マーケティング戦略では、目的を達成するための指標効率的な施策を導けるかが問われます。そうした場合に有効なのが、マーケティングフレームです。

マーケティングフレームワークは、マーケティングに効果的なアイデアや進め方を視覚的に表したものです。用いることで複雑な要素の関係性や構造が分かりやすくなりますが、多くの種類があり、さらにマーケティングフレームワークの使用する順番を間違えてしまうと、戦略構築にムダを生み、効率的に進めることができなくなる恐れがあるため種類と順番を理解することが重要です。

この記事では、マーケティングフレームワークの種類や使用する順番など、運用方法について解説します。

目次

  1. マーケティングフレームワークの種類と活用方法
  2. 環境分析フレームワーク
  3. 戦略構築分析フレームワーク
  4. マーケティング施策分析フレームワーク
  5. マーケティングフレームワークは自社にあったものを順序に沿って使おう

▼各フレームワークのテンプレートはこちら

【記入例付き】マーケティングフレームワーク テンプレート集

【記入例付き】マーケティングフレームワーク テンプレート集

各フレームワークごとに、BtoBの記入例を3種類ずつ添付しました。

マーケティングフレームワークの種類と活用方法

マーケティングフレームは、マーケティング業務の様々なシーンで効果的に使用できるよう、多くの種類があります。どんな場面で使用するのか、主なものをまとめました。

使用場面 フレームワーク
業界外の動向や状態を知る PEST分析
業界内の競合状況を知る 5フォース分析
強み・弱みを整理する SWOT分析
業界内での自社の立ち位置を理解する 3C分析
自社の適切な事業戦略を練る STP分析
顧客企業に購買・契約・行動してもらうためのアプローチを考える AIDMAAISAS
新しい商品・サービスを考える 4P分析、4C分析(マーケティングミックス)

マーケティングフレームワークの使用順序

マーケティングフレームを活用する際には、分析する順番を意識すると整理しやすくなります。次のような順番で分析を進めてみましょう。

1.環境分析

企業ではコントーロールできない外部環境と、社内でコントロールできる内部環境の分析をもとに、強みと弱くを整理する。

  • マクロ環境分析:PEST分析
  • ミクロ環境分析 :5フォース分析
  • 外部環境と内部環境の分析:SWOT分析
  • 自社、顧客、競合の機会と脅威の分析:3C分析

2.戦略構築分析

環境分析をもとに、自社の適切な事業戦略を練る。

  • STP分析

3.マーケティング施策構築(マーケティングミックス)

これまでの分析に基づき効果的な施策へ落とし込む。

  • 4P分析
  • 4C分析

具体的な分析順序と使用フレームワーク

①自社を取り巻く外部環境の分析を行う
外部環境は、社会や経済動向などの「マクロ環境」と、市場規模や顧客動向などの「ミクロ環境」に分けられます。マクロ環境を分析する場合は「PEST分析」を、ミクロ環境を分析する場合は「5フォース分析」フレームを用いてそれぞれ分析します。

②外部環境分析を踏まえて、SWOT分析3C分析で整理する
「外部環境」の分析結果と、自社の経営資源や組織能力といった「内部環境」の分析を「SWOT分析」に落とし込み、内容をさらに深く分析します。SWOT分析により、自社と自社をとりまく環境の強み、弱みが整理できます。

SWOT分析と似た分析に「3C分析」があります。3C分析では、自社・顧客・競合の3つの視点で環境要因を整理します。自社の分析はSWOT分析と同様ですが、顧客と競合にとっての機会と脅威も分析する点が、SWOT分析と異なります。

③戦略を立案するための分析を行う
自社の強みと弱みが明確になったら、次に戦略構築のための立案を起こします。立案には「STP分析」を使用します。

④適したマーケティング施策を導き出す
戦略立案が完成したら、マーケティング施策を導き出します。マーケティング施策を練るためには、戦略立案を「マーケティングミックス」に落とし込み、「4P分析」あるいは「4C分析」によって自社商品・サービスにはどういう施策が適しているか分析します。

環境分析フレームワーク

企業に最も影響を与える環境要因を分析します。

PEST分析

PEST分析は「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」の4点から自社を取り巻く外的要因を分析し、リスクを導き出します。PEST分析で、外的要因によって影響のあるリスクを事前に把握することができます。

