SaaSビジネスの現場では、多くの指標(KPI)が共通言語として用いられています。CAC顧客獲得費用)もそのひとつです。この記事では、CACの定義や重要性、計算方法や最適化の方法について解説します。

目次

  1. CAC(顧客獲得費用)とは
  2. CACがなぜ重要な指標なのか
  3. CACの計算方法
  4. チャネルに応じた3種類のCAC
  5. CACを下げる方法
  6. CACとあわせて覚えておきたい指標
  7. CACを把握してビジネスの収益性向上を実現しよう

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SaaSビジネスの重要指標とよくある疑問

SaaSビジネスの重要指標とよくある疑問

単なる用語集ではなく、よくある疑問への答えや、各指標を改善するためのポイントを、図解を交えてゼロからわかりやすく解説しています。

CAC(顧客獲得費用)とは

CACは「Customer Acquisition Cost」の頭文字をとった略語であり、日本語では「顧客獲得費用」「顧客獲得単価」を意味します。「顧客を獲得するために必要なコスト」を意味する用語です。SaaSなど、サブスクリプション型のビジネスでは一般的な言葉として用いられています。

企業は顧客獲得のため、広告出稿、マーケティング、営業などの活動を行います。これらの活動を実施するためには、費用を負担しなければなりません。こうした費用をまとめてCACとして取り扱います。

CACは、事業の収益性が健全かどうかを判断するための指標です。事業を継続していくためには、常にCACを注視しておく必要があります。

CACがなぜ重要な指標なのか

CACの重要性についてより深く理解しておきましょう。CACが重要視されている主な理由は、次の2点です。

投資を優先すべきチャネルを検討するため

CACを把握することで、予算を優先して投資すべきチャネルを見極められます。

顧客を獲得するためには、複数のチャネルに予算を配分するのが一般的です。しかし、すべてのチャネルに均等に投資を行うのは、効率の点から好ましくありません。

費用対効果を把握し、効果が期待できるチャネルに多くの予算を投じる必要があります。CACを把握しておけば、パフォーマンスが優れているチャネルを知ることができます。

ユニットエコノミクスを計測するため

CACはユニットエコノミクスの文脈で語られることが多い指標です。ユニットエコノミクス(Unit Economics)とは、「単位あたりの経済性」を意味します。任意に設定した「単位」を基準に、利益が出ているのか、あるいは損をしているのかを把握するための概念です。

事業内容によって何を単位に設定するのかは異なります。最も一般的な単位は「顧客」です。SaaSビジネスにおいては「アカウント」を単位に設定することも多いでしょう。

詳しくは後述しますが、ユニットエコノミクスを把握するうえでCACは欠かすことができない指標です。

CACの計算方法

CACの基本的な計算式は以下のとおりです。

CAC = 獲得するためにかかった営業及びマーケティングの費用÷顧客数

「獲得するためにかかった営業及びマーケティングの費用」には、営業・セールス担当の人件費やツールの購入費用も含まれます。

通常は、単月や四半期に一度など定期的に計算を行い、各チャネルの効果検証を行います。マーケティングへの投資について評価したい場合は、半年・一年といった長期的なスパンでCACを計算して検証するのが一般的です。

チャネルに応じた3種類のCAC

CACはチャネルによって以下の3種類に分けられます。

  • Organic CAC自然獲得できた顧客の獲得単価
  • Paid CAC有料チャネルでの顧客獲得単価
  • Blended CACOrganicとPaid を合わせた顧客獲得単価

以下では、それぞれのCACについて解説します。

Organic CAC(自然獲得できた顧客の獲得単価)

Organic CACは、「自然に増加した顧客の獲得単価」を意味します。「自然に」とは、つまり「コストをかけずに低コストで)」ということです。具体的には、以下のようなチャネルによって獲得した顧客の獲得単価を指します。

  • 検索エンジンからの流入
  • SNSからの流入
  • 既存顧客からの紹介

Organic CACは、以下の式によって算出されます。

Organic CAC=自然獲得した顧客にかかったコスト÷自然獲得した新規顧客数

Paid CAC(有料チャネルでの顧客獲得単価)

Paid CACは、有料チャネルによって増加した顧客の獲得単価です。Web広告など、コストをかけて増加した顧客の獲得単価は、Paid CACとして取り扱います。

Paid CACは、以下の式によって算出されます。

Paid CAC=有料チャネルにかけたコスト÷有料チャネルを経由して獲得した新規顧客数

Blended CAC(OrganicとPaid を合わせた顧客獲得単価)

Bleded CACは、Organig CACとPaid CACを合わせた顧客獲得単価のことです。通常、「顧客獲得単価」という時はBlended CACを指します。

Blended CACは、以下の式によって算出されます。

Blended CAC=顧客を獲得するために費やした全コスト÷新規顧客獲得数

CACの目安

CACは単体では評価することはできません。上述したとおり、CACを算出する目的のひとつは、ユニットエコノミクスを把握することです。ユニットエコノミクスは、CACと後述するLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)から、以下のような式で算出されます。

