広告マーケティングの急速なデジタルシフトに伴い、「Webマーケティング」や「SEO対策」「インバウンドマーケティング」といったオウンドメディアを中心としたマーケティング施策の重要性がますます高まってきており、自社ホームページをリニューアルするなど、最適化の動きも加速しています。

しかしデジタル関連の制作作業は複雑で、担当者間のリテラシーにも差があることが多いため、Webサイト制作には失敗がつきもの。例えば「現場と経営者の考える方向性が違う」「様々な部署から要望がたくさん出てしまい、よく分からない方向に進んでしまった」「見た目は綺麗なサイトになったが、結局コンバージョンは伸びなかった」など。

そこで本記事では、日々多くのWeb担当者と接している制作会社のディレクターが経験した事例を元に、サイトリニューアルの際によくある失敗例を挙げ、成果を得るために本当に必要なことは何なのか解説します。なぜ思ったようなWebサイトにならないのか?社内の要望をどう精査し、とりまとめていくべきか?などのお悩みに対する実践的なヒントがまとまっているので、問題解決の糸口がつかめるかもしれません。

事例1:社内で多方向から要望が来てしまい、精査できない

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どんな会社でも、複数の部署がそれぞれに決められた役割を果たすことで成り立っています。そのため、Webサイトをリニューアルしよう!となった際に、各署から様々な方向の要望が寄せられ、それぞれの矛盾をうまく精査し、まとめるのに苦労することも多いでしょう。

ではなぜ要望を精査できないのか?1番の理由として考えられるのは、「リニューアルの目的が明確になっていないから」です。とあるメーカーの事例を元に説明すると、製品ページを充実させて魅力を伝え新規顧客のリードを獲得したいのか、あるいは製品登録に関する既存のオペレーションを効率化して運用コストをカットしたいのか。それだけでもリニューアルの方向性は大きく変わります。さらに、製品ページを魅力的にするためにデザインや設計を見直すのか、受注率を上げるためにクライアント先で導入事例を紹介するための限定ページを新設するのかでも、プロジェクトの組み方は異なります。

こうした場合、まずはリニューアルする目的を明確にすることで「解決したい課題」が浮かび上がります。課題が明確になれば、あとはその解決方法が定まってくるので、たいていの要望は自然と優先度が決まってくるはずです。

事例2:制作会社から期待した提案が上がってこない

事前に要望を伝えたのに、提案書が打ち合わせの内容をなぞっただけのものだったり、意図と違う内容だったりして頭を抱えるWeb担当者も多いでしょう。最初の段階での協力会社との方向性のすり合わせはとても重要ですが、実は難易度も非常に高いものです。この要因には、両者の立場の違いからくる認識差があります。発注者である事業会社サイドのWeb担当者は制作会社ほどWeb制作について知りませんし、反対に制作会社は発注者の事業や経営戦略などについてキャッチアップの努力はするものの、社内の人以上に詳しくなることは難しいからです。

認識差のある者同士がお互いを理解し、一つのWebサイトを作り上げていくために、制作会社には初期の段階でできる限り情報提供することが必要です。「コーポレートサイトをリニューアルしたい」とだけ伝えた制作会社と、業界のポジション、経営戦略、中期から長期までのビジョンなども含めて共有した制作会社とでは、出来上がりは当然違ってきます。クライアントの想いを受け取ったら、制作会社は知識やアイデアを総動員し、最適なリニューアル案を企画提案してくれます。

中にはオリジナルのRFP(提案依頼書)を提供している制作会社もあります。専門的過ぎて埋めにくいかもしれませんが、一度それに沿って考え、抜け・漏れのない十分なオリエンテーションを行うことがおすすめです。

事例3:公開間近でリニューアルの方向性が変わってしまった

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Web担当者にとって最も胃が痛くなることの一つに、納期が間に合わないというのがあるのではないでしょうか。主な原因としてよく挙がるのが、決裁者や関係部署との合意がしっかりと取れないままに進行していた、というものです。口頭での報告で済ませていた場合や、報告していたが公開前の実物を目にした途端に「イメージと違う!」と言われてしまう場合もあるでしょう。

