世界はもちろん国内においてもSaaS市場は大きな盛り上がりを見せており、業務用システムやツールをクラウドへと移行する動きが多くの企業で検討・実施されています。

そのような中、国内におけるSaaSサービスのシェア率はどのような状況にあるのでしょうか?企業やサービスのシェアや知名度、成長率などを踏まえて注目のSaaSをピックアップし、使いやすさや特長をまとめます。

※紹介しているサービス内容やシェア率は、記事執筆当時のものです。最新情報は各サービスサイトで確認してください。

目次

  1. グループウェアに見るSaaSサービスの国内シェア
    1. サイボウズ Office / Garoon
    2. Microsoft Office365
    3. Desknet’s NEO
    4. IBM Notes/Domino
    5. G Suite
  2. 近年注目の国産SaaS提供企業
    1. Sansan「名刺管理ツール Sansan」
    2. ラクス「クラウドサービス」
    3. マネーフォワード「MFクラウド」
  3. その他の注目SaaS提供企業
    1. ユーザーベース「SPEEDA」
    2. リンクアンドモチベーション「モチベーションクラウド」
    3. チームスピリット「TeamSpirit」
  4. まとめ

グループウェアに見るSaaSサービスの国内シェア

すでに多くの企業が導入している代表的なSaaSから紹介していきます。

今回は、株式会社ノークリサーチが2018年に調査・発表した『導入済みの「グループウェア」製品/サービス』を基に、SaaS型グループウェアのシェア率から考察していきます。なお、調査対象は年商500億円未満の中堅・中小企業1,300社であり、いわゆる大企業は含まれていませんのでご承知おきください。

サイボウズ Office / Garoon

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サイボウズOffice

調査結果でシェア率が第一位となったのは「サイボウズOffice」。2018年の時点で19.4ポイントを獲得しています。前年に比べると1ポイント減ではありますが、国内においてはMicrosoft Officeと2強体制を築いています。

なお、サイボウズは大規模な組織向けSaaSグループウェアとしてGaroon(ガルーン)も提供。これを合わせるとサイボウズは36.8%のシェア率を誇ることになり、国内グループウェア市場の多くを占めていることになります。

国産SaaSならではの使い勝手が魅力

サイボウズOfficeおよびGaroonが人気を得ている理由は、国産ならではの使い勝手にあると言えるでしょう。そもそも、サイボウズOfficeが誕生したのは1997年の頃。その頃から日本企業における“働き方”への知見を溜め、時代に合わせたアップデートを繰り返してきました。

ITツールに不慣れなスタッフであっても直感的に利用できる操作性は、大きな魅力です。また、対応業種は非常に幅広く、サービス業や小売はもちろん、Garoonについては自治体での採用が多いと言われています。強力なカスタマイズ性も強みであり、さまざまな企業に対して柔軟に対応できる点も人気の理由です。

Microsoft Office365

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Microsoft Office365

サイボウズOfficeと並んで高いシェア率を誇るのが「Microsoft Office365」です。なお、グループウェアに関わる調査であるため対象はExchange Onlineのみですが、OfficeアプリやSharePoint Online(メールやカレンダーなどのサービス)を含めると、利用者の数はさらに増えると予想されます。

Office365で注目したいのは、2017年からのシェア率の伸びです。2018年に達成した17.4%は、前年と比べると3.1ポイント増という結果。
ちなみに、米調査会社Synergy Research Groupによる「2018年第2四半期における企業向けSaaS市場調査」においても、Microsoftは前年から45%の年成長率を達成。世界のSaaS市場ではトップに立っています。こうした影響が、日本の中小企業にも及んでいると考えられるでしょう。

多機能かつ低コストが最大の強み

2強体制を築くMicrosoft OfficeとサイボウズOfficeを比較した際には、どのような違いがあるでしょうか。

とくに大きなポイントは、機能面での差です。Microsoft Officeにはチームサイトや公開用Webサイト作成、社内SNS、Web会議システムといった、サイボウズOfficeにない機能が提供されています。そして何よりも、オンライン版を含むOfficeアプリの提供は大きな違いと言えるでしょう。加えて、コスト面についてもオンラインストレージの容量等を同条件にした場合、Office365のほうが安くなります。

