ビジネスを進める際、どのようなフェーズでも「フレームワーク」を利用することでさまざまなメリットが得られます。現在は「3C分析」「3P分析」「4C分析」「4P分析」「STP」「MECE」「SWOT分析」など、数え切れないほどのフレームワークが存在しており、いかに状況に応じて使い分けられるかが鍵となります。

今回は、さまざまなビジネスフレームワークの中でも、自社を取り巻く外部環境を分析するPEST分析」をご紹介します。

目次

  1. PEST(ペスト)分析とは
  2. PEST分析の重要性
  3. PEST分析の目的
  4. PEST分析の4つの項目
  5. PEST分析のやり方と流れ
  6. PEST分析の注意点
  7. PEST分析の事例
  8. PEST分析を活用し環境変化に適応できる企業へ

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PEST(ペスト)分析とは

PEST(ペスト)分析とは、経営学者のフィリップ・コトラー氏が提唱しているマーケティングにおけるビジネスフレームワークの1つです。

PEST分析では「外部環境」のうち自社で統制することのできないマクロ環境」を分析し、環境が今現在または未来にどのような影響を与えるのかを把握・予測し、自社の経営をはじめとした戦略を検討する際に使用します。

分析の際に検討する4つの項目を英単語にして頭文字をとり、「PEST」と名付けられました。4つの項目は、それぞれ以下のとおりです。

PPolitics政治EEconomy経済SSociety社会TTechnology技術

図_PEST分析の要素.png

これらの4つの観点から外部環境を分析することで、事業展開やマーケティング戦略に活用できるのです。

PEST分析の重要性

それでは、どうしてPEST分析を実施する必要があるのでしょうか?PEST分析を実施することで、近視眼的な分析に陥ってしまう状況を避けられるためです。

企業の業績や市場の動向は内部要因だけでなく、外部要因からも影響を受けます。そこで政治や経済、社会、技術などのマクロ環境を把握することで、多角的な分析が可能になるのです。

PEST分析のほか、ミクロ分析や顧客分析、VRIO分析、SWOT分析などのフレームワークを活用して、さまざまな視点から自社の状況を見極めることが重要です。

図解でわかるSWOT(スウォット)分析。考え方や使い方、分析事例を紹介【テンプレートあり】

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この記事では、数あるビジネスフレームワークの中でもSWOT(スウォット)分析の各要因の解説に加えて、分析結果をどのように戦略策定に活かしていけばよいか、について解説します。新規事業創造などの大きな事柄を検討する際はもちろん、自分の業務を見直すなど、様々な場面で使用できます。フレームワークを使った考え方を取り入れてみましょう。

PEST分析の目的

PEST分析を実施する目的は、自社にとって脅威となる要因や、追い風となる要因をいち早く予測することです。

自社がおかれている環境を把握する際は、大きく分けて下記2つの分析が必要となります。

  • 内部環境
  • 外部環境

ひとつずつ説明します。

内部環境分析

商品やサービスなどのプロダクトそのものの分析営業力の分析、コストなどの生産性に関する分析などが大きな柱となります。

内部環境はSWOT分析を用います。

▼トヨタ自動車の例

強み:生産台数が世界トップクラスの自動車メーカー
・弱み:海外販売の依存が高く、為替変動により利益の安定化が困難
・機会:原油価格の高騰や環境を配慮した動きから、電気自動車、低燃費車の需要が拡大している
・脅威:新興国市場にて、小型車・低価格車の競争が本格化している

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外部環境分析

ミクロ環境・マクロ環境の分析などが中心。

ミクロ環境とは、市場の規模や成長性、競合調査、流通面、ユーザー分析など自社でもある程度統制することができる環境を指します。

ミクロ環境分析は、3C分析を用います。

▼トヨタ自動車の例

競合他社(Competitor):メルセデスベンツ、BMWやキャデラックなど成功者の象徴やスタイリッシュで安全、高品質が特徴
・ 顧客・市場(Customer):アメリカにて自動車販売1,700万台規模。環境に配慮した商品を好む富裕層など
・自社(Company):日本ブランドの信頼と経済性の強み。高い技術と高いデザイン性など

関連記事:3C分析とは?競合や市場の分析方法や事例から学び実践してみよう!

