ミニマリズムやフラットデザインへの批判の論点

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近年、フラットデザインやミニマリズムは盛り上がりを見せていますが、それらのデザインに対する「違和感」を感じているデザイナーもいます。

確かに、余分な要素を削ってわかりやすくするのは大切なことですが、フラットデザインやミニマリズムがデザイン工学的なアプローチに対する最終解ではないのを、多くのデザイナーが次第に認識するようになってきました。

以下が、ミニマリズムやフラットデザインに対する「違和感」をまとめたポイントです。
  

1. ユーザビリティへの妥協

フラットデザインやミニマリズムは、すっきりとした合理的なデザインを強調することができますが、そうした特徴に固執し過ぎて、かえってユーザビリティ低下に対して見て見ぬふりをしてしまうことがあります。特に、画面領域が狭いモバイルサイトの場合には、こうしたリスクはさらに高まります。

影が一切ないフラットデザインは、全ての要素が同一平面上にあるように見えるので、どの要素がクリック可能なのかがわかりにくいという点も挙げられます。

デザインをシンプルにした反面、視界の奥行きを奪ってしまい、ユーザーが慣れているパースペクティブ(立体感)が失われてしまうのです。
  

2. 識別しづらい

フラットデザインを懐疑的に感じているデザイナーの中でも最も不思議に思っているのは、Microsoftがかつて採用したMetro UIです。

当初、このデザインは常にコンテンツがメインとなり、余計なグラフィックや効果がないのでかえって使いやすいのではないかと思われていました。しかし、結果的にはすぐに下火になってしまいました。ユーザビリティの低下にもつながりますが、アフォーダンスがない(どれをクリックすれば良いのかがわからない)ので、そのデザインに慣れていない方にとっては困惑してしまうものになります。

参考:
ノンデザイナーこそ知っておきたい「アフォーダンス」入門|ferret
  

3. 演出力に欠ける

フラットデザインは概してシンプルで洗練されたものですが、言い換えればどれも同じようなデザインになりがちで、インパクトに欠けてしまうことがあります。

一方、スキューモーフィックデザインは、結果的に細部まで作り込まれたデザインになることが多いので、視覚的にリッチであることに加えて「触ってみたい」「使ってみたい」といった演出感を出すことができます。
  

「スキューモーフィック」復活の兆し

こうしたデザイン嗜好の変遷を経て、スキューモーフィックデザイン復活の兆しが見えています。皮肉なことに、こうした復活はWebではないところから見られるようになりました。

ここでは、現在のスキューモーフィックデザイン復活に見られるポイントをまとめましたのでご覧ください。
  

1. 経験的に存在感を伝えられる

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単にスクリーンを見るだけではなく、日常生活自体に溶け込んでいるようなIoT製品は、よりリアルなオブジェクトとして日常生活に溶け込もうとしています。

Apple Watchの文字盤のデザインの中にはデジタルで独特ものもありますが、一方で文字盤の多くが本物の「腕時計」の様相に近いデザインが施されています。Apple Watchを身に着けているユーザーは、Apple Watchを上にあげた瞬間に時間を確認することができます。これは、私たちが短針と長針によって時間を確認することを経験的に知っているからです。
  

2. どこを押せばいいのかが明確

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iOSのデザイン変更でボタンに若干の影が認められるようになった

かつてはフラットデザインに挑戦したデザインも、今ではフラットなデザインのいいところを採用しながら、スキューモーフィックデザインの長所も取り入れているという方も少なくありません。つまりは、各々のメリットを採用することで、より良いデザインにしようと試みています。

その先陣を切っているのがAppleのiOSです。iOS 7以降、ミニマルでフラットなキーボードになりましたが、どこがボタンなのかがわかりにくいといった声も少なくありませんでした。ただ今では、それぞれのボタンに影をつけることでわかりやすくデザインしており、どこを押せばいいのかが明確になっています。
  

3. 実感をフィードバックする

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ARやVRの世界においては、スキューモーフィックデザインなしでは考えられません。私たちは、リアルな世界と同じようにAR作品やVR作品を体験したいと思っているはずです。物理法則に反したオブジェクトが登場したら、恐らく違和感しか感じないでしょう。