SaaSはビジネスで広く利用されています。うまく利用すれば業務効率化につながるSaaSですが、中には導入に失敗してしまう企業も少なくありません。

その場合、SaaSの選び方に問題があるのかもしれません。この記事では、SaaSを導入する際に意識したい選び方やポイント、注意点、心構えについて解説します。

▼そもそも「SaaS」とは?▼
SaaSの意味とは?何ができる?有名ツールも紹介

目次

  1. SaaSを導入しても成功するとは限らない
    1. 有名 ツールであっても過信は禁物
  2. SaaSを導入する際のチェックポイント
    1. セキュリティ
    2. ベンダーの将来性
    3. シングルテナントかマルチテナントか
  3. SaaS導入前の注意点
    1. 業務とのマッチングに注意
    2. 「クラウド=安い」とは限らない
    3. SLAを慎重に確認
  4. SaaS導入の目的を明確に
  5. まとめ

SaaSを導入しても成功するとは限らない

ビジネスでは業務改善のためにSaaSを組み込む企業が増えています。しかし、SaaSの導入後、すべての企業が満足いく結果を得ているわけではありません。「有益なツールであることはわかったが、想像と違った」という声もよく聞かれます。

そもそも、SaaSは導入しただけで成功が約束されるようなものではありません。導入する企業にも慎重に選択する判断力や受け入れ態勢、使う人材のリテラシー育成といった準備が必要です。

SaaS導入後の失敗ケースは企業によって様々です。そこで失敗例を探ってみると、「コストダウンにつながらなかった」「想像した効果が出なかった」「使いこなせなかった」などの声が挙げられています。ただしこれらの失敗は、各サービスを慎重に比較検討し、受け入れ体制を万全にすることで防げるはずです。

ひとまずは、「SaaSは成功を約束する夢のようなツールではない」ということを理解してください。

有名ツールであっても過信は禁物

「有名ツールだから安心」という過信も禁物です。業務とのマッチングによっては、世界的に評価されている有名ツールでも効果が出ないことがあります。

実際にSaaSを使ってみなければわからないこともたくさんあります。一口にSaaSと言っても事業者ごとにサービス内容はさまざまなため、期待していた効果が出なければ乗り換えを検討してみるべきかもしれません。また、そもそもSaaS以外のサービスが適しているケースも考えられます。

SaaSを導入する際のチェックポイント

SaaSを導入する前の代表的なチェックポイントを紹介します。

セキュリティ

かつてクラウドサービスは自社システムと比較して、セキュリティレベルの低さが懸念されていました。物理的なサーバーを社内に設置していないことがその理由です。
一方で、現在のクラウド事業者はもれなく強固なセキュリティ対策に取り組んでおり、それほど大きな懸念点ではなくなりつつあります。

検討すべきは、自社のセキュリティポリシーとのマッチングです。
「特定データへとアクセスを一部の役職に制限している」「外出先からのシステムアクセスの一部制限を設けている」など、業務によっては独自のセキュリティポリシーを設定しているケースがあります。自社のセキュリティポリシーを運用しやすいSaaSを選ぶことが重要です。

また、災害が多い昨今はデータセンターの所在や拠点数、バックアップ体制も判断基準として挙げられます。クラウド事業者が第三者侵入のリスクから通常はデータセンターの詳細な所在を明らかにしていませんが、大まかな位置や災害・停電対策については掲示しています。

原則として停止が許されない業務のSaaSを選ぶ場合、こうした対策に注目するのも大切です。

ベンダーの将来性

SaaS市場における競争は激化しています。
既存サービスをSaaS化してユーザーをクラウドに移行させようとしている大手企業と、クラウドの発展と共に成長してきた新興企業がシェアを取り合っている状況です。大手は安定したシェアを維持していますが、新興企業の成長率も無視できません。

SaaSを選ぶうえでは、「ベンダーがどのような長期的展望を抱いているか」という点も重要な判断ポイントです。主に、経済的・技術的な展望、将来の利用拡大に備えられるかどうかが基準となります。

場合によっては、ベンダーがSaaSの提供を停止することも考えられます。反対に、リソースを避ける事業者はニーズに応じてSaaSを頻繁にアップデートしていくかもしれません。

一度、使用感を把握して業務に適応させたSaaSを変更するのは簡単ではないため、ベンダーの将来性に着目することは重要です。

シングルテナントかマルチテナントか

「シングルテナント」とは、ひとつシステムやサーバーをひとつのクライアントで占有するクラウドサービスの提供方式です。対して「マルチテナント」では、複数のクライアントでシステムやサーバーを共有します。どちらもSaaSをはじめとするクラウドサービスでは一般的な提供方式です。

マルチテナントの登場により、クラウドサービスの提供コストを下げられるようになりました。これは、クラウドサービスが普及した要因のひとつと考えられています。多くのSaaSはマルチテナント方式です。

シングルテナントはマルチテナントと比較すると提供コストが高価になります。
一方で、クライアントごとにシステムやサーバーの仕様をカスタマイズできる点が特徴です。「PaaS(Platform as a Service)」では、複数のクライアントでシェアしているハードウェアに仮想環境を個別に構築し、シングルテナントを実現しているケースがあります。

マルチテナントの提供コストの低さは多くの企業にとって魅力です。
しかし、業務や自社のセキュリティポリシーによっては、シングルテナントのカスタマイズ性や安全性が求められることもあります。

