SaaS(Software as a Service)は、インターネットを通じてソフトウェアをユーザーに提供するサービスです。利用期間に応じた料金を請求する「サブスクリプション型」の料金体系であるため、顧客に自社を長く使ってもらうことで成長するビジネスモデルです。

そのため、単価×数量=売上で評価する売り切りモデルとは別のフレームワークでの評価指標が必要です。

SaaSビジネスにおける重要KPIの一つが、CAC payback period顧客獲得単価の回収期間)です。この記事では、CAC payback periodの意味や計算方法、なぜ重要なのかについて解説します。

目次

  1. CAC payback period(顧客獲得単価の回収期間)とは
  2. CAC payback periodがなぜの重要なのか
  3. CAC payback periodの計算式
  4. CAC payback periodの目安は6ヵ月から12ヵ月以内
  5. CAC payback periodを改善する方法
  6. CAC payback periodとあわせて覚えておきたい指標
  7. 主要KPIを理解して、SaaSビジネスに役立てよう

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SaaSビジネスの重要指標とよくある疑問

SaaSビジネスの重要指標とよくある疑問

単なる用語集ではなく、よくある疑問への答えや、各指標を改善するためのポイントを、図解を交えてゼロからわかりやすく解説しています。

CAC payback period(顧客獲得単価の回収期間)とは

CAC payback period(顧客獲得単価の回収期間)とは、SaaSビジネスにおける重要KPIの一つです。

CAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得コスト)は、SaaSプロダクトの顧客を1人獲得するためにどれだけ営業費用がかかったかを示す指標です。そしてPayback Periodは、その回収期間を示します。

つまり、CAC payback periodとは「財務上、費用対効果良く顧客を獲得できているか」を判断するための指標です。

CAC payback periodがなぜ重要なのか

CACは、将来のビジネスの利益を見越して先行投資した費用です。先行投資費用をできるだけ早く回収してリターンにつなげなければ、財務上、健全な状態とは言えず、利益は増大していきません。

そこで、「顧客獲得施策に対する投資効率はどうか?」「集客施策の在り方に問題はないか?」といった視点でビジネスを俯瞰するために、CAC payback periodという指標を追いかけることが重要になってきます。

そうすることで、ビジネス上の課題を数値に基づいて合理的に判断でき、ビジネスの効率性を高めていくことができます。

CAC payback periodの計算式

PaybackPeriod.png

CAC payback periodの計算式は次の通りです。

CAC payback period(ヵ月)=1顧客獲得コストの総額 ÷(1顧客の平均売上金額×粗利率)

CAC payback periodの目安は6ヵ月から12ヵ月以内

CAC payback periodの単位は「ヵ月」です。その期間が短ければ短いほど、費用対効果良く顧客獲得が進んでいることを示し、目安は「6〜12ヵ月」などとよく言われます。

また、CAC payback periodとユニットエコノミクスはセットで判断する必要があります。

ユニットエコノミクス.png

ユニットエコノミクスとは、「1顧客あたりの採算性を示す指標」です。ユニットエコノミクス > 3(LTVがCACの3倍大きい)を満たしていれば、ビジネスを黒字化できている健全な財務状況であり、適切な数値だとよく言われます。

ただし、ユニットエコノミクス > 3を満たしている場合でも、CAC payback periodが12ヵ月を超えていると投資効率に難があり、ビジネスとして健全だとは言えません。

ユニットエコノミクスとCAC payback periodは必ずセットで見るもの、と理解しておきましょう。

CAC payback periodを改善する方法

CAC payback periodを見て「現状よりも改善が必要(短期化するべき)」と判断した場合には、先述した計算式中の各変数に着目することで、改善のヒントを得ることができます。

CACを下げる

まずは、集客や顧客獲得にかかるマーケティングやセールスのコストを下げる策を考えてみましょう。

計算式の分子に当たる部分であるCACを、できるだけ小さくしようという考え方です。

顧客の平均単価を上げる

顧客に対してクロスセル・アップセルを促し、できるだけ顧客の平均単価を上げる策を検討してみましょう。

計算式の分母を大きくし、CAC payback periodを短くしようという考え方です。

粗利益率を上げる

粗利益とは、売上から原価を差し引いたもので、「売上を増やす」か「原価を減らす」策が考えられます。

SaaSの原価には例えば「ホスティングのためのサーバー費用」「カスタマーサポートの人件費」「カスタマーサクセスの人件費」などが挙げられます。

このような項目の圧縮を検討することが粗利益率の上昇につながり、CAC payback periodの計算式に当てはめると分母が大きくなるので、得られる答えは小さく(CAC payback periodが短く)なります。

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SaaSビジネスの重要指標とよくある疑問

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CAC payback periodとあわせて覚えておきたい指標

CAC payback periodを算出する上で、あわせて理解しておきたい指標を簡単に紹介します。

ユニットエコノミクス(Unit Economics )

ユニットエコノミクスとは、1顧客当たりの採算性を表す指標で、ユニットエコノミクス > 3が適正値です。ユニットエコノミクスの計算式は次の通りです。

ユニットエコノミクス = 1顧客から将来受け取る累積額 ÷ 1顧客獲得コストの総額
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CAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得コスト)

CACとは、1顧客の獲得にかかったコストの総額を示します。​​一般的に顧客獲得コストは高くなる傾向にあります。CACの計算式は次の通りです。

CAC = 獲得するためにかかった営業及びマーケティングの費用 ÷ 顧客数
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ARPU(Average Revenue Per User:1ユーザーあたりの平均的売上金額)

ARPUとは、1ユーザーの平均売り上げを算出する指標です。サービス契約率が増え、ユーザー数の伸びが落ち着いてきた後は、ARPUを増やすことで企業のさらなる成長へつなげられます。ARPUの計算式は次の通りです。

ARPU=課金をしている1ユーザーあたりの平均売上(ARPPU)×課金をしているユーザー率(PUR)
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「ARPAが上がらない」「ARPAがなぜ重要なのか分からない」などと悩んでいる方は多いでしょう。そこで今回は、ARPAとはどんなものなのか、ARPAやARPPUとの違いとともに解説します。ぜひ参考にしてみてください。

粗利益率

粗利益率とは、売上高に対する売上総利益(=粗利益)の割合のことです。

特にスタートアップ企業にとって、粗利益率をモニタリングすることは非常に重要です。 粗利益率は高ければ高いほど、ビジネスの成長に費やすお金が残っていることを示し、より速く成長できることを意味します。

粗利益率の計算式は次の通りです。

粗利益率=(売上高-売上原価)÷売上高×100

主要KPIを理解して、SaaSビジネスに役立てよう

サブスクリプション型サービスであるSaaSビジネスにおいては、財務状況の健全性を判断する上で、売り切りモデルとは異なる考え方が重要である、という点を理解しましょう。

頻出するKPIを覚えて、ぜひ自社ビジネスの日々の運営に役立てていってください。

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