ただし、多機能低コストがすべて正しいとは言い切れません。実際にはユーザーインターフェイスやカスタマイズ性などを考慮し、自社のニーズに合ったものを選ぶのが大切です。

Desknet’s NEO

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Desknet’s NEO

ネオジャパンが提供する「Desknet’s NEO」のシェア率は2018年で9.0%。これは、前年に比べて0.7ポイント増という結果です。サイボウズOfficeを除き、今回報告されたSaaSについては、下位であってもポイントを伸ばしている状況にあります。SaaS市場全体が成長していることの現れとも言えるでしょう。

ちなみに、Desknet’s NEOは国産のSaaS型グループウェアであり、その意味で言えばネオジャパンはサイボウズに次ぐ実績を残しているとも言えます。

ニーズに見合った価格に高い評価

Desknet’s NEOは直感的かつ分かりやすいインターフェイスが特徴のグループウェアです。加えて、豊富な機能が標準で搭載されている点も評価されています。なお、株式会社ノークリサーチが2018年に調査・発表した『最も主要な「グループウェア」製 品/サービスの導入背景』では、導入の理由として「価格がニーズに合致している」と答えた企業が70.8%。これは、その他のSaaSに比べて頭ひとつ抜けた結果でした。

また、「機能がニーズに合致している」という回答も66.7%と決して低くはなく、本サービスのコストパフォーマンスの高さを表しています。

IBM Notes/Domino

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IBM Notes/Domino

「IBM Notes/Domino」は、以前まで導入者数のシェアトップを獲得してきた実績を持つSaaSです。しかし今回の調査では、前年からシェア率を0.3ポイント伸ばしたものの、印象としては横ばい。Desknet’s NEOの伸びもあり、順位を落とす結果になりました。

この背景には回収による開発会社の変更やグループウェア市場の競争激化もあると言われています。

SaaS型サービス提供で巻き返しなるか?

IBM Notes/Dominは従来、オンプレミス型のサービスとして普及してきました。しかし、現在のSaaS市場の盛り上がりに合わせ、2018年から「Comture Cloud for Domino」の提供を開始しています。

移行自体も容易で、かつメールシステム等を総合コミュニケーションツール「IBM Connections Cloud」へ切り替えることも可能。現在の顧客が乗り換えを行えば、SaaSグループウェアにおけるシェア率の巻き返しも考えられるでしょう。

G Suite

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G Suite

元は「Google Apps for Work」という名称でサービスが提供されていたG Suite。

中小企業におけるシェア率は2017年で3.4%とそこまで高くはありませんでしたが、2018年になりおよそ2倍となる6.4%をマーク。非常に高い成長率を記録しています。

機能とオールインワンが人気の理由

最も主要な「グループウェア」製 品/サービスの導入背景』を見てみると、「機能がニーズに合致している」という回答が61.5%を占めており、G Suiteの機能面における満足度の高さが伺えます。

本サービスは、他に比べて非常にシンプルな構成になってはいるものの、分かりやすく馴染みのあるインターフェイスが特徴です。GmailやGoogleカレンダーについては、個人で使っている従業員の方も多いのではないでしょうか。

加えて、Officeアプリが用意されており、共同編集ができる点も魅力です。

近年注目の国産SaaS提供企業

国内で現在成長を遂げている注目のSaaS提供企業についても見ていきましょう。

こちらでは、シェア率にかかわらず、2018年8月時点での直近決算のなかから高い成長率を記録した企業をピックアップしていきます。

Sansan「名刺管理ツール Sansan」

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Sansan

2007年創業のSansanは、クラウド名刺管理サービスの企画・開発・販売を行う企業です。俳優の松重豊さんが「それさあ、早く言ってよお」と部下や上司に言うCMを見た方も多いのではないでしょうか。

同社の会社全体における2017年度の前年比売上高成長率は51%。未上場の会社全体の業績とはなってしまいますが、SaaS事業が急成長を遂げていることは間違いないでしょう。

