ユニットエコノミクスは、SaaSビジネスに携わる上で欠かせない重要指標です。ユニットエコノミクスの考え方を用いると、SaaSビジネスの収益性を客観的に評価し、最適化に取り組みやすくなります。

この記事では、ユニットエコノミクスの計算方法や目安、SaaSビジネスのユニットエコノミクスを改善する7つの方法について解説します。

目次

  1. ユニットエコノミクスとは
  2. SaaSにおけるユニットエコノミクスの計算方法
  3. ユニットエコノミクスの目安
  4. SaaSのユニットエコノミクスを改善する7つの方法
  5. SaaSビジネスのユニットエコノミクス改善のポイント
  6. ユニットエコノミクスとあわせて覚えておきたい指標
  7. ユニットエコノミクスを管理してSaaSビジネスの成果をめよう

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SaaSビジネスの重要指標とよくある疑問

SaaSビジネスの重要指標とよくある疑問

単なる用語集ではなく、よくある疑問への答えや、各指標を改善するためのポイントを、図解を交えてゼロからわかりやすく解説しています。

ユニットエコノミクスとは

ユニットエコノミクスとは、広義には顧客ごとや製品ごとなど、特定のユニットに対する採算性を表す指標です。ユニットエコノミクスを算出すると、顧客獲得や製品販売にかかったコストに対して、どの程度の売上が得られるかを数値として把握できます。

SaaSビジネスでは、1顧客あたりの採算性をユニットエコノミクスとして扱うことが一般的です。

SaaSビジネスでユニットエコノミクスが重要な理由

SaaSビジネスでユニットエコノミクスが重要な理由として、継続課金型のビジネスモデルでは採算性の評価が難しいことが挙げられます。

売り切り型のビジネスモデルであれば、商品が購入された時点で収益が確定するため、採算性の評価が簡単です。一方、SaaSビジネスは一定の期間をかけて継続的に収益が発生するため、中長期的に採算性を評価する必要があります。

ユニットエコノミクスの考え方を導入することで、SaaSビジネスの採算性を適切に評価できるようになるのです。

また、投資や融資を受ける際にビジネスの採算性をアピールする指標としてもユニットエコノミクスが役立ちます。

SaaSにおけるユニットエコノミクスの計算方法

ユニットエコノミクス.png

SaaSビジネスにおけるユニットエコノミクスの計算式は次の通りです。

ユニットエコノミクス = 1顧客から将来受け取る累積額 ÷ 1顧客獲得コストの総額

例えば、1顧客から将来受け取る累積額が180万円で、1顧客獲得コストの総額が60万円の場合、ユニットエコノミクスは3(180万円÷60万円)です。

1顧客から将来受け取る累積額はLTV顧客生涯価値)、顧客獲得コストはCAC顧客獲得単価)と表記されることもあります。それぞれの詳しい算出方法は後述の見出しで参照ください。

ユニットエコノミクスの目安

SaaSビジネスにおけるユニットエコノミクスの目安は3以上です。ユニットエコノミクスが3以上であれば、かけたコストに対して3倍以上のリターンが得られていることを意味します。

図_ユニットエコノミクス_CAC<3.png

ユニットエコノミクスが3未満の場合は、採算性が低いため改善施策が必要です。

ユニットエコノミクスが3以上の場合の注意点 

ユニットエコノミクスは3以上が理想的ではあるものの、3を大幅に上回っている場合は注意する必要があります。

なぜなら、1顧客獲得コストが安いことによってユニットエコノミクスが上がっている場合、機会損失をしている疑いがあるからです。広告費や販促費などの適切な投資により、さらにユーザーを獲得できる可能性があります。

