世界の広告シェアのうち、今や4割以上をデジタル広告が占めています。そのため、デジタル広告の仕組みについて理解を深めることはマーケターにとって必須事項と言えるでしょう。そんなデジタル広告に関わるうえで「フィルレート」は、広告の収益性を考えるうえで大切な指標であり、ぜひとも把握しておきたいものです。記事では、フィルレートの基本とその重要性を解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

参考:【調査データ】2021年には広告費の半分が「デジタル広告」に?「世界の広告費成長率予測(2019~2021)」から見る広告市場のこれから

「フィルレート」とは何か?

フィルレート(Fill Rate)とは、メディアやアプリなどが提供する広告枠在庫に対する広告の埋まり具合の割合です。フィルレートが100%であれば、最大限に収益を得ている状態であり、低くなるほど広告が表示される機会を十分に得られないため、十分な収益が見込めず、機会損失が広がっているという考え方ができます。

広告運用においてなぜフィルレートの観点が必要なのか?

広告運用において、「いかに広告枠の空きを少なくできるか」を意識する必要があります。その指標として、フィルレートを把握しておくことで、広告収益における金額をイメージしやすくなり、利益に貢献するアドネットワークはどれなのかを明確に判断できるようになるのです。メディアの価値を高めてくれるような広告主が集まるアドネットワークであることは、高いフィルレートを保持する条件ともなるでしょう。

フィルレートの計算方法

フィルレートは、以下のように算出されます。

フィルレート(Fill Rate)=広告の表示数(Impression)÷ 広告のリクエスト数(Request)

フィルレートを考慮してアドネットワークを比較してみましょう。

例えば、以下A〜Cのようなアドネットワークがあったとします。インプレッション(Impression)は3つとも1,000回とした場合、フィルレートを考慮するとどのアドネットワークの収益性が最も高いと考えられるでしょうか。

【アドネットワークA】
CTR=1% / CPC=35円 / フィルレート=70%
【アドネットワークB】
CTR=1% / CPC=40円 / フィルレート=50%
【アドネットワークC】
CTR=1% / CPC=22円 / フィルレート=100%

「アドネットワークA」はフィルレートが70%であることから、1,000回のインプレッションがあっても実際は700回しか広告の表示がないわけです。同様に「アドネットワークB」では500回表示されることがわかります。これらに対して、「アドネットワークC」は1,000回全て表示されるのです。CPC(クリック単価、Cost Per Click)が最も低いのは「アドネットワークC」ですが、収益を計算すると、「アドネットワークC」の収益性が一番高いという判断ができます。

このようにフィルレートに注目すると、いくらCPCやCTR(クリック率、Click Through Rate)が高くても、単純に利益が上がるイメージはできなくなるでしょう。

参考:フィルレートについて解説!広告モデルのアプリは覚えておこう

フィルレートの影響を踏まえたアドネットワークの使い方

先述した通り、フィルレートは収益への影響が大きく、アドネットワークを比較する際の指標の一つと言えます。しかし、フィルレートの低いアドネットワークでも、問題の回避は可能です。フィルレートが低いアドネットワークの懸念点は、「広告が表示されない割合が高くなる」ことなので、別のアドネットワークに切り替えるといった方法を利用するのが有効でしょう。

例えば、AdMob メディエーションというツールを使えば、アプリ内で複数のアドネットワークを使えるようになります。さまざまなアドネットワークから自由に割り当てられるようになれば、先ほどのフィルレートの問題はクリアできるのです。エリアごとの設定や優先順位などの条件設定ができ、使い勝手が良いうえに、フィルレートが低いことで生じるロスをカバーできるので理想的と言えるでしょう。
※各アドネットワーク社のSDKの仕様によっては自動的に切り替え不可の場合もあるようなので利用前に必ず確認をしましょう。

この他にも、収益性の高いアドネットワークに広告リクエストを送るように設定できるツールがあります。フィルレートを高めるために自動的に広告枠の空きを検知することや、リアルタイムに最適な調整を行うことが可能であるため、導入メリットは大きいでしょう。

参考:
【iPhoneアプリ広告で稼ぐ・第1回】アドネットワークを比較して選ぶ方法|APPBANK

フィルレートとともに押さえておくべき「eCPM」

フィルレートとともにアドネットワークを比較する際に注目される数値が「eCPM」です。eCPMは、「Effective Cost Per Mille」の略称であり、「広告が1,000回表示される際の収益金額」を指します。eCPMは、広告の収益金額から表示回数(インプレッション数)を割って、その数値に1,000を掛けて算出します。

eCPMではなく、「CPM」という指標も存在します。CPMはインプレッション課金の分も入っていますが、インプレッション課金を含まない実際のもの(Effective)という意味でeCPMと呼ばれているのです。

インプレッションに注目するeCPMも、フィルレートとともにアドネットワークを検討する際に出てくる指標だということを覚えておきましょう。

※「Mille」とは1,000という意味
参考:「教えて!達夫先生」〜eCPM はどのように決まるの?〜

フィルレートとインプレッションに注目し、広告運用の適切な判断を

メディアやアプリが、広告による収益を十分に得るためには、自社にとって理想的なアドネットワークを利用する必要があります。記事では、フィルレートに関する基本的なことを紹介しましたが、デジタル広告においてインプレッションに注目する必要がないということではありません。インプレッションあってのフィルレートなのです。インプレッションにボリュームがあることも留意したうえでフィルレートを上手く活用しましょう。

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