「納品物のクオリティ低い…」
「良い人になかなか巡り会えない…」

クラウドソーシングを利用する際、こういった悩みを抱えるWeb担当者の方は結構いるのではないでしょうか。近年利用が増えているクラウドソーシングは非常に便利ですが、上手に活用できなければ納品物の質が低くてお金と時間が無駄になるケースもあります。

株式会社T.M.Communityは私一人しかいない超零細企業ですが、クラウドソーシングを使い倒すことで、日本最大級のダイエット商品の口コミサイトを運営することができています。使い倒し過ぎて、先日大手クラウドソーシング会社から「御社は北海道で最も弊社を利用している企業ですので、北海道のセミナーで講演してくれませんか?」と連絡が来ました(講演しました)。

この記事では、これまでクラウドソーシングを使い倒してきた経験をまとめ、「高品質の成果物を納品してもらう方法」を解説いたします。

Web担当者がクラウドソーシングを活用するべき、3つの理由

最初に、私が初めて「クラウドソーシング」を利用したキッカケをお話しします。

2010年8月、私が運営するWebサービスに「ファビコン」という16px程度の小さな画像を追加することになりました。

画像作成などやったことのない私でしたが「小さな画像だし、ファビコンくらいであれば自分でも作れるのでは?」と思いました。しかし、無料の画像編集ソフトをダウンロードしてみたものの使い方が全くわかりません。ストレスフルで無駄な時間が過ぎていきます。

この時点で自分で画像を作成することは諦め、誰かに作って欲しいと思い始めるのですが、ファビコンを作る程度のことでデザイナーを雇用するわけにはいきません。そこで、外部の誰かにお願いしたいと思い、以下の手順を踏むこととなりました。

(1)「ファビコン 制作」で検索し、デザイン企業Aを見つけ、依頼。
(2)納期1日(速い!)、金額5千円(安い!)を提示され、お願いする。
(3)しかし、クオリティの低いデザインが納品される。
(4)再度「ファビコン 制作」で検索し、デザイン企業Bを見つけ、依頼。
(5)納期1ヶ月(遅い!)、金額3万円(高い!)を提示され、キャンセルする。
(6)失意の中、クラウドソーシングサービスを発見。
(7)11,000円の金額を提示すると1週間で13件もの高クオリティのファビコンが提示される。

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(実際に提示されたファビコン)

今となってはクラウドソーシングなんて珍しくないですが、当時は感動したことを記憶しています。「安いが質の悪いA社」「高いし遅く、質が不明なB社」を経てからの「割安な金額&一週間という期間で13種類の成果物から選択できるクラウドソーシング」の衝撃は強烈でした。

また、上記(1)~(5)のような、1社1社自分で探して、やり取りをして、実力を目利きして、金額交渉して・・・という手順を1度やると、もうこんなことに時間使いたくないと思いました。

この1件を経験して、クラウドソーシングには次の3つのメリットがあることがわかりました。

1.優秀なフリーランスが簡単に見つかる
「探す手間」「面倒な交渉」が大幅に省略できます。

2.苦手分野の質が即プロレベルに
私では逆立ちしてもできないデザインが、素早くプロレベルで提供されます。

3.固定費を変動費に変え、低コスト・低リスクを実現
プロを雇用する必要がなく、必要な時に、必要な仕事のみをお願いできます。

成果物が物理的な実体の無い「システム」「デザイン」「文章」「知識」等であるWeb担当者にとっては、「成果物のほとんど」をクラウドソーシングで依頼することができ、使わない手はありません。

ちなみに私はこれまで「ランサーズ」「クラウドワークス」「ビザスク」「ココナラ」といったクラウドソーシングサービスを利用してきました。

「ランサーズ」「クラウドワークス」はクラウドソーシング最大手のサービスで、主に「システム開発」「デザイン」「単純作業」等を依頼できます。また「ビザスク」「ココナラ」では「企画に関するヒアリング」「SEOコンサル」「システムの脆弱性対策の相談」「資産運用のアドバイス」のような相談業務を依頼してきました。

質の高い成果物は、質の高い依頼文が作る

基本的にはメリットだらけのクラウドソーシングですが、かれこれ100回以上利用していると、たまに質の低い成果物が納品されることもあります。しかし、この質の低さはほとんどの場合「発注側である私」の責任でした