名刺データ化精度は99%

Sansanの名刺管理ツールにおけるポイントは、なんと言ってもその精度の高さにあります。専用端末で名刺をスキャンすると、そのデータが入力オペレーターの元に送られて入力・確認作業が行われます。

なお、日本語はもちろん英語、中国語、韓国語、ドイツ語、フランス語の6カ国語に対応している点も強みのひとつ。データは最終的にデータベース化され、日付や場所、行動などとして記録されます。また、有名CRM/SFAとの連携ができる点も強みのひとつです。

ラクス「クラウドサービス」

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ラクス

経費精算システム「楽楽精算」やWeb帳票発行システム「楽楽明細」をはじめとするクラウドサービスを提供するラスク。Sansan同様、俳優の滝藤賢一さんのCMで一気に知名度が上がったと考えられます。

2017年度の売上高成長率は約30%。年間売上増加額については10億円を超えています。Sansanやサイボウズに並び、SaaS事業が好調であることが見て取れます。

使い勝手の良さと堅牢なデータセンターが魅力

ラクスのクラウドサービスの代表格となっている「楽楽精算」。このSaaSの特徴は、簡単で使いやすいユーザーインターフェイスにあります。また、バージョンアップを続けることで、現在もなお改善が進んでいる点も好印象です。専任のサポートスタッフがつくことで、はじめてSaaS型経費精算システムを利用する企業にとって、導入しやすいサービスだと言えるでしょう。

なお、同社ではセキュリティ機能を充実させている他、災害にも強いデータセンターを使用している点も特徴です。大切なデータをしっかり守ってくれる安心感にも定評があります。

マネーフォワード「MFクラウド」

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MFクラウド

マネーフォワードにおけるMFクラウド事業は、売上高自体は少ないものの、2017年度の売上高成長率は200%以上。伸びだけで考えれば、SaaS提供企業のなかでもトップクラスです。

競合となるfreeeにクラウド会計ソフト事業者シェアでは劣るものの、今後の展開次第では逆転もあり得る数字と言えます。

B2C譲りのユーザビリティーが魅力のクラウド会計ソフト

マネーフォワードは個人向けの家計簿アプリを運営していることもあり、会計に関わる専門知識がない人にも分かりやすい設計が特長です。

また、「MFクラウド会計」以外にも給与や経費精算、請求書、マイナンバーといったバックオフィス業務支援ツールを用意し、それぞれをシームレスに連携させることでさらなる使い勝手を実現しています。

その他の注目SaaS提供企業

上記で紹介した以外にも、近年業績を伸ばしているSaaS提供企業を紹介します。

ユーザーベース「SPEEDA」

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SPEEDA

財務情報を含む企業情報や業界の統計・比較データを一元的にリサーチできるSaaSです。

国内の全上場企業はもちろん、非上場約35,000社のデータを検索できる他、海外企業についても250,000社をカバーしています。データ収集・分析をとにかく簡単に、かつ正確に行える点が大きな魅力です。

リンクアンドモチベーション「モチベーションクラウド」

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モチベーションクラウド

リンクアンドモチベーション社が行ってきた組織人事コンサルティングのノウハウを基に開発した組織改善クラウドです。

組織状態の把握や改善プランの実行を支援することで、人事担当者や現場社員が「PSD」(Plan・Do・See)サイクルを回し、組織強化を実現します。

チームスピリット「TeamSpirit」

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TeamSpirit

勤務管理・工数管理・経費管理などを一元管理できるクラウドサービスです。バックオフィス業務のフローを改善し、担当者の負荷軽減につながります。

低コストかつ、SalesForce連携も魅力のひとつです。

まとめ

今回の結果を見ると、従来オンプレミス型で多大なシェア率を誇った企業であったとしても、クラウド化の波に押されて顧客数を伸ばせないといった状況があるとわかりました。一方で、早い時点からSaaS事業に着手してきた企業については着々とシェア率や業績を伸ばしています。

今後、新たなサービスや事業者の登場で、各社の立ち位置が入れ替わることも十分に予想されます。SaaS導入におけるサービス選定をしている担当者は、ぜひ今回の記事を参考にしてください。