クラウドソーシングを通じて仕事を請け負うクラウドワーカーや、Uber Eatsの配達員、オンラインヨガやフィットネス講師といった働き方が今、少しずつ増えています。「ギグワーカー」とも呼ばれる、こうしたネット経由で企業や個人からの仕事を単発で請け負う働き方は、場所や時間、組織に縛られずに暮らす働き方として、そして副業の選択肢として注目されています。

マーケティングをする上でも、注目しておきたいギグワーカーの生態や、その働き方、社会へ及ぼす影響とはいったいどんなものがあるのでしょうか。

ギグワーカーとは?

まず“ギグ(Gig)”とは、音楽用語で「ライブハウスなどで行われる短いセッションや演奏」のこと。そこから派生して生まれたのが、単発もしくは短期の仕事をするギグワーカーという言葉です。

66c19942ab4ba346fdb64ccc04cde373-2.png画像出典:「テレワーク拡大による企業・フリーランスの働き方の変化」 に関する調査を実施

クラウドソーシングなどが一般的になっている今、企業などに勤めて働く人たちも、ギグワーカーとして副業をすることも増えています。ギグワーカーとクラウドワーカー、フリーランスとの線引きは曖昧なところもありますが、ギグワークとは「単発で仕事を請け負う働き方をする人」と考えてみるといいでしょう。

66c19942ab4ba346fdb64ccc04cde373.png画像出典:「テレワーク拡大による企業・フリーランスの働き方の変化」 に関する調査を実施

現に、ギグワーカーたちが仕事を探す場の一つとなっているクラウドソーシングサイト「ランサーズ」では2020年3月時点のフリーランス登録者数が158%(2019年12月比)に。企業の問い合わせ数も176%(2019年12月比)となっています(2020年3月)。

66c19942ab4ba346fdb64ccc04cde3732.png画像出典:「テレワーク拡大による企業・フリーランスの働き方の変化」 に関する調査を実施

あくまでも一例ではありますが、ランサーズでは写真や動画の加工・編集・撮影などのカテゴリーが増加傾向に。事務やコンサルタント業務、Web制作やデザインなどの仕事も多くなっています。

参考:日本のギグワーカー100万人増 20年上半期

ギグワーカーの側と発注側のメリット

ギグワーカーが増加している背景には、新型コロナウイルスの流行による雇用環境の悪化や在宅ワークの普及などが挙げられます。ギグワークのメリットを、働く側と発注側の側面から見てみましょう。

ギグワーカー側のメリット

ギグワークをする側から考えると、働き方として次のようなメリットが考えられます。

1つ目は、隙間時間や好きな時間を使って働けること。そして、会社やオフィスに縛られず、自宅など好きなところで仕事ができることなどが考えられます。

例えば、普段は企業に勤めているけれど、スキルを生かして休日や仕事が終わった後にもう一稼ぎ、という副業ができるのも、ギグワーカーならでは。子育てや出産で仕事から離れてしまった主婦や産休中の女性が、スキル維持や収入確保のために働くことも可能です。

またやり方によっては、ギグワークを通じて、新たなビジネススキルを習得することもできるでしょう。

発注側のメリット

では、ギグワーカーたちに仕事を発注する立場から考えると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

まず第一に考えられるのが、「フレキシブルな労働力」としての魅力です。企業が人を雇用する際には、社会保険や教育・研修、オフィスの整備など賃金以外にもさまざまなコストがかかります。

ギグワーカーであれば、報酬が多少高かったとしても、賃金以外のコストをカットすることができるので、結果的にトータルコストは抑えられます。さらに、案件を単発で発注できるのも大きなメリットと言えるでしょう。

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画像出典:[ギグパートナー募集(]https://about.yahoo.co.jp/hr/gigpartner/)

ヤフーでは、2020年7月に戦略アドバイザーや事業プランアドバイザー、新規メディアサービス企画などのポジションでギグパートナーの募集を始めています。

新しい働き方として、無制限リモートワークを掲げると同時に、第1段として100名のギグパートナーを募集開始。副業先としての受け入れを始めたヤフーのような事例は、今後も増えていくことが予想されます。

参考:ギグパートナー募集
参考:ヤフー、“無制限リモートワーク”で新しい働き方へ

ギグワーカーの仕事例

では実際に、ギグワーカーにはどんな仕事があるのでしょうか。

「Uber Eats」配達員

2016年から日本でもサービスの提供が始まった「Uber Eats」。

配達パートナーの仕事は、ギグワーカーの仕事の代表例として取り上げられることが多いです。仕事内容は、サービスエリア内でスマホの専用アプリを起動し、配達リクエストを受け取りお店〜配達先へと商品を届けること。報酬は、1回の配達完了ごとに支払われます。

同様の事例として、海外ではUberなどの配車サービスも普及しています。こちらは、個人タクシーのように空き時間を使って、自家用車で利用者をピックアップ・目的地に送り届けるギグワークです。

Webデザイナー

クラウドワークス、ランサーズなど、クラウドソーシングサイトで仕事を発注・請け負えるデジタルプラットフォームを使って働く仕事もギグワークです。

例えば、ウェブサイトの制作やロゴの作成、中には新商品のキャッチコピー制作などもその一つ。最近では、動画コンテンツの普及により、動画制作や編集などの仕事も増えていています。仕事探しから制作、納品までの一連の流れをインターネット上で完結できるのもギグワークの特徴です。

コンサルタント

先ほどご紹介したヤフーのように、事業プランや事業戦略の立案など企業の経営において重要な役割を持つ仕事もギグワークとして募集され始めています。

ヤフーでは、“日本を元気にするためのインターネットサービスの企画立案”を行うギグワーカーを戦略アドバイザーとして募集。ご契約期間は2ヶ月、報酬は月5万円という条件を提示しています。

このように、単純作業だけでなく、企業のコアとなる部分にもギグワーカーたちの仕事は広がっています。

参考:戦略アドバイザー ※ギグパートナー」

ギグワーカーの労働組合も登場?

新たな働き方として注目されている一方で、労働者たちへの社会保障がないことや安定した雇用がないなどのデメリットもあるギグワーカー。世界では、ギグワーカーたちが企業に対して待遇改善や労働補償を求める声が上がっています。

日本でも「UberEats」の配達員たちによる労働組合「ウーバーイーツユニオン」が結成され、労働環境や条件の交渉なども行うことを視野に入れています。

このように、単発とはいえ、ギグワーカーとしての地位を向上させる動きは、これからも活発になる可能性が。企業として、ギグワーカーの雇用や活用を検討しているなら、労働者への補償も考えておきましょう。

参考:ウーバーイーツ配達員が労組、補償求める声強く

ギグエコノミーが世界を変えるか

副業OKの企業が大企業でも広がりつつある今。ギグワーカーは、新たな働き方の選択肢として、そして企業の新たな労働力確保の手段としてなくてはならないものになっています。

とはいえ、ギグワーカーとしてフリーランスで活動する人たちにとっては、社会保障などの面で不安定要素がまだまだ残っているのも事実。これからの経営戦略や自分自身の働き方を考えるためにも、ギグワーカーがいることで成り立つ経済(ギグエコノミー)が今後どのようになっていくのか、注視してみてはいかがでしょうか。