SaaSを選ぶ際は、シングルテナントとマルチテナントのどちらを採用しているかについても注目してみてください。

SaaS導入前の注意点

SaaSを投入する際にはクライアント側である企業にもある程度の準備が求められます。SaaSがいくら優秀でも企業側起因で失敗してしまうケースは少なくありません。

SaaS導入前の注意点を紹介します。

業務とのマッチングに注意

マルチテナントで提供されているクラウドサービスは基本的にクライアントごとのカスタマイズが簡単にはできません。SaaSは、IaaS、PaaS、DaaSなどほかのクラウドサービスと比較してとりわけカスタマイズ性が低いと考えられています。この点から、導入後に自社の業務とSaaSとのアンマッチを実感してしまう例は少なくないようです。

そのため、業務とのマッチングはSaaSを比較検討する段階で重要視すべき要素です。
ベンダーがSaaSのジャンルとして打ち出している「CRM」「SFA」「勤怠管理ツール」といった言葉だけで判断すると、業務で活用できないことがあります。そのツールそのものの性能や仕様を見極めるよう意識しましょう。

特に多いのが、比較表や仕様表のみで判断してしまうケースです。
SaaSはベンダーによって同じサービスの定義や指標が異なります。こうした情報からサービスの性能を正確に比較することは困難でしょう。

業務とのマッチングを確かめるためには、実際に運用してみるのが一番の近道です。
多くのSaaSは契約前にトライアル期間を設けています。企業利用であれば、営業担当から詳しく話を聞くのもひとつの手です。

「クラウド=安い」とは限らない

クラウドには一般的に「コストが低い」というイメージがあります。コスト削減対策としてクラウドサービス導入に踏み切るケースは少なくありません。
しかし、期待していたほどコストダウンできなかったという声もよく聞かれます。

この結果には、大きく分けて2つの要因があると考えられています。
「そもそもクラウドでのコストダウンが難しい」「見えないコストを考慮していない」の2種類です。

規模の小さい業務にSaaSを導入した場合、そもそもコストダウンする余地があまりありません。そのため、「期待していたほどの効果がなかった」という感想にいたってしまいます。小規模なシステムをSaaSで代替する場合は、極力スモールスタートを意識し、コストが低いサービスやプランを選ぶほうが無難です。

また、オンプレミスとクラウドのコストを比較する場合は、人的リソースや運用の手間など「見えないコスト」についても計算に入れる必要があります。クラウドの場合、運用や管理をベンダーに任せられる点もメリットです。単純に金銭的なコストだけで判断すると、「クラウドに移行してからコストが大きくなってしまった」と判断してしまう可能性があります。

「クラウド=安い」という事実は、あくまで適切なサービスを選び、企業が正確なコストを持っている前提で当てはまります。選択もコスト観も正しければ、SaaSの導入で金銭的な部分だけではない総合的なコストダウンが実現できるはずです。

SLAを慎重に確認

クラウドサービスの契約は、「基本契約」と「SLA(Service Level Agreement:サービス品質保証制度)」で構成されています。これらは原則としてベンダーによって決まっており、クライアントのニーズによって変わることはありません。SaaSでは、とりわけこの強く傾向が当てはまります。

基本契約には費用や契約期間、利用条件などが組み込まれています。
対しては、SLAにはサービス内容やサービスの範囲、提供時間など品質に関わる内容が明記されています。SaaSの契約に際して、クライアントは両者を慎重に確認しなければなりません。

企業向けのSaaSのSLAでとりわけ重要なのが、サーバーの稼働率です。
SLAに記載されている稼働率の範囲に限り、サーバーの稼働が補償されているという意味です。ベンダーによって保証している稼働率が異なります。

稼働率が99%と提示されている場合、1年では約4日間システムがメンテナンスなどでダウンする可能性があります。99.9%では約9時間、99.99%では約1時間という計算です。わずかな差に見えますが、実際の時間で考えると小数点以下の違いが大きな稼働時間の差につながっていることがわかります。

一般的には、保証している稼働率が高くなるほどコストが高騰します。また、通常は1年を通じて無停止運用が続くということは考えられません。何らかの事情で提示していた稼働率を達成できなかった場合は、実際の稼働率に応じた減額対応が行われます。

SLAには、このほかにも重要事項が記載されています。
「Agreement(合意)」という単語が組み込まれていることからもわかるように、ベンダーは「SLAに合意していただければ契約をお願いします」というスタンスです。
実際に導入してから問題が生じないように、基本契約だけではなくSLAにも慎重に目を通しておきましょう。

SaaS導入の目的を明確に

SaaSの導入に失敗してしまった多くの企業に共通しているのが「導入の目的をあいまいにしている」という点です。

「トレンドだから」「ITで業務効率化したいから」といったあいまいな導入理由では、SaaSの有効活用は臨めません。「SaaSで何がしたいのか?」という点を突き詰めましょう。

導入目的が明確になれば、SaaSに求める機能がわかります。機能のニーズについて深掘りすることは、数あるSaaSの中から自社にベストマッチなものを選ぶために大切です。また、要件を定義しておくことで不必要に多機能なSaaSを選ぶことがなくなり、コストの肥大を回避できます。

シビアに導入の目的を定めることは、SaaS選びのスタートラインとも言えるプロセスです。SaaSがいくら優秀でも目的までは定義してくれません。どの「SaaSを導入するか」以前に、業務の課題を向き合い目的の明確化に取り組みましょう。

まとめ

SaaS選びのポイントについて紹介しました。現在は無数にSaaSが展開されており選択肢が広がっていますが、導入後に失敗しない選択をするためには企業側の準備が必要です。SaaSの有用性は結局使う企業次第ということです。

あらゆる観点から自社にとって最適なSaaSに巡り合えるように今回紹介したようなポイント・注意点を意識しましょう。

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