一方マクロ環境は、政治や経済、環境など自社で統制することができない環境を指します。PEST分析が取り扱うのは、この「外部環境」のなかの「マクロ環境」です。

マクロ環境の分析は、事業の方向性やマーケティング戦略を決定する際に役立ちます。具体例に関しては、次の章にて詳しく解説します。

PEST分析の4つの項目

ここでは、PEST分析の4つの要素を詳しく確認しましょう。

P:Politics(政治)

●政治的環境や法律の面から分析する

現在の法律や税制、政権、裁判制度などを鑑みて、自社のブランディングやマーケティング今後どのような影響があるのかを見抜くことがポイントです。ここで重要になるのは、なぜ政治や法律などの面からの分析が必要になるかを認知しておくことです。

【例1】医薬品業界:改正薬事法

2009年に改正薬事法により規制が厳しくなったケースでは一部医薬品のインターネット上での販売が禁止されました。これによりインターネット上で医薬品の販売を行っていた企業は大きなダメージを受け、裁判を起こします。

結果2013年には勝訴が確定、インターネット上での医薬品の販売が許可されるようになっています。

【例2】食品業界:機能性表示食品制度

食品業界では2015年に機能性表示食品制度が解禁され、規制緩和が行われました。
これによりこれまで機能性表示をするために必要だったさまざまなフローが簡略化されて事前届出のみでの表示が可能になり、規制変更に対して迅速に対応した企業の売上は大幅に拡大しています。

このように、政治や法律の変化は市場競争の勢力図が大きく変化するタイミングとも言えます。政治や法律が変化したタイミングですぐに対応し、自社に少しでも有利に活用する・受けうる損害を少しでも軽減するためにも見逃せないポイントでしょう。

E:Economy(経済)

●経済面から環境を分析する

この分析を行うことで、日本国内または世界における経済の成長率や株価、金利、個人の消費行動などを中心に分析を行い、ビジネスチャンスを見つけたり、経済の変動により受けうる損害を最小限に抑える施策の検討を行ったりすることが可能です。

【例1】トヨタ自動車:10年にわたる経営体質改善で逆風でも最高益を達成

2020年ころから続く半導体不足やコロナ禍における外出や遠出の自粛による消費行動の落ち込み、原油価格の高騰は多くの企業にとって厳しい逆風となっています。トヨタ自動車では、10年前から商品力向上や原価改善などの体質改善に着手。2022年3月期も、世界的な半導体不足によって各地の工場は減産に追い込まれたものの、過去最高益の3兆円近い営業利益を確保しました。

トヨタ自動車の例は、長期にわたる経営体質改善努力が、経済の変動により受ける損害をはねのけた成功例とも言えます。

【例2】輸出関連の企業:為替変動のチェックと予測

輸出関連の企業や石油や小麦など国内生産量が低くほとんどを輸出に頼っているような原材料を取り扱っている企業などであれば、毎日変動する為替相場によって売上や利益も大きく変動します。
そこで現在・将来の為替水準や変動を予測することは、必要不可欠となります。

経済面の大きな変動も、自社の今後の方向性や市場の勢力図の変動などに大きな影響を与えます。経済動向を常にチェックして、自社が受けうる影響を早めに把握しておくことが重要です。

S:Society(社会)

●個人の消費行動やライフスタイルの変化などを分析する

経済面から分析を行う際も消費行動に着目しましたが、社会面からの分析では社会構造やライフスタイルそのものに着目する必要があります。

【例1】ベルメゾン:女性のライフスタイルの変化をコンセプトに反映

現在の実態と今後の意向を伺うことを目的として女性のライフスタイルに関する100項目のアンケートを行っているベルメゾン生活スタイル研究所の発表によると、2017年の女性の消費行動では「イマを楽しむ。ミライに備える。」というキーワードが軸となる生活スタイルが大きな影響を及ぼすと予測されました。