ユニットエコノミクス = LTV÷CAC

事業が健全な状態にある」と判断されるユニットエコノミクスの水準は3以上です。常にCACとLTVを確認しながら、事業の健全性を評価していくことが求められます。

図_ユニットエコノミクス_CAC<3.png

CACを下げる方法

ユニットエコノミクスを上げていくためには計算式の分母であるCACを下げる必要があります。CACを最適化する手法は、コストを下げることと獲得件数を上げることに大別されます。以下ではそれぞれの手法について解説します。

営業・マーケティングコストを下げる

営業・マーケティングコストは、CACの分子の部分にあたります。コストを下げれば、CACを下げることが可能です。コストを下げる取り組みの代表例は次の通りです。

● Organic CAC比率を高める

Blended CACにおけるOrganic CACの比率を高め、Paid CACを下げることがポイントです。SEO対策、オウンドメディアによるコンテンツマーケティングなどは検索流入の増加につながるため、Organic CAC比率を高める方法の代表例と言えます。

● 業務を効率化する

新規顧客のための手間や消費するリソースもコストとして考えなければなりません。このことから、業務効率化もCACを下げる取り組みのひとつと言えます。

意識や体制を整えることによる効率化には限界があるため、ツールを導入するのが一般的です。営業やマーケティングにおいては、CRMやSFAなどのツールが利用されています。初期コストやランニングコストが発生しますが、多くの業務を自動化することが可能です。

● CV率を向上させる

CV率を向上させていくことも重要です。CV率が高いほど、顧客を効率的に獲得できていることを意味します。自社サイトの導線改善、離脱率の高いページの改修などは、CV率向上につながる取り組みの代表例です。

● 広告を見直す

出稿している広告を見直すことも求められます。あまり効果が出ておらず費用ばかりがかかっている広告に関しては、出稿を取りやめる決断も必要です。相対的にOrganic CACが増えることにもつながります。

獲得件数を上げる

顧客の獲得件数を上げてCACを下げていく手法もあります。

● セールス力を強化する

セールス力の強化は、顧客獲得件数の増加に直結する取り組みです。営業はノウハウが属人化しやすく、チームで業績を上げていくことが難しい側面があります。

近年は、SFAなどを活用してナレッジやノウハウを共有するのが一般的です。

● セールスイネーブルメントに取り組む

欧米ではすでに一般的であり、近年日本でも注目されているのが、セールスイネーブルメントの取り組みです。セールスイネーブルメントとは、研修、プロセス管理、分析、ツールの導入といった営業の改善施策をトータルで設計することです。

具体的には、目標や貢献度の数値化を徹底することで、着実な営業効果の改善を目指します。業務効率の向上、属人化の防止にもつながるほか、獲得件数の増加も期待できます。

CACとあわせて覚えておきたい指標

CACとあわせて覚えておきたい、関連性の強い指標を紹介します。

CPA(Cost Per Action:顧客獲得単価)

CPAは「Cost Per Action」の略であり、CACと同じく「顧客獲得単価」と訳されます。CACとの違いは、対象となる範囲です。CACが顧客の獲得と、顧客の獲得にかかった総コストにフォーカスしているのに対し、CPAは主に広告のコストとそれによるCVのみを対象としています。

CAC Payback Period(顧客獲得費用の回収期間)

CAC Payback Periodは「顧客獲得費用の回収期間」を指し、獲得コストを回収できるまでの期間のことで、以下の式から算出します。

CAC Payback Period = CAC÷顧客の平均単価

CAC Payback Periodが短いほど即効性が高い施策を実行できていることを意味します。SaaSにおいては、6~12ヵ月が目安です。

CAC Payback Period(顧客獲得単価の回収期間)とは?意味や計算式、改善方法を解説

CAC Payback Period(顧客獲得単価の回収期間)とは?意味や計算式、改善方法を解説

CAC Payback Period(顧客獲得単価の回収期間)とは、SaaSビジネスにおける重要KPIの一つです。この記事では指標の意味と計算方法、なぜ重要なのかについて解説します。

LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)

LTVは「Live Time Value」の略であり、日本語では「顧客生涯価値」と訳されます。顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益の総額を示す指標です。顧客獲得にかかるコストを示すCACとは対になる存在と言えます。

企業はLTVが高くCACが低い状態、つまりユニットエコノミクスが高い状態を追及する必要があります。

SaaSビジネスで欠かせない!LTVが重要指標といわれる理由と計算方法をわかりやすく解説

SaaSビジネスで欠かせない!LTVが重要指標といわれる理由と計算方法をわかりやすく解説

SaaSビジネスの事業効率性を測る重要指標のひとつである、LTV。その意味や算出方法など、最低限知っておきたい基本知識を解説いたします。初めて聞いた方はもちろん、すでに言葉を知っている方も再度この機会に理解度を深めてみてはいかがでしょうか。

CACを把握してビジネスの収益性向上を実現しよう

SaaSビジネスの収益性を保つためには、CACを把握し、ユニットエコノミクスを健全な状態でキープすることが重要です。Organic CAC、Paid CACに分けて考え、コストをかけるべきチャネルを見定めることでCACを下げるように意識しましょう。

また、CAC Payback Period、LTVなど、SaaSにおいて重要な他の指標についてもあわせて理解しておくことが大切です。

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単なる用語集ではなく、よくある疑問への答えや、各指標を改善するためのポイントを、図解を交えてゼロからわかりやすく解説しています。