2017年の4月にAmazonにて第1類医薬品の取り扱いが始まり、話題になりました。実は、「医薬品」のネットショップ販売自体は2014年の6月から解禁されています。
では、なぜ医薬品販売が可能であるにもかかわらず、多くのネットショップでは医薬品を取り扱っていないのでしょうか。

医薬品販売は医療に関わるため規制が厳しく、参入するためには販売方法と手順を理解した上で法律に則った販売体制を整える必要があります。
一方で、営業時間内の来店や外出が困難な消費者のニーズにも応えることができるため、通販業界で注目されています。

今回は、「医薬品」をネットショップで販売するために絶対に確認しておきたいポイント、「医薬品」「医薬部外品」の違いなどを解説します。

参考:
Amazonで第1類医薬品の販売開始、薬剤師が適正利用を確認した上で注文確定 | TechCrunch Japan

ネットショップで販売できる「医薬品」の分類

「医薬品」のネットショップ販売は、2014年の6月に解禁されました。 薬局で販売されている「第1類医薬品」「第2類医薬品」「第3類医薬品」と呼ばれる「一般用医薬品」が対象となります。

では、「第1類医薬品」「第2類医薬品」にはどういった違いがあるのでしょうか。

「第1類医薬品」は、副作用や相互作用といった安全上の問題から、ドラッグストアで購入する場合でも薬剤師からの説明が必要な医薬品です。ネットショップ販売の場合も、薬剤師による確認と情報提供を行う義務があります。
「第2類医薬品」は「第1類医薬品」と比べてリスクは低く、薬剤師による確認と情報提供が努力義務として設けられています。

医師の処方箋が必要な「医療用医薬品」は販売することができません。販売したい医薬品がある場合は、どの分類にあたるのか事前に確認しておきましょう。

以上のように、医薬品をネットショップで販売することはできます。しかし、販売するための準備など、参入するハードルは高いのが現状です。そのため、すでに環境が整っている大手ドラッグストアやネットスーパー、コンビニチェーン店によるネットショップ販売が主流になっています。

参考:
一般用医薬品のインターネット販売について PDF
  

「医薬品」と「医薬部外品」の違い

ドラッグストアなどで扱っている商品の中には「一般用医薬品」のほか「医薬部外品」と明記された商品があります。具体的には、サプリメントや整腸剤などが該当します。

なお、「医薬品」は厚生労働省によって認められた有効成分が含まれ、「治療」を目的とした効果を発揮する商品を指します。
一方で、「医薬部外品」とは「治療」する目的ではなく「予防」することが目的の商品であり、厚生労働省が許可した成分が一定濃度含まれているものを指します。

「医薬部外品」は、国内製造の販売業者から仕入れた商品であれば許可不要で販売できます。一方で、輸入もしくは自ら製造する場合、「医薬部外品製造販売業許可」を取得し、出荷する商品自体にも「医薬部外品製造販売承認」を受ける必要があります。

このように、「医薬部外品」の取り扱いでも、許可が必要な場合があるので、事前に確認しておきましょう。

参考:
薬のやさしい基礎知識 タケダ健康サイト
医薬部外品と医薬品医療機器等法について 東京都健康安全研究センター
  

ネットショップ販売で守るべき5つの項目

「医薬品」をネットショップ販売する上で守らなくてはいけない5つの項目を紹介します。
なお、実際の販売にあたっては「厚生労働省のホームページ」、もしくは厚生労働省が発表する「一般用医薬品のインターネット販売について(PDF)」を必ずご確認ください。
  

1. 有形店舗が運営すること

「医薬品」のネットショップ販売は「有形店舗(実店舗)」を運営していることが前提となります。ネットショップのみでの運営はできません。
実際、アマゾンジャパンが日本国内で「第1類医薬品」を販売を始めた際も「アマゾンファーマシー」という有形店舗を登録しています。

有形店舗(実店舗)は、週に30時間以上を目安に運営し、購入者の見付けやすい位置に標識を設け、用意に出入りできる構造であることが求められます。ほかにも、照明は60ルクス以上、実際に陳列されている商品をネットショップで販売することが条件として定められています。

参考:
Amazon.co.jp ヘルプ: 一般用医薬品、動物用医薬品に関する表示
  

2. 薬剤師の駐在

「第1類医薬品」を販売するためには、薬剤師による確認と情報提供が必要です。ネットショップ販売の場合は、メール等でやり取りを行うため、営業時間内に薬剤師が有形店舗に常駐していなければなりません。また、薬剤師の氏名や出勤シフトをネットショップ内に掲載します。販売時には、販売した薬剤師の氏名、販売時間などの記録を保存するというルールがあります。
  

3. 電話や対面での連絡先の明記

医薬品のネットショップ販売は、基本的に薬剤師とのメール等で確認を行った後に販売します。ですが、電話や対面での相談に対応できるように、住所や電話番号など連絡先を明記する必要があります。営業時間内の連絡先はもちろん、営業時間外の連絡先も明記します。
  

4. ネットでの販売が禁止されている医薬品を取り扱わない

ネットショップで販売できない医薬品もあります。「医療用医薬品」は、医師による処方箋が必要であるためネットショップでの販売はできません。また、「要指導医薬品」についても対面販売の義務があります。
  

5. 広告の禁止(口コミ・レビュー含む)

医薬品は購入者による口コミ、レビュー、レコメンドを禁止しています。ネットショップの売上に関わる「レビュー」ですが、医薬品である以上、絶対に掲載はできないため注意しましょう。

参考:
一般用医薬品のインターネット販売について PDF
  

ネットショップでの医薬品販売に対するニーズとは

ここまで紹介してきたように、「医薬品」のネットショップ販売を行うためには、有形店舗を持ち、薬剤師を雇用し、環境を整える必要があります。そのため、簡単には参入できない市場といえるでしょう。しかし、消費者のニーズがあるのも事実です。身体的な理由で移動が困難な方や、生活時間の関係で営業時間に入店できない方だけではなく、コンプレックス系商品(育毛剤など)を購入したい場合などがニーズとして挙げられるでしょう。

実際、大阪薬科大学が行った2013年に行った調査によると、ネットでの医薬品販売に対して「良いことだと思う」「どちらかといえば良いことだと思う」と答えた人は68.5%にものぼりました。また、2015年に「くすりの適正使用協議会」が発表した資料によると、ネットショップでの購入に対して「副作用」などの懸念よりも「価格」を重視する傾向が強いことがわかっています。また、営業時間を気にせず購入できることを評価する傾向があり、購入自体に不安は感じない方が半数を超えるという結果です。

購入時のリスクに対して不安を感じなさ過ぎるのは問題ですが、一方で非常に需要が高いことがわかります。

参考:
一般用医薬品のネット販売解禁から半年後の実態調査結果を発表
一般医薬品のインターネット販売に対する生活者の意向
  

まとめ

「医薬品」のネットショップ販売は、有形店舗の登録や薬剤師の駐在など、一般の事業者が参入しづらいのが現状です。分類によっては医療機関でしか販売できない医薬品もあり、必ずしも全ての医薬品を取り扱えないのもネックです。

しかし、実店舗で購入できない事情を持った消費者からのニーズがあるのも事実です。気軽に参入できる領域ではありませんが、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。