近年「インサイドセールス」と呼ばれる内勤型の営業手法が広まっています。
この営業手法の普及によって、わざわざ商談先へ訪問せずとも商談をすることが可能になり、営業という職種のあり方が変わってきています。

今回はインサイドセールスに欠かせない、Web会議システムを提供するベルフェイス株式会社取締役 マーケティング事業部長の西山 直樹氏に、インサイドセールスによる営業職の未来についてお話を伺いました。

西山 直樹氏 プロフィール

ベルフェイス株式会社 マーケティング事業部長
2007年 新卒にて当時営業支援会社として初めて上場を果たした(株)セレブリックスに入社。大手IT企業のインサイドセールス部隊構築支援を中心に、延べ80プロジェクトの新規セールス部隊立上げに参画。 200名を超える営業マンの採用やマネジメントに従事。2015年同社を退職し、ベルフェイスの立ち上げに参画。現在はマーケティングチームとセールスチームを管掌。

営業というイノベーションが起きていない領域

代表の原体験がサービスに

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ferret
Web会議システムは世に多くあると思うのですが、そもそもなぜ営業に特化したWeb会議システムを開発したのですか?

西山氏
これは代表の中島一明の原体験が元になっています。
もともと中島は前職で福岡から全国に営業をしていたんです。しかし福岡から毎回出張をすると採算が合わないですし、電話だと対面に比べるとどうしても受注率が下がってしまいます。

当時もWeb会議システムは世の中に存在していて、中島も多くの製品を試しました。しかし問題は、どれも先方に何かしらの事前準備をしてもらう必要があったことです。特に中小企業などの担当者はPCに詳しい人が多いわけではありません。インストールなどに手間がかかると、お客様に導入してもらうことは難しくなります。

そこで「ないなら自分たちで作ってしまおう」と、営業の受注率を下げずに、パソコンを普段使わない方でも使いやすいWeb会議システムを開発することになりました。
弊社のサービスは事前準備なく商談が開始できるため、従来のWeb会議システムで課題だった「煩雑な事前設定」が必要ないことを強みとして打ち出しています。

参考:
5秒でつながるWeb会議システムができるまで。bellFace(ベルフェイス)誕生秘話

インサイドセールスがもたらすメリット

商談数が増加し、営業を可視化できる

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ferret
インサイドセールスという営業手法のメリット・デメリットはありますか?

西山氏
メリットは沢山ありますが、あえて2つ挙げるとすれば、移動が必要なくなることによる商談数の増加と、録画・録音をすれば営業を可視化できるようになることです。可視化によって他の営業メンバーにノウハウを周知でき、売れる原因・売れない原因を分析できることは大きなメリットではないでしょうか。

デメリットは、トップセールスマン固有の「その場の雰囲気や空気感でなんとなく受注する」ことができにくくなることですかね。しかし多少受注率が下がったとしても、商談数は増えるためカバーはできますね。

インサイドセールス発祥の地、アメリカと日本の違い

ferret
インサイドセールスは、アメリカで生まれたと言われています。アメリカでは国土が広いことから商談への移動時間短縮などのメリットが考えられますが、日本でインサイドセールスの手法を適用する際の違いとは何でしょうか?

西山氏
アメリカでは顧客のオフィスに訪問せずに営業するのが「当たり前」になっています。視察に行った時も、ほとんどの人がSkypeなどのWeb会議システムをパソコンにインストールしていました。そもそもの営業スタイルの前提が異なっています。

一方で日本は訪問営業が当たり前になっています。
この違いが何を産むかというと、訪問営業をすると、どんなに近くても訪問の移動に30分はかかりますよね。しかも日本人は時間を厳守するのでゆとりを持って到着するように時間を見積もります。

これは無駄な時間です。このような非生産的な活動が日本にはまだまだあるなと感じています。インサイドセールスは国土の広さによる営業の非効率を解消するだけが導入のメリットではありません。日本人の商習慣の改善や無駄を省くという意識を根付かせるためにインサイドセールスの導入は効果を発揮するのです。

営業のイメージを変える

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ferret
インサイドセールスが広まることによって、営業職のイメージが変わってきている感覚はありますか?

西山氏
以前よりも営業の概念が広がっていると感じます。
インサイドセールスによって商談が可視化されるため、マーケティングにとってもよりリアルな現場の素材を手に入れることができるようになりました。そういう意味で双方の職種としての距離感がより縮まっていることを実感しています。
いわゆる営業といえばスーツをきて、訪問をして、みたいなイメージが少しずつ変わり、営業の職域が広くなっています。どのような職種の人でも営業がやりやすくなってきているのではないでしょうか。

営業の働き方を変えて、キャリアのあり方を変える

ferret
そうなると営業職の働き方も変わっていきそうですね。

西山氏
そうですね。インサイドセールスはどこにいても営業ができるので、在宅で営業をすることも可能になります。

例えば女性の方だと結婚・出産を機に一度職場を離れることもありますよね。もしその人がずっと営業担当として働いていたとしても、出産後に再び営業として働くことが体力的に、もしくは時間的に厳しかったりすることもあるかもしれません。これまで積んできた経験やスキルが活かせないことはその人の能力にとっても、大きく言えば日本経済にとっても非常にもったいないことです。

これがインサイドセールスであれば、お子さんが保育園に行っている間のちょっとした時間で自宅から営業ができるかもしれませんよね。

データの活用によるスマートな営業

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ferret
西山さんは、「これからの営業職」についてどうあるべきだと考えていますか?

西山氏
いわゆる「センス、勘、根性、気合いで売る」みたいな世界を変えていければと思っています。これまでの営業職って、一部のトップ営業マンだけが売れて、それ以外の多数は売れないから楽しくない、みたいなイメージだと思うんですね。
この営業職のイメージを、もっと誰でも簡単に成果を出せる楽しい仕事というものにしていきたいです

ferret
インサイドセールスは営業を可視化できるからこそ、「誰でも簡単に成果が出せる仕事」というのが実現できますね。

西山氏
そうですね。今までの営業は個人戦でしたが、これからの営業は団体戦になっていくと考えています。
例えば営業マン同士が隣の席で商談のフィードバックをしたり、チャットツールで商談の動画を貼ってフィードバックをしたりすることが可能になります。そうすれば互いに営業のスキルは向上し、商談の精度は上昇していくでしょう。

弊社では、SFAツールで失注した顧客リストを作成して、なぜその案件が失注になったのかを録画した商談をみてフィードバックをするなどしています。

ferret
Web会議システムで商談をすればするほど、データが増えるという側面もありますよね。

西山氏
多くのデータがあるのでそれを新人教育の際にインプットとして活用できますし、もしインプットしたデータの解釈が違えばアドバイスもできます。
データ活用というと頭でっかちになってしまうこともありますが、MAやSFAツールをうまく組み合わせればそんなに難しいことではないですね。

きちんとデータを活用できれば営業職はもっと効率的な職業になり、トップ営業マンでなくとも、誰でも成果を出すことができる楽しい仕事になっていけばいいですね。

まとめ

インサイドセールスは場所に縛られることのない働き方を実現させると共に、営業を可視化し、データを活用することでより効率的な営業を可能にします。営業職のイメージが「訪問をして、気合いと根性で売る職業」から、「どこにいてもスマートに受注を取ってくる職業」へと変わる日もそう遠くはないかもしれません。