今回は、企業が実施しているユーザーの購買意欲を掻き立てる戦略について、事例を交えて紹介します。キーワードは「買ってしまう心理」です。この「買ってしまう心理」を理解すれば、販売促進のアイデアや戦略に役立てられるでしょう。

「買ってしまう心理」の例

「買ってしまう心理」とはどのようなものなのでしょうか。
具体的な事例を交えて紹介します。

ダミーの選択肢を入れる

イギリスのニュース週刊誌『エコノミスト』は100人に対して年間購読料の意向調査を実施。そこでおもしろい結果が出ています。

①『エコノミスト』電子版のみ 59ドル
②『エコノミスト』電子版+印刷版 125ドル

この2つのうちどちらがお得だと考えますか?
実際に2つの選択肢で購入した人数は、①「電子版のみ」が68人、②「電子版+印刷版」が32人でした。

では3つめの選択肢

③『エコノミスト』印刷版のみ、125ドル

を追加するとどうなるでしょうか。
答えは①「電子版のみ」が16人、②「電子版+印刷版」が84人、③「印刷版のみ」が0人となりました。
つまり、②「電子版+印刷版」の売上が飛躍的に上がったのです。
これは③という「いかにも損」なダミーの選択肢を入れることで、②がお得だと錯覚させた巧みな例です。

参考:
日本経済新聞電子版の価格設定から透けて見える日経のホンネ

ショップのレイアウト

店舗型のショップのレイアウトは、かなりこだわって設計されていることを知っていますか?
スーパーでは入店して最初に見るのが季節のおすすめ商品、続いて野菜果物、肉魚、お惣菜、日用品…と続いていきます。
これにはいろいろな理由がありますが、「季節感を出す=鮮度の高いお店」だというアピールになること。そして、人は最初に見たものの方が心理的ブロックが低く、カゴに入れやすいという特性。この2点を利用しているのです。

参考:
スーパーは何故野菜売り場から始まる?「売り場レイアウト」の秘密

無意識に目にする広告が購買につながる

普段何気なく見ているものが、購買意欲の向上に繋がっている場合もあります。
例えば「牛乳を買おう」と思ったとき、「AとBがあるけれど、AのCMを見たからAの牛乳を買ってみようかな」とテレビCMで見たことのある商品を手に取ってしまうことはありませんか?
私たちは、テレビCMや街の広告、SNSなどでサービスの宣伝を目にすることで、その商品を認知します。
広告を見たら絶対に買いたくなる」という訳ではありませんが、日常の中にも「商品を認知させる仕組み」はたくさんあります。
それを意識すると、街中を歩いているだけでも今後の販促アイデアや戦略を思いつくヒントになるでしょう。

購買心理を利用した戦略

実際に人の購買心理を利用するためにはどんな方法があるのでしょうか?
購買心理を利用した戦略をいくつか紹介します。

刺さるキャッチコピーで「自分ゴト化」してもらう

印象的な言葉を読んだり聞いたりすると、いつの間にか物欲スイッチが入ることがありますよね。
心に刺さるキャッチコピーは、読んだ人が自分に置き換えることで「自分ゴト化」してもらえます。
広告を出稿する際は、関心を持ってもらえるよう「自分ゴト化」を意識してキャッチコピーを考えてみましょう。

参考:
コンテンツで溢れる時代。情報を自分ゴト化してもらう重要性とは【前編】

選択の操作

『エコノミスト』の例のように、ダミーの選択肢を設置して買って欲しい商品やサービスに誘導できるか考えてみてください。
あえて損に思える選択肢を入れることで、本来買ってもらいたい選択肢を自然に選んでもらうことができるのです。
アパレルショップなどでよく見かける「セール」と「セール対象外」や「まとめて買うとお得(単品で買うと損)」といった施策や売り文句も実はその戦略のひとつなのです。

ユーザーの気持ちになって考える

販売促進を考えるときは「どういう時に物を購入したくなるか」を自分で当てはめて考えて、常にユーザーの心理になって考えることが何よりも大切です。

そして「買ってしまう心理」を巧みに活用することで、購買につながる広告キャンペーンになるのではないでしょうか。

購買心理を活用した事例を知る

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Z世代(生まれたときからインターネットが当たり前のように存在する「デジタルネイティブ」な世代)のような若年層の消費行動は、他の世代と異なり、消費意識が低いとされています。 そのため、若年層向けのマーケティングでは、プロダクト機能の向上だけでなく、自社のプロダクトの価値を創造し、「ブランドイメージを強化する」ことも重要な活動となります。 しかし、訴求内容・方法を、若者含め各世代へ適切に実施しないと、思うような効果は出ません。