グリッドデザインにマテリアルデザイン……。

ここ最近、Webデザインは真っ直ぐなものを好むような傾向にありました。しかし、2017年はその流れに反して、柔らかみを持ったグラデーション調の新しいプチデザイントレンドが注目されました。それが、一般に**「Blob」**と呼ばれるものです。皆さんは、Blobを耳にしたことがありますか。

今回は、*2017年に流行したデザイントレンド「Blob」*について解説し、Blobを取り入れる際のポイントとともにお伝えします。

流行に敏感なデザイナーだけではなく、最近のWebデザイントレンドが気になる方も注目です。
  

「Blob」とは?


Dribbble

2017年に見られたプチデザイントレンドとも言える*「Blob」は、英語で「(インクなどの)しみ」*を意味する言葉です。

Blobは漠然として捉えどころのない形をしており、主にランディングページの全体的なデザインになっていることが多く見受けられます。最近のWebデザイントレンドでグラデーションを使うのが流行していますが、90%ほどのBlobデザインはグラデーションを使い、レイヤーの低層部に敷かれていることがほとんどです。


Dribbble

Blobはいわば "スライムのような形" をしているので数えたりすることはできませんが、柔らかく丸みを帯びているので、優しい雰囲気をユーザーに伝えることができます。
  

Blob出現の背景を考えてみよう

Blobは決して大きなデザイントレンドと言えるほどではないですが、このデザインを好んで使っているデザイナーは確実に存在しています。

UXデザイナーのイアン・ラッチマンジン氏によれば、以下がBlob出自の由来ではないかと考えられています。
  

1. フラットデザインへのブレイクスルー


Dribbble

Windowsのメトロデザインや iOS 7以降の厳格で冷たいデザインは、当たり前のようになってきました。一方、フラットでソリッドなデザインに対して、丸みを帯びたBlobのようなデザインが求められているのではないかと考えられています。
  

2. イラストの代わりとして

最近ではイラストを使うWebサイトも増えてきました。イラストを使うと親しみが持て、ユーザーとの距離が近くなったように感じますが、場合によっては少し子どもっぽいと感じてしまうこともあります。

ハンドメイドな作品は独自性を生み出しますが、「洗練さ」からはかけ離れてしまうので、多くのデザイナーはBlobを使って柔らかい物腰でありながらもクールさを演出しているのではないかと考えられています。
  

3. データ・ドリブンで近未来的なイメージにぴったり


Dribbble

デザイン心理学的な観点から言えば、左から右に波が上がっていくほうが私たちは安心感を感じ、より深い興味を持つのではないかと指摘されています。


Dribbble

iPhoneでも歩数や睡眠時間などを計測することが簡単になり、様々なグラフを目にする機会が多くなりました。Blobのような波形のデザインは、そうしたデータ・ドリブンで近未来的なイメージにぴったりなのです。
  

Blobを使う上での3つのポイント

Blobを使うのは、はっきり言ってしまえばデザイナーの好みかもしれません。実際、Blobを使わなくとも代替するデザイン案は多く出てくるはずです。

しかし、新しいモノが大好きなデザイナーは、なぜいち早くBlobを取り入れるのでしょうか。Blobを使うと、どのようなデザイン上のメリットがあるのでしょうか。
  

1. 「流れ」を生む


Dribbble

Blobは単に一方向的な規則的な形ではなく、大体の場合は不規則な形をしています。そのため、Blobを活用するとある種の*「流れ」「リズム」*が生まれるので、従来のフラットデザインが持っていた単調さを打開することができます。


Dribbble

Blobの中でも波のようにいくつかのかたまりを重ねたデザインは、流れだけではなく*「ダイナミックさ」*もあります。静止しているにもかかわらず動きを生み出すことができるのは、Blobの強みとも言えるでしょう。
  

2. 新しい意味で「余白」を活かせる


Dribbble

最近よく見かける*「ミニマリズム」*と呼ばれるトレンドは「余白」を強烈に意識していますが、余白が置かれる位置が「想定内」であって、見慣れてくると面白みがないと感じる方もいるかもしれません。


Dribbble

余白は文字どおり「白い部分」で、そうでない部分とのバランスで決まります。Blobでも白い部分とそうでない部分を明確に意識してわけるデザインをすることができますが、単調なミニマリズムのデザインに対して、不規則で予想外な「意外性」を楽しむことができます。
  

3. 様々な「表情」を生かす


Dribbble

Blobにはグラフでも使われるような波のイメージがあることは先ほどもお伝えしましたが、こうした起伏によって、まるで生きているかのようなさまざまな「表情」を生み出すことに成功しています。


Dribbble

逆に言えば、無機質に感じるものほど、Blobを上手く活用することで表情を出すことができるというわけです。Googleアシスタントで使われているちょっと変わったバランスの丸いBlobは、Googleのロゴをそのまま使うよりも一層何か人間的なものと対話しているような気持ちにさせてくれます
  

まとめ

Blobは小さなデザイントレンドとして看過されてしまうかもしれませんが、グリッドだったりフラットデザインだったりと、厳格できっちりとしたデザインに対して一石を投じる個性的なデザインとして注目すべきです。

実際のところ、グラデーションと一緒に用いるだけでも近未来的でカッコいいデザインになるので、身に着ける余地は大いにあるのではないでしょうか。

Blobは着実に人気を集めています。2017年には海外サイトを中心に使われていましたが、興味があれば使ってみませんか。