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PEST分析のテンプレート

PEST分析のテンプレート

PEST分析に使えるテンプレートです。

関連記事:PEST(ペスト)分析とは?やり方やコツ、分析に役立つフレームワークを解説

5フォース分析

5フォース分析は「新規参入者の脅威」「サプライヤーの交渉力」「買い手の交渉力」「代替品の脅威」「既存企業同士の競争」という5つの要因で業界全体の魅力度を図ることができます。自社に与える影響や、収益につながる攻略方法、業界の状況といった観点で分析します。

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5フォース分析のテンプレート

5フォース分析のテンプレート

5フォース分析のテンプレートです。資料などに活用ください。パワーポイント形式です。

関連記事:5フォース分析とは?やり方や注意点、大手企業の事例を解説

SWOT分析

SWOT分析は4つの視点である「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」によって、自社の外的環境と内部環境をプラスとマイナスの要因で整理します。

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SWOT分析のテンプレート

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SWOT分析のテンプレートです。パワーポイント形式です。

関連記事:図解でわかるSWOT(スウォット)分析。考え方や使い方、分析事例を紹介

3C分析

3C分析とは、「Customer(市場)」「Company(自社)」「Competitor(競合他社)」の3つの情報から、市場における自社の立ち位置を明確にできるフレームワークです。分析結果により自社がどんな価値や魅力を訴求すべきか判断できるため、具体的な行動計画を立てやすくなります。

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3C分析のテンプレート

3C分析のテンプレート

3C分析のテンプレートです。資料などに活用ください。パワーポイント形式です。

関連記事:3C分析とは?競合や市場の分析方法や事例から学び実践してみよう!

戦略構築分析フレームワーク

戦略構築のための分析を行います。自社として具体的に何を分析したいのかを明確にし、業種等に応じて、以下のようなフレームワークを選択します。

STP分析

STP分析は、市場における自社の優位なポジションを探すためのフレームワークです。市場を細分化する「Segmentaion(セグメンテーション)」、狙う市場を決める「Targeting(ターゲティング)」、そして自社の立ち位置を明確にする「Positioning(ポジショニング)」の3点から分析します。

▼STP分析について詳しく知りたい方はこちら

マーケターなら必須の知識!STP分析とは?

マーケターなら必須の知識!STP分析とは?

本書は、STP分析の基礎から具体的な施策に落としこむところまで例を用いて解説していますので、ぜひご覧ください。

関連記事:STP分析とは?マーケティング初心者が押さえたいフレームワーク

その他、戦略分析では次のような分析手法を活用します。

項目 内容
クラスター分析 混在したデータを類型性で集団(クラスター)に分けます。「階層クラスター分析」と「非階層クラスター分析」の2手法があり、大量のデータから似たもの同士のグループを見つけることが可能です。
RFM分析 直近の購入「Recency(リーセンシー)」、購入の頻度「Frequency(フリークエンシー)」、使っている金額「Monetary(マネタリー)」の3つの指標で顧客データを分析、ランク付けします。

関連記事:
マーケティングに欠かせないクラスター分析とは?やり方や事例も紹介!
RFM分析とは?分析の進め方やWebマーケティングの施策例を解説

●顧客の理解を深めるためのフレームワーク

顧客施策で用いられるフレームワークを説明します。これらのフレームワークを使用することにより、顧客行動や心理状況をより理解することができます。

項目 内容
カスタマージャーニー 顧客の購買行動のパターンを時系列に可視化したものです。最初に商品・サービスを認知して検討し、購入決定するまでをひとつの線でとらえます。「カスタマージャーニーマップ(CJM)」というシートに一連の動きをまとめます。
AIDMA(アイドマ) 消費者の購買心理を「Attention(認知)」「Interest(興味)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」という5プロセスに落とし込むフレームワークです。
AISAS(アイサス) インターネット登場以降の顧客の購買心理パターンを可視化したフレームワークです。「Attention(注意)」「Interest(関心)」「Search(検索)」「Action(行動、購入)」「Share(共有、商品評価をネットでシェア」の5プロセスで顧客心理を説明することができます。

