“企業の情報発信”と一言で言えど、プロダクトの認知向上やコーポレートブランディングなど、その目的は多様です。最近では、「採用ブランディング」を目的とした発信も増えています。

採用ブランディングでは、社員インタビュー記事を作成する機会もあります。社員の声を通じて、新製品の開発秘話やプロジェクトの裏話、社員の働き方の紹介など会社のストーリーを伝えることで、会社のリアルを感じてもらいやすくなります。

とはいえ、編集やライティングの経験がなければ、社員インタビューを実施して記事を制作するのはハードルが高く感じるかもしれません。今回は、未経験者に向けて、社員インタビュー記事を制作する際のポイントを解説していきます。

参考:
潜在層へのアプローチを狙う。「採用ブランディング」には継続的な情報発信が不可欠

社員インタビュー基本の制作プロセス

インタビュー記事を作成する際の流れは大きく以下のように分割できます。

  • 目的の整理
  • 人選
  • 企画
  • 準備
  • 取材
  • 執筆

制作を始める前に、各プロセスごとにおおまかなスケジュールを敷いておくといいでしょう。以下、各プロセスを順に説明していきます。

目的の整理、人選、企画

コンテンツの目的、ターゲットを明確に

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まずはその社員インタビュー記事で何を達成したいのか整理していきます。発信するテーマとターゲットを決めるようにしましょう。以前、立ち上げ時に発信テーマを整理する方法を紹介しているので参考にしてみてください。

参考:
注意すべきポイントは2点!企業が新規メディアを立ち上げる際に準備すること 〜競合、自社、ターゲット分析編〜

「誰」に「何」を聞くのかを決定

インタビュー記事の目的が整理できたら、「誰」に「何」を聞くかを整理していきます。以下に具体的なシチュエーションごとに、企画の例と実際の記事例をまとめているので、企画を整理するときの参考にしてみてください。

例1:ミッションに共感してくれる人材の応募を促したい

(目的)共感を得られそうな想定ターゲットに対して、自社のミッションを的確に伝える
(誰)想定ターゲットに近い属性を持つ自社の社員
(何)自社のミッションに対してどう感じているか、どのようにそれが業務に反映されているのか

こちらのケースにおける具体的な記事例はこちらです。

初めてデザインに出会ったマネージャーが見つけた、本質を追い求める組織の魅力とは

この記事では、社員の学生時代から現在までをなぞりながら、Goodpatchを選んだ理由がミッションへの共感も含めて書かれています。パーソナルなストーリーが軸に据えられているため、近しい経験や思考を持つ読者から共感が得られそうです。

続いて、次の事例へ。

例2:柔軟な組織の働き方や、それを支える社内文化を伝えたい

(目的)組織の柔軟な働き方や社内文化を知ってもらう
(誰)実際に時短など柔軟な働き方をしている社員数名
(何)各社員の日頃の働き方について、よかったことや感じている課題など

こちらのケースにおける具体的な記事例はこちら。

大事な商談の日なのに、保育園に預けられない──両親の代わりに営業チームで子守をした話

この記事では、子どもを保育園に預けられなかった社員をチームでどうサポートしたのかをインタビューし、2つの事例を紹介しています。

複数の社員のインタビューを交えて当日の様子が書かれているため、社員一人ひとりに共働きの社員をチームでサポートする文化が浸透している様子が伝わります。

次のケースは、会社というよりプロダクトの話を聞く場合です。

例3:先進的なプロダクトを開発している企業として認知を広げたい

(目的)自社のプロダクトの先進性について業界内外に認知を広げる
(誰)プロダクトの担当社員
(何)プロダクトの中身や開発の背景、どのような試行錯誤を経たのか、その取り組みに懸ける想い

具体的な記事例としては、下記に編集を担当したこちらの記事を挙げます。

人・モノを大切に見守るために。位置検知プラットフォーム「ロケーションネット」の可能性

この記事では、プロダクトのリリースに至るまでの過程をなぞりながら、その技術の持つ可能性を紐解きました。具体的なエピソードからは、関わったメンバーの熱意や新しい技術を絶えず追求する姿勢が伺えます。

このように、目的によって誰に何を聞くかが変わるため、事前に整理した上でインタビュー対象をアサインしましょう。

事前準備

実りあるインタビューのための事前共有

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具体的な企画が整理できたら、取材の準備に取り掛かりましょう。まずは当日の質問事項を作成します。記事の流れを想定し、必要な情報を話してもらえるよう質問を考えていきます。

例えば、プロダクト開発の大まかな流れや各プロセスでの試行錯誤を追い、最後に今後の展望を紹介する構成なら、以下のような質問が考えられます。

  • どのような狙いで開発がスタートしたのか
  • 開発する上で苦労した点、それらをどう乗り越えたか
  • プロダクトを通してどのような課題を解決していきたいのか
  • 今後どのような領域で活用が広がっていきそうなのか

