営業主体からデータドリブンへの変革 一休.comはどのようにして組織を変えたのか
データに基づいたハイレベルな提案へ
ferret:
メールマガジン以外にも変化はありましたか?
植村氏:
営業スタイルも大きく変わりましたね。
私の営業に同行された際に、商談が終わってから「どうでしたか?」と聞いてみたんです。そしたら*「ハイレベルな提案が無いですね」*と一蹴されたんです。いわゆるベテラン営業マンとしての自負も多少あったので、その理由を聞いてみると、「データに基づく提案が無い」と。
ホテルの宿泊プラン例
例えば、宿泊施設は一休.comに掲載する際に宿泊プランの価格を決めています。その価格をこちらから提示することも多かったのですが、それが肌感覚でしかなかったんですね。
榊いわく、その施設の全部屋数や空き部屋数、他施設とのシェア率などを過去のデータに基づくと、適正な価格を提示できるし、ユーザーはいくらのプランならクリックするのか数字として出すのもそこまで難しくないだろうと。1万5千円が適正な価格と考えられる宿を1万円で掲載するのは宿にとって損だし、2万円で掲載するのはユーザーにとって損ですよね、と言われてハッとしました。
ferret:
そこから営業スタイルも変わっていったのですね?
植村氏:
そうですね。きちんとこれまでのデータを元にした提案をすることで、営業活動は大幅にレベルアップしましたね。
改革には強制力が不可欠
ferret:
メールマガジンや営業スタイルの変化など、かなり強制力を持って取り組まれたように感じたのですが、なぜ現場は受け入れることができたのでしょう?
植村氏:
正直、受け入れるかどうかの選択が与えられる余裕もないくらいに強制的だったんです。
でも、今ではそれくらい強制的に変えてもらってよかったなと思っていますね。どうしても人って昔の良かったところだけを思い出して、昔の習慣に戻ってしまうと思うんです。少しでもこの隙があると、ここまで変わることは難しかったかなとも思いますね。
今でも覚えているのが、お得意先のホテルでの商談に榊が同行した際に、榊からデータの資料を見せながら、提案をした際に、先方からお叱りを受けたことがあったんです。先方のホテルとはお付き合いも長かったので、「いきなり入ってきて上から偉そうにデータだけで提案をするな」と。
その場は、私から謝罪をして、その場を収めたのですが、榊はそのデータに基づく姿勢をその後も崩さなかったんです。そうするうちに様々な場面で、先方から「あの資料が欲しいんだけど」といった声が届くようになっていきました。
結局「少しやってみよう」くらいの心持ちでは組織や人は変わらないから、それくらいの思い切りと強制力が必要なんだなと痛感しましたね。
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