現代は企業の領域やプロダクトごとに異なるマーケティング手法が存在し、書店でも様々な手法について紹介された書籍が並んでいます。マーケティング担当の方にとってはどれも魅力的な手法に見えますが、自社の商品を売るためにはどんな手法でマーケティングを行えばよいのか、迷ってしまう方も少なくないでしょう。

この記事では近年注目を集めている「ナラティブマーケティング」について詳しく解説。物語を応用して顧客の心理に訴えかけることで、集客やブランディングにもつながる手法であり、様々なプロダクトに応用できます。この記事を参考にして、さっそく今日からナラティブマーケティングに取り組んでみましょう。

ナラティブとは?

ナラティブとは「物語」を指す英語です。日本では物語を「ストーリー」と訳すので、「ナラティブ」と「ストーリー」の違いを明確に説明するのは少し難しいと言えます。また、マーケティングの分野においても「ストーリーテリング型マーケティング」という言葉が存在していたため、新しく「ナラティブマーケティング」と言われてもピンと来ず、混同してしまう方が少なくないのです。

ナラティブもストーリーも「物語」ですが、主人公が異なります。この点が二者を隔てる大きな違いで、ナラティブやストーリーを活用したマーケティング戦略にも深く関わってくるのです。

ナラティブマーケティングと、従来のストーリーテリング型マーケティングを比較しながら、詳しく解説していきます。

これまでのストーリーテリング型マーケティングとの違い

ストーリーとナラティブの違いを明確にするために、ビデオゲームを例にして比較してみましょう。

ストーリーとは、いわゆる「シナリオゲーム」のような形式でユーザーの感情移入を誘うものです。選択肢による分岐などがなく、一本道で結末まで向かっていく……その過程に起承転結を盛り込むことで、物語中のボルテージを操作し、ユーザーの心情も連動して揺さぶって感動を生み出します。

対してナラティブとは主人公が「あなた」になる形式の物語です。ロールプレイングゲームのように、自分の選択によって様々な分岐を通り、あなただけの結末に辿り着きます。特徴としては、単にシナリオをなぞるだけではなく、「あなた」の選択が世界に作用してシナリオが変化する(ように思わせる)ことで、より深い没入感や感情の揺さぶりをかけられることです。言い換えれば、「あなたの中のリアル」にゲームの世界が組み込まれている状態と言えるでしょう。

ナラティブとストーリーの違いは主人公と述べましたが、つまり主人公が「あなた」か「あなた以外」か、という違いなのです。これをマーケティングに応用すると、どのような戦略になるのでしょうか。

ナラティブなアプローチはどのように行う?

ナラティブマーケティングは、先ほど紹介したナラティブな(顧客を主人公にする)状況をマーケティングの施策として応用する手法です。具体的に、どうやってナラティブなアプローチをかけていけばよいのでしょうか。

ここでは代表的な国内のナラティブマーケティングの事例をもとに、詳しく解説していきます。

SUBARUのCM「Your story with」

SUBARUの「Your story with」は、ナラティブマーケティングをうまく応用した例と言えます。

公式サイトを見ていただければ分かる通り、様々なドラマをCMとして配信したり、小説まで公開したりしているのだから驚きです。いずれもキャッチコピーは「あなたとクルマの物語」。CMについても「あなたとクルマ、どんな物語がありますか?」と、ユーザーに考えさせるようなナレーションからスタート。思わず自分が初めて買ったクルマの思い出を振り返ってしまうような仕掛けが施されています。

様々な年代、家庭の状況を克明に描き、クルマと絡めた結末で締める――。そこにSUBARUの理念や創業物語などは入っておらず、限りなくユーザーに近い方が主人公として設定されています。これはユーザーが自らを主人公として投影するための施策で、SUBARUやSUBARUのクルマが主人公だった場合は「ストーリーテリング型マーケティング」となります。

参考:SUBARU「Your story with」

ナラティブマーケティングのメリット

ナラティブマーケティングが注目を集めている背景には、ナラティブマーケティングが持つ絶大なメリットの存在があります。ナラティブマーケティングを取り入れることでどのようなメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。

ユーザーから信頼と好感が得られる

ナラティブマーケティングユーザーを主人公とするマーケティング手法です。あなたがナラティブマーケティングを用いて商品の販促を行ったとしましょう。それを見たユーザーはあなたの企業の商品に対して、「自分のストーリー」を思い浮かべます。

「自分の生活にあなたの企業の商品を組み込んだ場合、どうなるのか」をユーザーごとに思い浮かべるので、企業側が働きかけられる範囲を超えて、ユーザーが勝手にあなたの企業の商品に対して思い入れを抱くようになります。

その結果、画一的な感情を生み出すのに適したストーリーテリングと比べて、深い愛着が生まれやすく、ブランディングの目的も果たせるのです。それぞれのユーザーごとに独立したシナリオが生み出される、ナラティブマーケティングならではのメリットと言えるでしょう。

ナラティブマーケティングを行う商品の位置づけが明確になる

ナラティブマーケティングの施策を行おうと考えたときに避けて通れない問題があります。それは「どんなユーザーがこの商品を使うのか」「どんなタイミングで使うのか」「それを通してユーザーはどうなるのか」という点について徹底的に考え尽くさなければならない、という点です。

これはつまりユーザーがあなたの企業の商品を通してどんなストーリーを歩むのか、ということに他なりません。この点がはっきりしていないと、ナラティブマーケティングを行おうとしてもうまくシチュエーションが用意できないのです。逆に、ユーザーがどんなストーリーを歩むのかがしっかりと見えている商品は、市場での位置取りもイメージしやすくなる、と言えます。

ナラティブマーケティングの施策を具体的に考えることで、商品の位置づけが明確になるのもメリットの一つです。

ナラティブマーケティングは今注目されている

Forbes Japanで関連記事が掲載された2017年あたりから、ナラティブマーケティングには注目が集まっています。なかなか手法を確立しにくい分野ですが、だからこそうまく顧客の心を掴めれば絶大な効果を発揮します。

ぜひこの記事を参考に、「自社の商品をナラティブマーケティングで売り込むとしたら」という問いを立ててみましょう。これまで見えていなかったユーザーの顔やストーリーが明確に見えてくるかもしれません。

参考:2017年は「ストーリー」型マーケティング終焉の年に

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