顧客の欲しいものが、求めるタイミングで揃っていることはサービス提供において重要なポイントです。しかし、顧客のニーズが多様化した今、その商品を揃えることも、ターゲットにピンポイントで届けることも難しくなってきています。

顧客の動きを把握し、適切なタイミングに適切なコミュニケーションを図ることで広告効果を生み出す手法を「リアルタイムマーケティング」といいます。

プッシュ型広告が飽和している今、顧客が求めている情報を適切なタイミングで発信することで差別化を図ることができます。

今回は、リアルタイムマーケティングの基本と実際の活用例を解説します。

リアルタイムマーケティングとは

リアルタイムマーケティングとは、顧客が必要とする情報を最適なタイミングで提供することでコミュニケーションを図り、広告効果を最大化するマーケティング手法を指します。1990年代、アメリカのコンサルタントであるレジス・マッケンナ氏が提唱しました。

顧客が求めているものを瞬時に把握する必要があるものの、それが成功すれば他のマーケティング手法より高い効果を期待することができます。

リアルタイムマーケティングには、2つのプロモーション方法があります。

【1】話題のニュースに便乗したプロモーション
【2】顧客データに基づくリアルタイムのプロモーション

それぞれの意味とメリット・デメリットを確認しましょう。

【1】話題のニュースに便乗したプロモーション

世間で話題になっているニュースやイベントに便乗し、企業としてコメントや宣伝を行います。最近は、FacebookやTwitterなどのSNSで企業アカウントが発信し、ユーザーの注目を集めることが多くなっています。

メリット

顧客にとっても身近な話題のニュースに対して一緒に盛り上がることで、顧客との距離を縮めることができます。また、広く長く注目を集める話題に便乗すると、その話題に関連付けられて印象も残りやすくなります。

SNSの投稿を既存顧客のユーザーが拡散してくれれば、新規顧客からの認知度向上にも繋がります。

デメリット

ユーザーの反響を呼ぶような投稿内容には、投稿者のセンスが問われます。期待通りに拡散されないこともあります。

無意識でも不謹慎な要素が含まれていれば、むしろ反感を買ってしまうこともあり得るので注意しましょう。また、広告の意図が先に伝わってしまった場合も不信感を持たれてしまう可能性があります。

企業からの発信としての許容範囲を慎重に判断する必要があります。

【2】顧客データに基づくリアルタイムのプロモーション

顧客の行動履歴やニーズをデータで解析し、リアルタイムでその顧客が求める情報を発信します。近年広がりを見せているビッグデータの活用により、顧客が求めるものを解析する精度は上がってきています。

メリット

プロモーションを考える際、どのような顧客を対象にするかというターゲット選定が重要です。ターゲットの普段の行動や求めているものをデータで把握することで、確実性の高いプロモーションを行えます。

デメリット

顧客をデータで解析するためには、個人情報のリスク対策と解析能力の向上が必須です。ビッグデータの活用に関しても、人手不足と技術不足が原因で取り組みに踏み切れない企業もあります。

参考:
ビッグデータとは?今更聞けない基礎知識から活用例まで解説|ferret[フェレット]

リアルタイムマーケティング事例

【1】話題のニュースに便乗したプロモーションの事例

停電中に機転を利かせたツイートが一躍話題に

リアルタイムマーケティングで話題になった有名なツイートです。2013年、アメリカで行われた「スーパーボウル」というスポーツイベント中、突然停電が起こり試合が中断されました。その間にオレオが投稿したのが上のツイートです。

「Power out? No problem.(停電?問題ないさ)」という呟きとともに、「オレオなら暗闇の中でもダンク(オレオを牛乳に浸す)できる」という画像を投稿しています。この機転を利かせた投稿は15,000回以上リツイートされました。

有名アニメ映画の名台詞のツイートにユニークな便乗

毎年「金曜ロードショー」で放映されるアニメ映画『天空の城ラピュタ』は、映画内の名台詞に合わせて「バルス」とツイートする恒例イベントがあります。2017年も、多くのユーザーに混じり、企業の公式アカウントもユニークな内容でTwitterへ投稿しました。

日清カップヌードルは看板商品のカップヌードルを使ったツイートを投稿し、98,000回以上リツイートされました。

他にも、多くの企業がユニークな投稿でTwitterを賑わせました。

参考:
#バルス 効果で29万RT!企業の『天空の城ラピュタ』ツイートまとめ|ferret[フェレット]

【2】顧客データに基づくリアルタイムのプロモーションの事例

カード会社のJCBは、カード決済を行った顧客に対してオススメの情報をリアルタイムに配信する「イマレコ!」というサービスを提供しています。顧客がある店でカード決済を行うと、その近隣のJCB加盟店舗のお得な情報や特典が配信される仕組みです。

このシステムには日立製作所も協力しており、ビッグデータを活用してつくられています。店舗があるエリアの購買傾向や会員の購買行動パターンを分析し、加盟店の強みを活かせるような仕組みを整えました。

参考:
"本当に役立つ"情報を"リアルタイム"に配信!カード会員と加盟店のうれしさをつなぐ新サービスを実現したJCBの取り組みとは
|株式会社日立製作所

まとめ

リアルタイムマーケティングは、顧客に自然に受け入られるような情報を発信することが前提です。誤ったアプローチをしてしまうと、むしろ印象が下がってしまうこともあるので注意しましょう。

話題の出来事で一緒に盛り上がったり、「今欲しいもの」を的確に勧めてくれたりする企業は、顧客にとって身近な存在になることができます。顧客との距離を縮めることで、長期的なファンをつくっていきましょう。