制作会社のディレクターによっては、事前に社内の決裁者や関係部署から合意を得て欲しいタイミングを自主的に提示してくれたり、協議する場を設定してくれたりすることもありますが、社内事情を全て理解できない協力会社という立場上、完璧なケアは不可能です。立場によって考え方や感じ方が違うこともあり、途中段階で報告するのは気が重いかもしれません。しかし、発覚するのが後になればなるほど納期は遅れ、程度によっては追加費用が発生することもあります。

これまでの事例で説明したとおり、まずは明確な目的と情報共有をすることで制作会社から十分なサポートを取り付けることが第一ですが、それに加え、決裁者及び関係部署との合意を適切にとることが肝心です。合意内容の齟齬を防ぐためのコツとして、なるべく早い段階でテキストだけでなく完成イメージを共有することで、「イメージと違う!」と言われるリスクを最小限に抑えられます。

事例4:サイトが出来上がるにつれ、追加して欲しい機能が増えてきた

初めは漠然としていたリニューアルも、デザインができてきて実物を目の当たりにすると、これまで見えなかった部分が気になり始めます。すると新たにアイデアが浮かび、あれこれ追加したくなってしまうことがあります。これが誰か一人ではなく関係者全体で起こると、あと一歩のところでプロジェクトが混乱してしまいます。

そんな時の対処法は、「長期的な目線に立ち返る」ことです。細部を見るあまり、目線が目の前のことに集中してしまっているかもしれません。例えば、自社で運用するページに機能を追加したくなったとします。しかし、機能が複雑になればなるほど使いこなすのが難しくなり、引き継ぎにも時間がかかり、Web担当者交代後に運用されなくなるかもしれません。事情を知らない外部の人が見れば、更新の精度にムラがあると捉えられかねません。欲しい機能が増えてきた際には、長期的に見て運用可能かどうか、本当に必要な機能かどうかを見極めていきましょう。長い目で見て、今組み込んでおくべきものであれば、迷わず追加の相談をして大丈夫です。

事例5:Web担当者が数年に1度代わるため、以前の記録が抜けている

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今でこそWebサイトは運用ありきという認識が広まっていますが、数年前は「とりあえず」で作られたものも多く、ほとんど更新しない企業も多くありました。数年前に制作した時のデータや情報は残っているでしょうか?また、大手企業などは数年に一度必ず異動があり、タイミング的に前任の担当者は前回の制作に関わっておらず、人づての情報しかない、といったことも起こるかもしれません。

こうした情報分断リスクを防ぐための確かな方法の一つは、制作会社をコーポレートサイト運用のパートナーとして迎え入れることです。企業のビジョンを共有し、Webサイトの歴史を知る存在を外部に作ってしまうことで、制作に関する専門分野を任せられるのはもちろん、情報が一社に集約されるのでリニューアルの度に経緯や企業の基本的な情報、サーバの契約に関することなどもかき集めて説明する必要がありません。

もし制作会社サイドの担当者が代わっても、Web制作のプロである制作会社は会社として情報を保管しているので、適切に管理・引継ぎが行われます。協力会社選定の方法は企業の状況や社内の体制、方針によりますが、長く一緒に制作運用していけるパートナーを見つけることをおすすめします。

成果の出るリニューアルは企画と準備で決まる

Webサイト制作で起こりがちなトラブルについて、5つの例を挙げて解説しました。それぞれのポイントをまとめると以下のようになります。

 ①リニューアルの目的と成果の指標をしっかりと決める
 ②自社のことを十分に制作会社に伝える
 ③決裁者や関係部署との合意を確実に得る
 ④長期的な目線をもつ
 ⑤制作会社をWebサイト運用のパートナーとして迎え入れる

サイトリニューアルを考える時は、つい見た目から考えてしまいがちですが、最も重要なのは根幹にあたる企画です。デザイン面は専門家である制作会社に任せて構いません。企画の軸がぶれずに進んでいけば、大きく外れることはないので、軌道修正も容易です。そもそもWebサイトはブラッシュアップしながら運用していくものなので、課題を次の機会に持ち越しても問題ありません。まずは目的や自社のことを伝えて提案を待ち、その間に社内で合意を得るための段取りを進めておきましょう。

株式会社ジーピーオンライン では、Web担当者のタスクリストWebサイトで配布しています。制作の流れに沿って必要なことを把握でき、準備もスムーズになります。リニューアルを検討中の方は活用してみてはいかがでしょうか。