ニューノーマル時代における各社の事業戦略とは

ここからは、国内外の企業がニューノーマル時代において、どのような事業戦略を発表しているか、いくつかの事例を見ていきます。

日本マイクロソフト社:ニューノーマルにおいて顧客に対して果たすべき3つの役割

日本マイクロソフト社は、ニューノーマルにおいて同社が顧客に対して果たすべき役割に関して次のように発表しています。

・Remote Everything
・Automate Everywhere
・Simulate Anything
引用元:日本マイクロソフト幹部が説く「ニューノーマルにおけるDXの3つの基本要素」|ZDNeT Japan

1つ目の「Remote Everything」は、リモートで距離があることをデメリットにするのではなく、いかにメリットに、価値に変えることができるか。Microsoft社は顧客に対して、リモートを価値に変えるための支援に努めなければならない、と述べています。

また、2つ目の「Automate Everywhere」に関しては、「どのような業務も自動化を追求することによって、どのような危機や障害が起ころうとも業務を止めてはならない。業務を継続させるために、Microsoft社は全力で顧客を支援していく」としました。

そして3つ目の「Simulate Anything」については、「ニューノーマルにおいては何が正解か、誰にも分からない。今起きていることを的確に捉え、不確実な中でもさまざまなシミュレーションを行いながら、今後をできるだけ正確に見通していくことが求められる」と説明しています。

個人向けから事業用まで、ソフトウェア開発を幅広く手掛ける大手企業として、この発表内容からは、顧客の「持続可能な開発目標」「レジリエンス」を強く支援していく決意が読み取れます。

日本Microsoft社は「SDGs」「レジリエンス」を強く意識してニューノーマル時代の事業戦略を描いていると言えるでしょう。

参考:日本マイクロソフト幹部が説く「ニューノーマルにおけるDXの3つの基本要素」|ZDNeT Japan

トレンドマイクロ社:状況に合わせて変化し続ける会社

コンピューターのセキュリティソフトウェアの開発・販売で知られるトレンドマイクロ社は、2020年5月27日にオンラインで「2020年事業戦略発表会」を実施しました。

その中で、新型コロナウイルスが世界的な影響を及ぼす中で、同社は「状況に合わせて変化し続ける会社」であると発表しました。

新型コロナウイルス感染拡大が世界中で問題となる中、リモートワークを支援するインフラ、そしてワークフローのDX(デジタルトランスフォーメーション)、医療システムなどをサイバー攻撃から守る仕組みの開発など、機敏性と柔軟性が求められている、とも述べました。

自社の強み、つまりここでは「インフラをサイバー攻撃から守る仕組みの開発・提供」を改めて社会に向けてアピールをしました。

さらに、既に自社が持っている強みを社会環境に合わせて機敏に適応させ、今すぐ求められている社会問題解決に最適なソリューションとして柔軟にアップデートし、市場に投入する。そんな企業姿勢が伺えます。

トレンドマイクロ社のこの発表からも「持続可能な開発目標」「レジリエンス」というキーワードが浮かび上がってきます。

参考:トレンドマイクロのニューノーマル時代の事業戦略とは|Yahoo!ニュース

日本IBM社:ニューノーマルにおける企業の持続的成長 鍵は自立的人材の確保

日本IBM社では、ニューノーマルにおいては「世界がこれまでより速いスピードで変化し続けていく」という視点を重要視しています。

その中で、これからの企業と、そこで働くビジネスパーソンの持続的な成長に関して

会社と個人の“オトナ”な関係
引用元:ニューノーマルな世界における企業の持続的成長とは——鍵は自律的人材の確保|IBM

をキーワードに挙げています。

これは何を意味するかと言うと、ビジネスパーソン個人個人は、自分で目指すべき方向を決め、自分でキャリアを決める。そして、雇い入れる企業側は、今までのように手取り足取り指示するのではなく、従業員が理解できる期待値を示すことで自律を促す、ということです。

互いが互いを尊重し合い、自分で責任を持つ、そんな「互いに自立した」関係を維持することが、変化に強い組織につながると考える、と述べており、ビジネスパーソン個人個人が「自立」あるいは「自律」することが、企業の持続的成長の鍵だとしています。

これは、「企業が消費者や社会に製品・サービスをこれからどう提供していくか」という論点とは少し異なります。

しかし、「企業と、そこで働くビジネスパーソンの関係性をどう持続していくか」ということは、製品・サービスを持続的に市場に投入していくこと、社会環境の変化に強い組織として生き残っていくことに結びついていきます。

従来より速いスピードで変化し続ける社会環境に、どんな製品・サービスを投入できるか、という視点だけではなく、「企業と、そこで働く人の持続的な成長」という視点もまた、「SDGs」「レジリエンス」にとって重要なものだと言えます。