図_PEST分析-Societyの例.png

参照:
「イマを楽しむ。ミライに備える」生活スタイルへ。|生活スタイル研究所

このような個人消費行動を早めに把握することで、今後自社が打ち出している商品やサービスなどのプロダクトの方向性を見極め、売上規模の拡大を狙うことができます。

【例2】超少子高齢化現象

現在の日本は超少子高齢化現象が社会問題としてよく取り上げられます。この問題がビジネスに与える影響の1つとしては、高齢者を対象とした市場の拡大が考えられます。

すでにそのような事業を行っている場合は、これまで以上に競合が増えることに対する対策を講じる必要がありますし、これから参入を検討している場合はすでに高齢者を対象としたビジネスを展開している企業とどのように渡り合っていくかを検討する必要があります。

逆に、子供を対象としたビジネスを行っている企業は、ターゲットとする子供の絶対数が減少傾向にある中で事業を撤退するのか、さらなる事業拡大のための施策を検討するのか、といった影響が考えられます。

このように、社会全体や個人の消費行動やライフスタイル、問題点などを把握・分析することは、自社の事業の今後の方向性を決定する上でも大きな要素の1つとなります。

T:Technology(技術)

●日々進歩を遂げる技術面から分析する

技術の発達により、小さな市場の変化はもちろん社会の歴史を大きく変えることも十分にありえます。

【例1】ガラケーからスマートフォンへ

ガラパゴス携帯が主流だった携帯電話業界ではAndroid端末やiPhoneといったスマートフォンの登場により、現在ではガラパゴス携帯を目にすることもなくなってきました。これにより、携帯電話番号会社は大きな影響を受けたことはもちろんですが、スマートフォンケースやイヤホン、イヤホンジャックなど、周辺アクセサリーの販売という新規市場の拡大が起こりました。

【例2】ブルーレイからUltra HDへ

ブルーレイが最終形態と言われていた光ディスクも、現在は次世代光ディスクの「Ultra HD (ウルトラ ハード)ブルーレイ」が流通しはじめています。
このことにより、対応できる再生ディスクやテレビなどの販売チャンスが生まれつつあります。

このように、技術の発達も決して無視できない要因の1つです。特に日本は世界的に見ても技術力が非常に高いため、よりその進化に敏感になることでビジネスチャンスを獲得し、損失を最小限に抑えることが可能になります。

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PEST分析のやり方と流れ

それでは、具体的にPEST分析はどのように実施すればいいのでしょうか?

1. 情報の分類

まずは、自社の事業に影響しうる情報を収集し、それらを4つのカテゴリーに分類していきましょう。

PEST分析の基礎である政治経済社会技術に分けることで、情報が整理されるので分析を実施しやすくなります。

なお、情報を収集する際は政府が公開している統計データやマーケティング会社の調査レポート、新聞、業界団体の情報、専門誌などを活用しましょう。複数の媒体を使用することで信頼性の高い情報を見極めることができます。

2. 事実と解釈に区別

続いて、4つのカテゴリーに分類した情報を「事実解釈に区別していきましょう。

基本的にはPEST分析は事実に基づいて実施されます。個人によって受け取り方が変わる解釈を分析対象として採用してしまうと分析結果が主観的、および曖昧なものになってしまうためです。

解釈と判断した情報は参考程度にとどめて、事実をベースに分析を行っていきましょう。

3. 機会と脅威に区別

事実に分類された情報を続いては「機会脅威に区別していきます。

ここで言う機会とは、事業を展開するのに有利な自社にとってのビジネスチャンスのことです。一方、脅威は企業の業績などに影響を与えうるリスクを指します。

なお、業界にとっての機会が自社の脅威となるなど、視点によっては変動する可能性があるので「自社にとってはどうなるかを検討することが大切です。

4. 時間軸の整理

最後に時間軸を整理しておくと事業戦略やマーケティング戦略に役立てやすいでしょう。

先ほど分類した機会と脅威が短期的なものか、長期的なものかを判断します。どれくらいの期間で自社に影響がおよぼされるのかも整理することで、どのような順番で対処していくべきかを見極めることができます。