また、かけた顧客獲得コストをどれくらいの期間で回収できるかを表すPayback Period顧客獲得費用の回収期間)も注意すべきポイントです。

PaybackPeriod.png

ユニットエコノミクスの計算に使用するLTV(顧客生涯価値)は、あくまでも月次解約率などから算出される理論値で、実際よりも高く算出されてしまうリスクがあります。

そのため、ユニットエコノミクスが3以上であっても、Payback Period(顧客獲得費用の回収期間)が12ヶ月を超えているとビジネスとして健全ではありません。ユニットエコノミクスとPayback Period(顧客獲得費用の回収期間)はセットで判断することが重要です。

SaaSのユニットエコノミクスを改善する7つの方法

SaaSのユニットエコノミクスを改善する方法は、LTV(顧客生涯価値)を高める施策と、CAC(顧客獲得単価)を下げる施策に分けられます。

LTV(顧客生涯価値)を高める施策

  • 解約率の改善
  • アップセルやクロスセルの実施
  • サービス価格の見直し

CAC(顧客獲得単価)を下げる施策

  • 広告施策の改善
  • 広告以外の集客施策を取り入れる
  • コンバージョン率の改善
  • 商談獲得効率の改善

各施策の詳しい内容は次の通りです。

1. 解約率の改善

SaaSの解約率を改善すると、サービスの継続期間が延び、LTV(顧客生涯価値)が向上します。

解約率を改善するためには、解約の原因をリサーチした上で適切な対策を講じることが重要です。サービス自体の改善だけでなく、導入時のサポートによるオンボーディングの強化LTV(顧客生涯価値)のアップにつながります。

また、ユーザー向けのコミュニティを運営することも取り組みたい施策です。コミュニティにより、ユーザー同士の課題解決や、ロイヤリティの向上による解約率の改善が期待できます。

2. アップセルやクロスセルの実施

より高額な上位プランのアップセルや、オプション機能などのクロスセルもLTV(顧客生涯価値)向上につながる施策です。

アップセルやクロスセルを成功させるには、ユーザーのニーズや課題に合わせて適切なサービスを紹介する必要があります。また、上位プランやオプション機能などを紹介するタイミングも重要です。

顧客と継続的にコミュニケーションを取り、タイミングを逃さずにアップセルやクロスセルを行うための仕組みを作りましょう。

3. サービス価格の見直し

事業のフェーズに応じて、サービス価格を見直すことも重要です。SaaSビジネスのフェーズは立ち上げたばかりの導入期から、ある程度認知され始めた成長期、顧客数の伸びが鈍化してくる成熟期へと移り変わります。

フェーズの移行に伴って、サービスの高機能化サポート強化による値上げ、より安価なライトプランのリリースなどの施策を行うことが大切です。

競合他社サービスの値付けや、自社のサービスに含まれる機能、プランのラインナップなどに応じてサービス価格を見直し、LTV(顧客生涯価値)を高めましょう。

4. 広告施策の改善

広告を使って新規ユーザーを獲得している場合、広告施策の改善によりCAC(顧客獲得単価)が下がり、ユニットエコノミクスの向上が期待できます。

リスティング広告入札キーワードや単価の見直しは、広告費用対効果を高める主な方法です。また、ターゲティング設定クリエイティブの改善、媒体ごとの予算配分の見直しなどもCAC(顧客獲得単価)につながります。

5. 広告以外の集客施策を取り入れる

広告以外の施策で新規ユーザーを獲得できるようになると、広告コストがかからなくなり、全体としてCAC(顧客獲得単価)の削減が可能です。

コンテンツマーケティングにより自社のメディアが検索エンジンの上位に表示されれば、アクセス流入に対するコストがかかりません。また、SNSアカウントの運用広告以外の集客施策として挙げられます。

6. コンバージョン率の改善

コンバージョン率とは、Webサイトなどにアクセスしたユーザーの内、サービス契約や資料請求などのアクションに至った割合を表す指標です。コンバージョン率が高まれば、同じコストであってもより多くの新規ユーザーが獲得でき、CAC(顧客獲得単価)を削減できます。

