2024年4月の改正障害者差別解消法の施行に伴い、「Webアクセシビリティへの対応が義務化されるのではないか」という情報が見聞きされます。

しかし、実際には法改正によってWebアクセシビリティへの対応が必須なものとして義務化されるわけではありません

法改正とWebアクセシビリティの詳しい内容について、法律事務所ZeLo・外国法共同事業の由井恒輝弁護士に伺いました。

プロフィール

由井 恒輝弁護士
法律事務所ZeLo・外国法共同事業(第二東京弁護士会所属)
2018年慶應義塾⼤学法学部在学中、司法試験予備試験合格。2019年司法試験合格。2021年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)、同年法律事務所ZeLo参画。主な取扱分野は、ジェネラル・コーポレート、スタートアップ・ファイナンス、パブリック・アフェアーズなど。著書に『ルールメイキングの戦略と実務』(商事法務、2021年)など。

この記事で学べること

※Webアクセシビリティとは
利用者の障害の有無やその程度、年齢や利用環境にかかわらず、Webで提供
されている情報やサービスを利用できること、またはその到達度を意味しています。
引用:デジタル庁:ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック(2023年11月10日発行)

障害者差別解消法とは

ferret:
Webアクセシビリティのお話の前に、2024年4月に改正される障害者差別解消法とはどのような法律なのでしょうか。

由井弁護士:
障害者差別解消法は、障害を理由とする差別の解消を目的として定められた法律です。主な内容として、具体的には次の3つの義務が定められています。各義務の性質については後程解説します。

  1. 不当な差別的取扱いの禁止
  2. 合理的配慮義務
  3. 環境整備義務

①不当な差別的取扱いの禁止

障害者であるという理由だけで一律にサービスを提供しないといった行為が禁止されます。

②合理的配慮義務

サービス提供に際して、障害者の方からの意思表示がある場合、サービス提供に必要かつ合理的な範囲における一定の配慮の提供が求められます。

③環境整備義務

店舗や施設へスロープ設置するといったバリアフリー化や、障害者の方でも利用しやすいようWebサイトを改善するなどの取り組みが求められます。

法改正で「合理的配慮の提供」が事業者についても義務化される

由井弁護士:
2024年4月に改正される主な点は、の「合理的配慮義務」に関する内容です。

従来は、合理的配慮の提供は行政機関についてのみ法的な義務と位置付けられ、事業者については努力義務と位置づけられていました。
改正後は、行政機関だけでなく事業者についても、合理的配慮の提供が努力義務ではなく法的な義務として位置付けられることになります。

▼障害者差別解消法の改正後

行政機関など 事業者
①不当な差別的取扱い 禁止 禁止
②合理的配慮の提供 義務 努力義務 → 義務

「合理的配慮」の義務に違反した場合

合理的配慮義務に違反してしまった場合は、すぐに罰則が科されるというわけではありません

合理的配慮違反があるかもしれないとされた場合、まずは行政から事業者に対して報告が求められた上で、助言や指導、勧告を受けます。そして、報告を求められたときに応じなかったり、虚偽の報告をしたりした場合には、20万円以下の過料に処されることになります。

また、障害者の方から「合理的な配慮を受けられなかった」、「差別的な取り扱いを受けた」として民事上の損害賠償請求を受けたり、SNS等を通じてそのような事象・トラブルが拡散される可能性もあるため、適切な対応が求められます。

このように、合理的配慮義務違反は、罰則や損害賠償リスクはもちろん、企業のレピュテーションリスクともなるため、このような観点でも十分な注意が必要です。

「Webアクセシビリティの改善」自体が義務化されるわけではない

ferret:
Webアクセシビリティと、改正障害者差別解消法にはどのような関係があるのでしょうか。

由井弁護士:
Webアクセシビリティの改善は、の「環境の整備」に当てはまる取り組みと考えられます。
「環境整備」は行政機関、事業者ともに努力義務となっており、罰則などは定められていません。

そのた






令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化



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