時間軸を気にせずにアクションを起こしてしまうと、別の取り組みを実施している間に機会を逃してしまったり、脅威にさらされてしまったりする可能性があります。

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PEST分析の注意点

PEST分析を効率的に実施するために、ここで紹介する注意点を意識することが大切です。

目的を明確にする

分析を始める前にPEST分析を実施する目的を明確にすることをおすすめします。

企業によっては膨大な情報を扱うことになるので、情報を収集したり、整理したりするだけでも労力を要します。作業を繰り返していると単純作業化してしまい、事業戦略やマーケティング戦略に役立てるという目的を忘れてしまうことがあるのです。

そこで目的を明確に設定しておけば、このような事態に陥るのを防ぎ、分析後のアクションを考えながら効率的に分析を実施できます。

内部の環境分析と組み合わせる

PEST分析を実施する場合、内部の環境分析と組み合わせることが重要です。

PEST分析だけでは十分な分析とはいえません。あくまでPEST分析はビジネスを取り巻く外部環境を分析するもので、企業内部の状況を踏まえた分析を行えないためです。

例えば、SWOT分析は強み・弱みの内部環境と、機会・脅威の外部環境を組み合わせたフレームワークです。内部環境と外部環境のプラスの側面とマイナスの側面を把握することができます。

このようなフレームワークを組み合わせて分析を進めましょう。SWOT分析については以下の記事で紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

図解でわかるSWOT(スウォット)分析。考え方や使い方、分析事例を紹介【テンプレートあり】

図解でわかるSWOT(スウォット)分析。考え方や使い方、分析事例を紹介【テンプレートあり】

この記事では、数あるビジネスフレームワークの中でもSWOT(スウォット)分析の各要因の解説に加えて、分析結果をどのように戦略策定に活かしていけばよいか、について解説します。新規事業創造などの大きな事柄を検討する際はもちろん、自分の業務を見直すなど、様々な場面で使用できます。フレームワークを使った考え方を取り入れてみましょう。

PEST分析の事例

ここでは、PEST分析が実際にどのように活用されているのか、その事例を確認していきましょう。

携帯電話会社

例えば、携帯電話会社においてはPEST分析はどのように利用されるのでしょうか?

P: 大手通信キャリアの独占状態、携帯電話料金の値下げの要請
E: 格安スマホの登場
S: リモートワーク・ステイホームの増加
T: 5G技術、サブスクリプションビジネスの拡大

ステイホームする人が増えたことで、携帯電話でオンラインコンテンツを楽しみたいというユーザーのニーズが高まりました。

動画配信サービスやコミック専用のアプリ、音楽配信などのサブスクリプションビジネスが拡大したことを受けて、最新技術を活用しながらコンテンツを楽しめる環境を整えることが求められています。

化粧品会社

コロナ禍において化粧品会社がPEST分析を行う場合、検討すべき項目は以下のものが挙げられます。

P: 緊急事態宣言、リモートワーク推奨
E: 購買意欲の低下、外国人の購入者が減少
S: メイクをする機会が減少、マスクにメイクが付着するのを気にする人が多い
T: ECサービスの拡大、SNSユーザーの増加

これらの事実を踏まえると、購買意欲が低下したユーザーに効率的にアプローチするためのマーケティングを実施し、ユーザーの悩みを解決するような製品を考案する必要があることがわかります。

図_PEST分析の記入例.png

PEST分析を活用し環境変化に適応できる企業へ

市場の変化を敏感にとらえるなら、PEST分析は欠かせません。分析を行う際は、下記3つを最低限意識するようにしましょう。

  • 徹底した情報収集と証拠の収集を行うこと
  • PESTの各要因から考えられる社会または個人の潜在的なニーズを見抜くこと
  • 各要因の変化を細分化して自社にとってのチャンスなのか危機なのかを明確にすること

PESTの各要因はマクロ環境であるため、自社のみの企業努力で変えることは難しいでしょう。しかし、PESTの各要因は自社のブランディングやマーケティングなどの戦略を検討する際の大前提となる部分に大きな影響を与えます。

SWOT分析などの他のフレームワークと組み合わせながら、活用してみてください。

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