「プログラマティック広告」は米国のディスプレイ広告の8割を超えると言われているほど普及しています。プログラマティック広告は、広告主、媒体、ユーザーの3者にとって有益なものになるために、さまざまな進化の過程がありました。それゆえに、プログラマティック広告に関する説明は複雑化してしまうことが多いのです。

そこでこの記事では、プログラマティック広告の登場の背景や課題について説明します。

プログラマティック広告とは

プログラマティック広告とは、インターネット広告広告枠をリアルタイムで自動的に買い付けるプロセスのことです。広告の種類ではなく、あくまでもプロセスを指すことから、自動買付を意味する「プログラマティック・バイイング」と呼ばれる場合もあります。

また、プログラマティック広告は、アドネットワークとの違いについて話題になることもあるでしょう。アドサーバーから複数の媒体に広告を一括配信する仕組みであるアドネットワークに対し、個別の広告在庫に対して自動売買が行われます。自動化により、広告主が予算などの条件設定に基づいて、瞬時に売買が実施されるのです。広告枠を決めて買い付けるのではなく効率の良さを実現しつつ、ターゲティングやデバイスフォーマットなど、理想的な広告配信が可能になります。

リアルタイムの自動売買

プログラマティック広告において行われる取引を、RTB(Real Time Bidding)と言います。広告枠の売り手側のプラットフォームであるSSP(Supply Side Platform)と、買い手側であるDSP(Demand Side Platform)がオーディエンスデータを持って売買を行うことで、広告枠に対して、ユーザーの興味関心を含んだオーディエンスデータが結びつき最適化されるのです。広告予算に関する上限などの条件を満たした上で、広告が表示される度に入札がリアルタイムで実施されます。広告枠を高く売りたい媒体と安く買いたい広告主の双方の利害を一致させるのがRTBの魅力です。

実施されるオークションの種類について

プログラマティック広告で行われるオークションであるRTBには2種類あります。OA(Open Auction)とPMP(Private Market Place)です。OAは、プログラマティック広告の中でも主要なものであり、誰でも参加できる取引形態であることが特徴です。売値と買値の折り合いがつけば取引が成立します。広告在庫の多さと単価の安さが特徴です。

このように参加の規制に捉われないOAに対して、PMPは限られた広告主と媒体だけで成立する取引です。配信先が限定されコスト高になる傾向がありますが、サイトや広告枠の指定ができるのがメリットと言えます。

プログラマティック広告登場の背景

アドネットワークの余剰在庫の存在

プログラマティック広告の誕生の背景には、アドネットワークでは消費できない広告在庫がありました。アドネットワークは、ディスプレイ広告の普及によりメディア数が大きく増加したことで取引の煩雑さを解決するために2008年頃に登場しました。アドネットワークによって、広告主がメディアごとに売買取引をする手間はなくなったものの、売れる広告枠が限られてしまい、広告の広がりは少ないものでした。つまり売れない広告枠が残ってしまうのです。そこで、RTBによりオークション形式で広告枠を販売しましたが、リアルタイムに対応できる自動売買が必要でした。これがプログラマティック広告誕生のきっかけです。

オーディエンスデータが売れる理由を作ったプログラマティック広告

プログラマティック広告の特徴であるオーディエンスデータのことにも触れましょう。検索連動型広告が売れる理由は、ユーザーのニーズを検索クエリから把握できることでした。このようなメリットをディスプレイ広告にも取り入れるため、ディスプレイ広告においてもユーザーニーズを明確にしようという動きが始まります。クッキーを利用してユーザーの興味関心をキャッチしたオーディエンスデータは、ターゲティングの精度を向上し、ディスプレイ広告の魅力を押し上げたのです。このような広告枠とユーザーを結びつけるテクノロジーは、アドネットワークでは売れない余剰在庫にまで「価値」を付加することができました。

プログラマティック広告の市場規模

電通グループの電通イージス・ネットワークが2020年1月に発表した「世界の広告費成長率予測」によると、世界の総広告費は継続的に成長し続けると見込んでいます。媒体別では、衰退する新聞や雑誌の広告に対し、デジタル広告は二桁成長という躍進を見せているのです。

参考:「世界の広告費成長率予測(2019~2021)」を発表|電通グループ

デファクトスタンダードとなっているプログラマティック広告は、デジタル広告の中でも圧倒的なポジションを確立し成長を続けています。2019年4月に米国サンフランシスコで実施されたイベント「PROGRAMMATIC I/O」 におけるAdExchanger編集部の報告によると、プログラマティック広告の市場規模は2021年まで順調に成長し、市場規模は810億ドル(8兆9100億円)を超えると予想されています。デジタル広告全体の87.5%にも該当するものです。

参考:[PROGRAMMATIC I/O イベントレポート - 直近のプログラマティック広告の動向|東洋経済プロモーション

また、テレビ広告や交通広告などの本来デジタルではない媒体でも、デジタル対応によるプログラマティック化が進んでいることにも注目したいところです。プログラマティックと言えるもののシェアの割合は確実に大きくなってきています。

プログラマティック広告の課題とこれから

メディアの品質が広告成果を偏らせる

プログラマティック広告はオーディエンスデータによるターゲティングが特徴です。ただし、成果を上げられるのは大手メディアのプレミアム枠が多いため、広告枠のあるメディアに魅力がなければ、ユーザーが広告をしっかり見ることもないでしょう。広告在庫を消化したとしても、効果がない広告枠を販売するのでは広告に価値を感じなくなってしまう恐れがあります。

ブランド価値を下げてしまう恐れがある

オーディエンスデータを充実させることで、広告枠のあるページの品質が低くても広告在庫が売れてしまうのです。ブランドイメージを損なうようなページ広告を表示してしまう恐れがあります。マイナス効果のある広告枠でも作れば売れてしまう、という仕組みは問題があるので、最近では「アドベリフィケーション」という広告主のイメージ通りに配信できているか確認できる仕組みも存在します。

今後も進むプログラマティック化

今後も、Webページで目にする広告だけではなく、デジタルサイネージやテレビ広告などプログラマティックの仕組みが導入される機会が増えるでしょう。利用される場面が増えることにより、新たな課題が増える可能性もありますが、それをヘッジするアドテクノロジーの進化に期待が募ります。

アドテクの進化をキャッチするアンテナを張る

インターネット広告の多くを占めているプログラマティック広告でも、登場までの背景や課題を細かく把握している人は多くないでしょう。しかし、深い知識を得ることで、今後さらに発達するデジタル社会において、最適なインターネット広告の知識を持って挑めるはずです。プログラマティック広告は、これからもユーザーの生活環境の様々な場面で接触する存在になります。最新の広告を使いこなせるように、アドテクノロジーには常にアンテナを張り、マーケティング知識を厚くしましょう。

参考:プログラマティック広告の基本と課題|Criteo
「プログラマティック広告」って何?|東洋経済プロモーション

プログラマティック広告に必要な「アドベリフィケーション」についても知ろう

「アドベリフィケーション」とは?Web広告の費用対効果をあげる方法を解説

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