1時間前後のインタビューの場合、記事作成のために必ず聞きたい質問は10問以内にとどめておきましょう。記事を作成するのに必要な質問を優先し、他の質問は時間が余った場合に聞く用としてメモを残しておきます。

完成した質問項目は、インタビューの目的と合わせて共有します。事前に質問項目を共有しておくことで、インタビューに慣れてない人も事前に話す内容を準備できます。完成イメージに近い記事などがあれば、合わせて共有できるといいですね。

「出来事の時系列を確認していたら時間があっという間に過ぎた」といった失敗を未然に防ぐためにも、基本的な情報は事前にテキストでヒアリングして把握しておきます。インタビューの時間は直接聞かなければならないことにフォーカスしましょう。

興味を引くビジュアルのための準備

インタビューや写真撮影を行う場所は事前に決めておきましょう。SNSではアイキャッチ画像とタイトルによって読まれるかどうかが大きく変わります。記事内容と関連する場所を選ぶなど、より読者の印象に残る場所はどこかを考え、工夫してみてください。

さらに余裕がある場合は、伝えたいイメージに沿って、自社のTシャツを着てもらう、コーポレートカラーを着てもらうなど、当日の服装を打ち合わせしておくといいでしょう。

取材当日

相手の緊張をほぐすための工夫

当日は取材する側と同じくらい、される側も緊張しているものです。なるべくリラックスして話せる環境をつくれるよう心がけましょう。いつも働いているメンバーの近くだと照れる人も多いため、インタビュー場所はなるべく他の社員には聞こえない場所で実施するといいです。

またインタビューの冒頭は、後で修正できる旨を伝えましょう。間違ったことを言ってしまったらどうしようという不安から、相手が話すのを躊躇ってしまわないようにするためです。

「どう感じたか」を丁寧に掘り下げる

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ビジネスの場では「~~という判断で~~をした」といったように、客観的な事実をロジカルに伝えることが求められます。しかし、インタビュー記事では事実だけでなく、その人が「どう感じていたのか」といった部分も盛り込むことも大切です

「どう感じましたか」というオープンクエスチョン(二択で答えられない質問)で答えづらそうであれば、「それは大変そうですね」や「それは嬉しかったでしょうね!」など二択で答えられる質問にしてあげると、慣れていない社員も答えやすくなります。

加えて、印象に残っているシーンを聞いたり、大変さや嬉しさといった感情をさらに深ぼっていく質問をすると、その人らしさや感情をありありと伝えるために必要な言葉を引き出すことができます。

インタビュー中は相手の話す様子を観察し、楽しそうに話していた、熱がこもっていた瞬間をメモしておくと、執筆時に伝えるべきポイントが整理されます。

記事執筆

インタビュー記事作成の基本は以下の記事にまとまっているので、ここでは社員インタビュー記事特有の気をつけるポイントを整理していきます。

参考:
まとめるのが難しい・・・インタビュー記事の基本的な書き方を解説

冒頭でどんな誰が何について話すのか明示

記事の冒頭では社外の人が読んでもわかるように、取り上げる社員が誰なのかをしっかり説明します。どの部署でどのような仕事をしている社員なのか、部署名だけでは社外の人にとっては、わかりづらい場合も考えられます。具体的にどのような仕事をしているか読者がイメージできるように記述しましょう。

自社のことを褒めすぎないようにする

せっかく自社のメディアなのだから精一杯アピールしたい気持ちはわかります。しかし、あまり褒めすぎていると、読者との間に温度差が生まれてしまいます。「この記事は、褒めすぎていないか」と客観的に見直すよう意識しましょう。

また、自社の良い部分だけでなく、抱えている課題についても素直に伝えるほうが、読み手に書かれている内容を信頼してもらいやすくなります。

社員の心が熱くなったポイントを捉えて記事に反映

インタビュー時に社員の様子を記したメモを参考に、回答のなかでターゲットの心に刺さりそうなポイントを絞り、そこが伝わるよう執筆しましょう。機械的に質問と回答を繰り返している、何が起きたかという事実が並んでいるだけの記事では、なかなか読者の印象にも残りづらいものです。

あれもこれも伝えようとするのではなく、当初の目的に立ち返り、もっとも伝えるべきポイントは何かを忘れないように書き進めます。

まとめ:ポイントを抑えて社員インタビューに挑戦しよう

無事にインタビュー記事が公開できたら、必ず社内でも共有するようにしましょう。社内のメンバーが自社について理解を深めるきっかけになったり、ロイヤリティーの向上につながる場合もあります。

プロセスごとに気をつけるポイントがわかれば、編集やライティングの経験がなくても、しっかりと伝わる社員インタビューが作れるはずです。コーポレートブランディング、特に採用広報を目的にメディアを運営している方は、ぜひ一度挑戦してみてください。

(執筆協力:向晴香)