サービスの魅力導入のメリットをより分かりやすく伝えたり、申し込みフォームの利便性を高めたりすることがコンバージョン率を改善する施策です。

7. 商談獲得効率の改善

商談獲得効率を高めることも、CAC(顧客獲得単価)を削減する施策に含まれます。見込み度の高いリードを商談につなげる主な方法は次の2つです。

ナーチャリングの強化

ナーチャリングとはリードや既存顧客を対象に、継続的な情報提供によって興味度を高めることを指します。事前に購買意欲を高め、商談をスムーズに進められるようになることがナーチャリングのメリットです。

ナーチャリングの具体的な施策として、メール配信ホワイトペーパーの提供ウェビナーの実施などがあります。

インサイドセールスの強化

インサイドセールスとは、メールや電話などを使った非対面のセールス手法です。SaaSビジネスでインサイドセールスを強化すると商談獲得効率が高まり、ユニットエコノミクス向上に繋がります。

これまでの行動履歴や属性などでリードをセグメント化し、適切なタイミングでアプローチすることがインサイドセールスを成功させるポイントです。

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SaaSビジネスの重要指標とよくある疑問

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SaaSビジネスのユニットエコノミクス改善のポイント

ユニットエコノミクスの改善施策に取り組む際は、次のようなポイントを押さえておくことが大切です。

部門間で連携して施策に取り組む

ユニットエコノミクスを改善するためには、マーケティングや営業、サービス開発など様々な部門が連携する必要があります。

部門間で情報共有する体制を整え、ユニットエコノミクスを改善するために各部門が取り組むべき施策を明確化しましょう。

定期的にPDCAを回す

ユニットエコノミクスを改善する際は、目標値を設定し、定期的にPDCAを回すことが重要です。

ユニットエコノミクスは様々な要因で変化していきます。そのため、一度3以上になったからといって施策をやめるのではなく、継続的な取り組みが必要です。

現状と施策の進捗・成果を確認する機会を設け、ユニットエコノミクスを最適化していきましょう。

ユニットエコノミクスの算出を自動化する

ユニットエコノミクスの算出には様々な指標を集計する必要があるため、手作業では時間と手間がかかってしまいます。

管理ツールなどを使って自動で算出し、ダッシュボードにユニットエコノミクスを表示することで、採算性を常に確認することが可能です。

ツールを活用して業務を効率化することも、ユニットエコノミクス改善のポイントです。

ユニットエコノミクスとあわせて覚えておきたい指標

最後に、SaaSビジネスに携わる上で覚えておきたい指標を2つ紹介します。

LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)

LTV(顧客生涯価値)は1顧客から将来受け取る累積額のことで、次の計算式で算出されます。

LTV = (1ヶ月など期間単位ごとの)1顧客の平均売上金額 × 粗利率 × 平均継続期間

期間想定のない契約の場合、平均継続期間を「1÷月次解約率」で推計することが可能です。

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CAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得単価)

CAC(顧客獲得単価)は1顧客獲得コストの総額のことで、次の計算式で算出されます。

CAC = 獲得するためにかかった営業及びマーケティングの費用 / 顧客数

CACの分母となる顧客数には、有料で獲得した顧客数を用いることが一般的です。ただし、事業全体としての獲得効率を見るために、全顧客数で算出する場合もあります。目的に応じて適切な計算方法を選びましょう。

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ユニットエコノミクスを管理してSaaSビジネスの成果を高めよう

ユニットエコノミクスを計算すると、SaaSビジネスの採算性を把握できます。ユニットエコノミクスを改善するためには、LTV(顧客生涯価値)を高める施策と、CAC(顧客獲得単価)を下げる施策の両方が重要です。

SaaSビジネスの運営に携わる方は、ぜひユニットエコノミクスを管理し、最適化のための取り組みを実施しましょう。

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SaaSビジネスの重要指標とよくある疑問

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