ヘッダービディング」は、2018年あたりから急速に広まった広告技術で、最も単価の高い広告を表示する仕組みです。今や主流とも言われる仕組みですが、どのようにメリットをもたらしてくれるかを知らずに、導入の検討はできません。そこで、ヘッダービディングの基本や仕組み、メリットを解説します。

ヘッダービディングとは

先述の通り、ヘッダービディングとは、最も単価の高い広告を表示する仕組みのことで、収益の最大化が目指せるといったメリットがあります。米国の大手SSP企業のRubicon Projectの報告によると、メリットの大きさからヘッダービディングは日本でも2018年時点で72%まで普及しているとのこと。自社サイトに広告枠を設けているのに、ヘッダービディングを導入していないなら、他社よりも損をする可能性があると考えてみた方がよいでしょう。

ヘッダービディングの背景

ヘッダービディングは、複数の広告候補への問い合わせと公平な競りを行い、最高単価広告を表示させるというものです。ヘッダービディング登場前の状況から考えると、画期的な仕組みと言えます。

ヘッダービディング登場前は「ウォーターフォール」が主流

ヘッダービディングの登場前は、「ウォーターフォール」という広告枠の買取や表示の仕組みが主流でした。

まず、ユーザーが広告枠のあるWebページにアクセスすると、Webページは、適した広告を出すようにSSP(Supply-Side Platform)というプラットフォームに問い合わせます。

SSPは、ユーザーが反応しそうな広告を出すべく、Webサイトの情報やユーザーの属性を確認。広告出稿側が使うプラットフォームであるDSP(Demand-Side Platform)と連携して、表示する広告を決めていきます。なお、SSPには各Webサイト広告枠の情報が集められているのに対し、DSPには広告の情報が集まっていると考えてください。

もちろん、情報が集められているSSPとDSPがあるだけでは、広告取引が成立しません。そこで、SSPとDSPを仲立ちしているのが、RTB(Real Time Bidding)という仕組みです。ユーザーが広告枠のあるページへアクセスする度にSSPとDSPを連携させるべく、広告リクエスト情報の分類や広告の競りをRTBが担当しています。

ウォーターフォール方式における広告取引の流れをまとめると、以下の通りです。

<ウォーターフォール方式における広告取引の流れ>
・ユーザーが広告枠のあるWebページを訪問
・Webサイトが広告表示の必要性をSSPに送信
・SSPがWebサイトやユーザー情報をデータ化
・RTBが複数のDSPに広告のリクエストを送信
・RTBがリクエストを解析して競りを行い、勝者の情報をSSPに送信
・SSPが情報を解析しWebサイトに広告タグを送信、また入札勝者のDSPに広告のリクエストを送信
・入札勝者のDSPがクリエイティブ情報をWebサイトに送信
・Webサイトでの広告表示

上記の一連の流れは0.1秒程度という早さで行われます。SSPは複数ありますが、広告取引が成立した段階で後に控えているSSPには、広告のリクエストは送信されません。

また、競りに勝った広告掲載者が支払うのは、2番目に高かった広告掲載者が提示した金額になる場合が多いのもウォーターフォールの特長。セカンドプライスオークションと呼ばれる方式で、広告掲載者にとってはより安価に広告を出せるのがメリットです。

複数候補から最高単価の広告を選べるヘッダービディングの登場

ウォーターフォール方式は、広告表示できて収益は発生するものの、媒体側に不満があったため、ヘッダービディングが登場しました。代表的な媒体側の不満は、ウォーターフォール方式だと、必ずしも最高単価広告が出せるわけではないことでしょう。SSPは複数あるものの問い合わせは順番にされるため、広告取引が成立した段階で、後に控えているSSPより高い広告案件があっても再度問い合わせされないという仕組みの課題があります。

そこで、広告案件の問い合わせを同時に行い、一番単価が高い広告を選び出せるヘッダービディングが開発されました。ヘッダービディングの広告取引の流れは、以下の通りです。

・ユーザーが広告枠のあるWebページを訪問
・ヘッダービディング専用のサーバーにリクエストが送信される
・ヘッダービディング専用サーバー内で、SSPを含めた広告候補の中から最高単価の広告が仮に選ばれる
・仮に選ばれた最高単価の広告は、広告配信事業者が保有するアドサーバー内で他の広告と競りにかけられる
・最高単価の広告が決定され、Webサイトに広告が表示される

セカンドプライスオークションが中心のウォーターフォールに対して、ヘッダービディングは一番高い掲載金額を支払うファーストプライスオークションです。つまり、高く広告枠を売りたい媒体側と安く広告を出したい広告出稿側とのバランスがとれている方式と言えます。また、ヘッダービディングの取引の流れは、ウォーターフォールよりもステップが少ないのも特徴です。

ヘッダービディビングのメリット・デメリット

メリットは「収益増」と「離脱率の低下」

ヘッダービディングのメリットは、収益増加とWebサイト離脱率の低下に期待できることだと言えます。

まず、収益増加に期待できる根拠は、先に解説した通りヘッダービディングが最高単価広告が表示できる仕組みになっていることです。また、ファーストプライスオークションであることも理由と言えるでしょう。

そして、離脱率の低下に期待できる根拠は、ウォーターフォールからヘッダービディングにすると、ページの表示が早まってユーザーに悪感情を持たれにくくなる点です。

広告の問い合わせを同時にするヘッダービディングに比べて、ウォーターフォールは処理の工程数が多く複雑なので、表示が遅くなる(レイテンシー)可能性があります。

デメリットは専門性が必要なこと

ヘッダービディングのデメリットは、どうしても専門性が必要になることだと言えます。実際、ヘッダービディング用のコードを打つ以外にも多くの作業があり、自社サイトに適したサービスも選定しなければいけません。

適切な作業ができないと、ウォーターフォール方式以上のレイテンシーが発生する恐れもあります。したがって、きちんと専門性を有した人材を用意する必要があります。

ヘッダービディングでメリットの多い広告表示を

広告枠を最高単価で売れるヘッダービディングは、Webサイトの運営側にとってメリットが大きな仕組みです。導入時に専門性が必要というデメリットこそありますが、メリットの大きさから今後もウォーターフォールから切り替える企業はますます多くなると考えられます。他社と比べて収益が低くなる要素を減らすためにも、ぜひ今回紹介した情報を活かして、導入を検討してみてください。

参考:
徹底理解!ヘッダービディングの登場の背景と仕組み-導入メディアにも取材をしました!-
【Web広告】ヘッダービディングを知ろう!図解
「 ヘッダービディング は、日本でも72%まで普及してる」:ルビコンプロジェクト CTO トム・カーショー氏
RTB(Real-Time Bidding)とは?を初心者にも分かりやすく解説します
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