関連記事:
カスタマージャーニーマップとは?作り方や考え方、活用するメリットを解説!
AIDMA(アイドマ)とは?AISAS(アイサス)の違いを解説

●自社戦略フレームワーク

項目 内容
コストリーダーシップ 業界で最も低コストの事業運営で、優位に立つ戦略を導くことが可能です。コストリーダーになると低コストで商品・サービスの提供ができ、利益が大きくなるため経営が安定します。
差別化 他社にない独自の価値で、市場にポジションを築くことができます。製品、原材料、特許、技術力、人材、ブランディング等、他社とは違う魅力を提供し、ブランディングを行います。
市場特化集中 「低コスト集中戦略」「差別化集中戦略」という2種の集中戦略で、特定の市場で事業展開をする戦略です。

●製品戦略フレームワーク

項目 内容
ホールプロダクト 企業が初期に提供する製品・サービスの価値と、顧客の期待にはギャップがあるため、そのギャップを埋めていく必要があるという考え方です。最初に市場に出す「コアプロダクト」、初期の顧客のイメージしていた「期待プロダクト」、自社製品を拡張して顧客のニーズに応えた「拡張プロダクト」、そして満足のいく顧客体験ができる「理想プロダクト」の4層でプロダクトを説明します。
プロダクトライフサイクル 製品・サービスを販売してから市場撤退するまでの期間を、導入期、成長期 、成熟期 、衰退期の4つに分けて悦明するフレームワークです。

●事業戦略フレームワーク

項目 内容
アンゾフマトリクス(成長マトリクス、事業拡大マトリクス) 事業の成長戦略を次の4種に分けるフレームワークです。
・新規製品×新規市場=多角化戦略
・新規製品×既存市場=新製品開発戦略
・既存製品×新規市場=新規市開拓戦略
・既存製品×既存市場=市場浸透化戦略
プロダクトポートフォリオマネジメント(BCGマトリクス) 「相対的市場シェア」と「市場成長性」の2指標で、事業を次の4面に分類します。
・花形(STAR):市場が伸びており、製品・サービスのシェアも高い
・金のなる木(cash cow):市場の成熟期を表す。成長率は低いが収益が上げられる
・問題児:市場は大きく伸びているのに、シェアは低い
・負け犬:市場の成長率も低く、シェアが低い状態
GEビジネススクリーン 「業界の魅力」と「ビジネスユニットの競争力」を『高、中、小』の指標で、3×3の9面に事業を分類します。「9ボックスマトリックス」とも呼ばれます。

マーケティング施策分析フレームワーク

4P分析

具体的な施策へ落とし込む「マーケティングミックス」には代表格の「4P」のほか、「5P」「6P」など様々な種類があります。「4P」では「Product(製品)」「Price(価格)」「Placement(場所)」「Promotion(プロモーション)」の4つの視点から分析します。製品・サービスを市場へ送り出すにあたって、製品の性能や価格、宣伝方法などをどのように組み合わせれば効果的な戦略になるのかを考えるマーケティング戦略フレームワークです。

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マーケティングの4P分析のテンプレート

マーケティングの4P分析のテンプレート

関連記事:4P分析とは?やり方やメリット、注意点などを具体例を交えて解説

4C分析

さらに、「Customer Value(顧客価値)」「Cost(顧客のコスト)」「Convenience(顧客にとっての利便性)」「Communication(顧客とのコミュニケーション)」である「4C」で、「4P」を顧客目線で分析する「マーケティングミックス4C」もあります。

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4C分析のテンプレート

4C分析のテンプレート

関連記事:4C分析とは?やり方や活用事例、4P分析・SWOT分析を併用するコツを解説

マーケティングフレームワークは自社にあったものを順序に沿って使おう

マーケティングフレームワークを活用する場合に重要なのは、分析の目的に合ったものを、順序に沿って用いることです。マクロからミクロ、そしてSWOT分析に落とし込むなど、適した使用であれば、フレームワークは使いやすいかどうかで選んで問題ないでしょう。また、基本的にひとつのフレームワークですべてを分析できないことが多いため、自社に合ったものを組み合わせて使うことがコツです。

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【記入例付き】マーケティングフレームワーク テンプレート集

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各フレームワークごとに、BtoBの記入例を3種類ずつ添付しました。