことを言います。
フロー状態の中では、我を忘れ、時間感覚も歪み始めます。
フロー状態が終了してしまうと、フロー化していたひとは、まるで時間が一瞬で過ぎ去ったかのような感覚を覚えると説明されています。

例えば、NetflixやSpotifyなどの動画・音楽配信アプリを中心としたデザインが採用されているのも、ユーザーがフロー体験に没入しやすいような設計であると言われています。
アプリを開いたあと、アートワーク(ジャケット画像)がくっきりと浮かび上がるように見え、ブラウジングを進めるごとにユーザーはアプリに没頭していくのです。

参考:
明るければ良いというわけではない!なぜSpotifyやNetflixはダークカラーを採用しているのか?

3. マインドフルネス

*マインドフルネス(Mindfulness)*は、自分の身体や気分の状態に注意を向ける心理的なエクササイズのことです。
今現在起こっている内面的な経験や外的な経験に注意を向け、瞑想などの訓練によって意識を広げていきます。
自分らしく生きていくための方法として、注目を集めています。

マインドフルネスは、通常内発的な動機付けが原因で行われていきます。
自分を何とかして変えたい、という自己変革への欲求が、行動の原動力になっています。

Apple WatchやNike Fuelbandなどのアクティビティトラッカーで目標を設定し、達成したらメダルを与えたりするのは、ゲーミフィケーションと、自己変革の願望のどちらもうまく活用した例だということができます。

4. ブランド体験

昔から、AppleとMicrosoftはMacとWindowsという2大OSとして、よく比較されます。
Appleが得意とするハードウェア市場において、Microsoftがなぜこれほど参入に手こずったのかという理由は、ブランド体験にあります。

Windowsは、デスクトップのOSにおいては独占的とも言える製品ですが、ユーザーが良い製品だと感じているとは、一概には言い切れません。
一方、Appleブランドは、スタイリッシュで欠点のないデザインに定評があります。
もちろん、この評判ほどの価値は最近では提供されていないという主張もありますが、ブランドイメージがこの評判を後押ししているのは確かです。

一旦ユーザーがブランド戦略に取り込まれれば、ユーザーはそのブランドを身につけていたいという動機づけが発生するので、ユーザーのリピート率の向上に役立ちます。