近年は、サブスクリプションやクラウドサービスなど、SaaSビジネスのニーズ向上に伴い、「チャーンレート」の重要性も高まっています。

チャーンレートを分析することで顧客の動きを把握できるため、サービスの改善につなげることができます。しかし、チャーンレートについてよく理解しておらず、何から始めていいかわからない方も少なくありません。

そこで今回の記事では、チャーンレートの重要性や計算方法を説明します。チャーンレートが高い原因や改善する方法も併せて解説します。

目次

  1. チャーンレート(解約率)とは
  2. チャーンレートがなぜ重要な指標なのか
  3. チャーンレートの種類
  4. チャーンレートの計算方法
  5. 【平均値】チャーンレートの目安とは?
  6. チャーンレートが高い原因
  7. チャーンレートを改善する方法
  8. チャーンレートとあわせて覚えておきたい指標
  9. チャーンレートを分析してLTVアップを目指そう

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SaaSビジネスの重要指標とよくある疑問

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単なる用語集ではなく、よくある疑問への答えや、各指標を改善するためのポイントを、図解を交えてゼロからわかりやすく解説しています。

チャーンレート(解約率)とは

チャーンレートとは解約率を意味します。どれだけの顧客が取引や契約を解約したかを数値化したものです。

近年は、サブスクリプション型ビジネスやSaaSビジネスなどが一般化し、新たなサービスが次々と誕生しています。このようなビジネスを成功させるためには、売上や新規顧客獲得数だけでなく、解約率にも目を向け、サービスを改善していかなくてはいけません。

そのため、最近はチャーンレートをKPIに設定する企業が増加しています。

チャーンレートがなぜ重要な指標なのか

それでは、チャーンレートはどうして重要な指標なのでしょうか?チャーンレートはビジネスの将来性を予想して改善することに役立ちます。

チャーンレートが高いのに関わらず、数値を把握できていない企業は、サービスを改善できず、事業が低迷してしまうかもしれません。

しかし、チャーンレートを定期的に分析していれば、サービスを改善したり、競合と差別化を図るための施策を打ち出したりできるため、持続的なビジネスを目指すことができます。

特に新規ビジネスを成功させるためには、サービスの将来性をしっかりと予測し、顧客が継続してサービスを利用するように、改善していくことが大切なのです。

チャーンレートの種類と計算方法

チャーンレートにはいくつか種類があります。それぞれ解説します。

カスタマーチャーンレート:Customer Churn Rate

カスタマーチャーンレートとは、顧客数をベースにして算出するチャーンレートのことです。一定期間にどれくらいの顧客が解約したかを意味します。

図_カスタマーチャーンレート.png

カスタマーチャーンレート = 解約した顧客数 ÷ 解約前の顧客数 × 100

一般的にチャーンレートは、このカスタマーチャーンレートを指すことが多く、BtoC企業にとって重要な指標の一つです。

BtoB企業の場合はアカウントチャーンレートと呼ばれ、解約した企業数を基準にして計算を行います。

なお、カスタマーチャーンレート、およびアカウントチャーンレートは、ユーザーが一律の料金を支払うサービスを分析する際に有効です。価格が一律であれば顧客数から収益の状況を判断できます。

レベニューチャーンレート:Revenue Churn Rate

レベニューチャーンレートとは、収益を基準にして計算するチャーンレートのことです。解約によって一定期間の収益がどれだけ失われたかを意味します。

複数プランを用意していたり、顧客によって価格が変動したりする場合、カスタマーチャーンレートではなく、レベニューチャーンレートが指標に設定されることが多いです。

レベニューチャーンレートは、大きくわけて以下の2種類に区分できます。

図_グロスチャーンレートとネットチャーンレート.png

グロスチャーンレートは、解約やダウングレードによる損失金額をベースにして計算するチャーンレートで、ネットチャーンレートはアップセル・クロスセルを考慮して算出するチャーンレートです。
サービスの価格設定や分析の目的にあわせて計算方法を選択することが大切です。

グロスチャーンレート = 当月に失った月次経常収益 ÷ 前月末の月次経常収益 × 100

ネットチャーンレート = (当月に失った月次経常収益 - 当月に増えた月次経常収益 ) ÷ 前月末の月次経常収益 × 100

グロスチャーンレートの数値は常に「正」になり、マイナスの影響を把握することができます。一方、ネットチャーンレートはアップセル・クロスセルによって得た収益が損失した金額を上回れば、「負」の値になることもあります。

ネガティブチャーンとは?

ネガティブチャーンは、ネットチャーンレートが「負」の状態を意味します。つまり、プランのアップグレードなどによって獲得した収益が損失した収益を上回るということです。

ネガティブチャーンである場合は、収益が増加しビジネスが良好な状態であるといえるでしょう。

【平均値】チャーンレートの目安とは?

チャーンレートの平均値はどれくらいなのでしょうか?