「質の高い成果物」を納品してもらうためには、「質の高い依頼」をする必要があります。質の高い依頼をするためのポイントは次の2つです。

1.最低限の知識を身につける
2.なるべく具体的に依頼する

クラウドソーシングで依頼する仕事には「システム」「デザイン」「単純作業」「コンサル」等がありますが、仕事内容に関わらず上記2つは重要です。

具体的に説明するため、今回は「デザイン」を「コンペ方式」で依頼する例を使って上記ポイントの重要性を説明いたします。

コンペ方式とは「依頼した際に、実際の成果物が多数提案される依頼方法」を指し、デザインの依頼で主に利用されます。

1.最低限の知識を身につける

私はデザインに関して全くの素人です。だからこそプロにお願いしたいわけですが、発注側の私が素人過ぎるとそもそもどういう風にお願いしていいかわかりません。また、提示された成果物の善し悪しを判断することすらままなりません。

そういった理由で、発注側にも最低限の知識が必要となります。
最低限の知識を得るための方法は色々あると思いますが、私は「その分野の簡易な本を1冊読む」ようにしています。「◯◯の入門書」「猿でもわかる◯◯」と言ったビギナー向けの書籍です。

デザインの場合、私は「ノンデザイナーズ・デザインブック(マイナビ出版)」という本を読みました。デザイナーではない人向けですが、デザインの原則がザッとわかるように書かれている本です。これを1冊読むと「依頼の精度」「成果物の選択の精度」がグッと上がりました。

2.なるべく具体的に依頼する

依頼文を作成する時は、なるべく具体的に書いてください。

端的にまとめようと短くし過ぎたり、「よくわからないので、お任せします」といった曖昧な依頼文を書いてしまうと、クリエイターは「ここはどうすればいいんだろう?多分こうかな?」等と想像で作成を始めてしまい、「思ってたのと違う」成果物が提示されてしまいます。

もちろん冗長に余計なことまで書き過ぎると読みにくくなってしまいます。
依頼文は「余計なことは極力書かないが、必要なことは全て書く」というスタンスで書きましょう。そうすれば、次のような効果が生まれます。

・クリエイターが迷わず仕事ができる。
・希望通りの成果物が納品されやすい。
・仕事中のコミュニケーションコストが抑えられる

結果として、質の高い納品物が素早く、しかもストレス無く納品されることになります。

ただし、自分が専門でない分野に関して「的確な依頼文を作成する」のはかなり難易度が高いです。だからこそ、前述した「最低限の知識が必要」になるわけですね。

ちなみに、私がデザインをお願いする時には下記のことを伝えます。

・依頼概要
・デザインのコンセプト
・ターゲット層
・詳細(必要な文言や画像)
・重視する点
・お絵描きツールで下書きを作る

ポイントは、下手でも良いので「お絵描きツール」で下書きを作り、それを見てもらうことです。これを行えば、こちらの意図を素早く理解してもらえます。お絵描きツールはたくさんありますが、私はcacooというwebサービスを利用することが多いです。

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(cacooで実際に作った下書き画像)

クラウドソーシングで良い納品物を選ぶ方法

コンペ方式では、依頼文が的確で報酬も適切な額に設定しておくと、だいたい10件前後の成果物が提示されることが多いです。

では、複数の提案の中からどうすれば「質が高く」「自分の好みに合い」「ユーザーからも選ばれる」提案を選ぶことができるでしょうか?

下記は以前イラストを依頼した際に実際に提案された成果物です。

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この中から、まず「最低限の知識」と「自分の好み」で最大3つまで絞り込みます。

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次に、その3つをターゲットユーザーに見てもらった上で、最終判断します。

私が運営するダイエットカフェには既にユーザーが多数いますので、その方々に「どのデザインが好きですか?」とアンケートを取り、多数決で決める事が多いです。もし、まだユーザーがあまりいない場合は、家族・友人・知人でそのサービスを利用する可能性のある人にヒアリングして決めましょう。

このように選ぶと、「クオリティが高く」「自身の好みにも合い」「お客様にも選ばれる」成果物を納品してもらえます。

まとめ

前述の通り、クラウドソーシングを上手に活用するためには最低限の知識を得て、的確な依頼をし、成果物やクリエイターの目利きができるようになる必要があります。

そこを乗り越え上手に活用できれば、苦手分野に悩まされる時間が激減するため、自分は好きで得意なことに集中できるようになり、仕事も楽しくなります。

また、Webの世界は浮き沈みが激しく、今期あった売上が来期もあるとは限りません。そういった時のため、無闇に雇用を増やさずにクラウドソーシングを活用することで筋肉質な経営体制を整えておくことが、長期の安定に繋がります。

ぜひ、クラウドソーシングを活用してスマートなビジネスを実践してみましょう。