サブスクリプション型ビジネスのトレンド情報などを発信しているRecurly Research(リカーリー・リサーチ)によると、チャーンレートの平均値は5.60 % となっています。

しかし、チャーンレートの目安はビジネスモデルや規模、ターゲット、業界などによっても変わるので注意が必要です。

図_業界別チャーンレートの平均値.png

(Recurly Researchの資料をもとにferret編集部作成)

上記の図を確認すると、SaaS業界のチャーンレートは4.79%、メディア・エンターテインメント業界は5.23%など、業界によって大きく異なることがわかります。

参考:Explore the data Is your churn rate within a healthy range?

チャーンレートが高い原因

チャーンレートが高いということは、解約する顧客や損失した収益が多いということです。それでは、チャーンレートが高くなってしまうのはどうしてでしょうか?

● 価値を提供できていない
● 競合に負けている
● サービスの内容に対して価格が高い
● サービスを利用する必要がなくなった

チャーンレートが高くなってしまう原因は、サービスによってさまざまです。持続的なビジネスを目指すためにも、チャーンレートが高い原因を明確にし、改善を目指す必要があります。

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SaaSビジネスの重要指標とよくある疑問

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チャーンレートを改善する方法

それでは、チャーンレートを改善するにはどうすればいいのでしょうか?ここでは、改善方法を紹介します。

解約の理由を明らかにする

まず、顧客が解約、およびダウングレードする理由を明らかにすることが重要です。

解約が発生する原因を把握できていないと、サービスをどのように改善すべきか判断することができません。

ヒアリングを実施して顧客の意見に耳を傾けたり、顧客セグメントごとの解約率を分析したりして、解約の理由を調査しましょう。

顧客が退会するタイミングでアンケートを実施して、解約理由を調査するのも有効です。

顧客が成功するための仕組みをつくる

顧客が成功するための仕組みづくりも重要な役割を担います。顧客がサービスの利用を通して目的を達成できれば、顧客満足度が向上し、チャーンレートを改善できる可能性があるためです。

例えば、オンボーディングプランを作成して新規顧客にサービスの利用方法をわかりやすく説明したり、サポート専属部署を立ち上げて顧客対応を徹底したりすることで、顧客を成功体験に導くことができます。

顧客にサービスについて理解してもらい、疑問が生じた際はすぐに対応できるように体制を整えましょう。

解約する可能性が高い顧客を事前に把握する

解約する可能性が高い顧客を把握することが大切です。解約する可能性が高いと判断した顧客に対しては、解約を防止するためのアプローチを実施することができます。

サービス利用頻度が低い、サービスについて質問してきたなど、解約しそうな顧客行動を定めて、計測しましょう。

また、解約しそうな顧客に対して、コミュニケーションをとりサポートしたり、クーポンを配布したりするのもよいでしょう。

機能の使い方をしっかり伝える

機能の使い方をしっかり伝えることで、チャーンレートを改善できるかもしれません。

解約を考えている顧客は、サービスの使用方法を十分に理解していない可能性があります。また、機能を十分に使用できずに使用価値を感じられていない可能性も考えられます。

例えば、ヘルプページなどのサポートコンテンツを充実させたり、新機能のリリースを積極的に発信したりすることで、顧客の理解度を高めることができます。

さらに、機能の使い方を顧客に伝えることで、解約防止だけでなく、問い合わせ数の減少を目指すことができます。

チャーンレートとあわせて覚えておきたい指標

ここでは、チャーンレートとあわせて覚えておきたい指標を紹介します。

LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)

LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは、1人の顧客がサービスの利用を開始してから、終了するまでにもたらす利益のことです。

チャーンレートを改善するということは、同時にLTVの向上を目指すことになります。LTVの基礎概要については、以下の記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

SaaSビジネスで欠かせない!LTVが重要指標といわれる理由と計算方法をわかりやすく解説

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SaaSビジネスの事業効率性を測る重要指標のひとつである、LTV。その意味や算出方法など、最低限知っておきたい基本知識を解説いたします。初めて聞いた方はもちろん、すでに言葉を知っている方も再度この機会に理解度を深めてみてはいかがでしょうか。

Churn MRR(Chrun Monthly Recurring Revenue:解約MRR)

Churn MRR(Chrun Monthly Recurring Revenue:解約MRR)とは、当月に解約した顧客の月次経常利益です。

顧客が解約、もしくはダウングレードしたことで、どれくらいの収益が損なわれたかを意味します。Churn MRRは、レベニューチャーンレートを計算する際に使用されます。

MRRはChurn MRRの他にもいくつか種類があり、詳細は以下の記事で紹介しています。

MRR(月次経常収益)とは?種類・計算方法・改善方法まで徹底解説

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MRR(月次経常収益)は、主にSaaSビジネスに用いる経営指標の1つです。継続的に得られる売上を指し、企業の収益性や安定性の判断に役立ちます。この記事では、MRR(月次経常収益)の詳細、種類、計算方法・改善方法などを解説します。

チャーンレートを分析してLTVアップを目指そう

今回の記事では、チャーンレートの基本的な知識を解説しました。

チャーンレートを分析することで、顧客が解約、ダウングレードした割合を把握し、改善につなげることができます。自社のビジネスにとって最適なKPIを設定し、改善を目指すことが大切です。チャーンレートをしっかりと把握してLTVアップを実現しましょう。

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