世界には驚くほどの急成長を遂げている企業があり、そのマーケティング戦略にはマーケターとして学ぶべきエッセンスがたくさん含まれています。今回ご紹介するのは中国の拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)というECサービスです。激戦の中国EC業界の中で2019年にアクティブユーザー数2位の座を獲得したこの企業は、斬新なマーケティングによって急成長を実現しました。

この記事をご覧いただければ、拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)の成長戦略を学習できます。競合企業との差別化や、バリューの作り方など、世界には様々なマーケティングがあると感じていただけるでしょう。ぜひ、ご参考にしてください。

拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)とは

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拼多多

拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)とは、共同購入システムができる中国のECサービスです。Googleのエンジニアだった黄峥氏が2015年9月に上海で立ち上げました。スタートから5年ほどですが、2018年にはPDDという名称でNASDAQ証券取引所に上場しています。直近である2020年第2四半期決算では、売上高が122億元(約1870億円)という前年同期の約67%増加にあたる結果です。月間アクティブユーザー数は、6億8320万人となり、前年同時期より41%も増加しています。アクティブユーザー数では、第一位のアリババに次いでいます。アリババは1999年創業であり、同社が天猫(Tmall)をスタートしたのが2008年と考えると、拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)がいかに短期間で大きく成長を遂げている理解しやすいでしょう。

参考:【拼多多】Q2でアリババに迫る利用者数、今後の課題は?|チャイトピ!

拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)の特徴

さて、拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)にはどのような特徴があるのでしょうか。急成長を遂げた巧みな戦略とも言える3つのポイントをご紹介します。

圧倒的な安さを実現

拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)の最大の魅力は、共同購入によって商品を安く購入できることです。ポイントは、この「安さ」が圧倒的であることです。制限時間内に回りを呼びかけて共同購入者を募り、安く商品を手に入れるという仕組みは、まさにゲームのようです。これは消費者側も必死になり、共同購入の実現に励む面白い要素とも言えるでしょう。グルーポンと言えば、イメージしやすい人が多いのではないでしょうか。

しかし、単にみんなで買えば安くなるというだけでは、ここまで多くのユーザーに利用されません。爆発的に多くのユーザーを巻き込んだバイラルマーケティングの手法は次でご紹介します。

Wechatとの連携を活用

拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)は、中国最大のメッセンジャーアプリであるWechat(微信、ウィーチャット)と連携することで、共同購入の仲間を募る仕組みをつくりました。この施策は、Wechatの月間アクティブユーザー数は約11億人です。この莫大なユーザーへのアプローチを実現しました。Wechatは日本でいうところのLINEとイメージしてもらえるとよいでしょう。テンセント社が運営しているアプリであり、2011年にサービスをスタートしてから、中国の人々の生活に根付いた重要なアプリとして存在しています。Wechatの機能の中に、ミニプログラムというダウンロード不要でWechatの中だけで動作するアプリがあるのです。このアプリがWechatの活用の幅を広げています。

拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)は2017年にWechatのミニプログラムを公開し、驚異的に成長を加速しました。自分の友達になっている人に情報を拡散すると割引が受けられるという仕組みです。このSNSを最大限に活用した戦略は低価格であることに意欲的なユーザーに強くヒットしたのです。どんどん情報が拡散されれば、それだけ販売機会が増えるのは必然とも言えるでしょう。

さて、この連携の背景には覚えておくべきことがあります。Wechatの運用元であるテンセントは、拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)に投資しているのです。Wechatはアリババグループなどの競合サイトへのリンクをブロックするという最強のパートナーシップを実現しています。これは拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)にとって、大きな競争力の強化になるでしょう。

参考:ユーザー数が中国2位のECアプリ「拼多多」、その知られざる大躍進の秘密|WIRED

地方をターゲットし差別化

大都市をターゲットにしてきたアリババグループや京東物流に対して、拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)は、地方在住者を狙った戦略をとりました。エリアが異なると違ってくるのが住んでいる人の属性です。都会と地方では所得差が大きくなりますので通販においても金銭感覚に差があります。拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)の特徴である共同購入による圧倒的な低価格の実現は、地方在住のユーザーにとって大変魅力的なものになったのです。上海や北京などの都会は人口こそ多いものの、高級志向で安さには強くこだわらない人が多い傾向があります。これに対し、安さを重視する3級都市、4級都市では、拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)のユーザーはどんどん増えて、事業の成長に大きく貢献しました。この戦略は、ユーザーの所得に注目して3級都市、4級都市というエリアでセグメントしたところが重要です。地方都市でもすべてを合わせた人口はとても大きいので、アリババグループや京東物流に対抗できるユーザー数を揃えるために成功した戦略と言えるでしょう。

成功してばかりではない

見事な成長戦略を解説してきましたが、さすがの拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)も問題がないわけではありません。課題についてチェックしましょう。

商品に関するクレームが多い

取り扱っている商品に偽物が多いという問題がありました。実際に買い物をしたユーザーからのクレーム数は2016年だけで227件もあったようです。少しだけ商品名を変えたような偽物をストアで見かけると、いくら安くてもユーザーから反感を買ってしまうのは避けられません。類似した商品だとししても、品質よりコストパフォーマンスを求めるユーザーなら認められやすいこともあります。地方を狙った戦略はこの点で成功しているのです。

参考: 中国の新興ECサイト「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」とは。メリットから実際の販売ポイントまで解説|インバウンドNOW

競合するサービスも登場している

競合企業が拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)の成長を黙ってみているわけではありません。淘宝(タオバオ)も共同購入機能や低価格商品を扱うアプリをリリースして、拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)の勢いに対抗しています。中国もECサービスは激戦であり、この先の展開を容易に想像できるものではありません。

参考:共同購入でもっと安く。中国ECサイト拼多多(ピンドゥオドゥオ)から見る中国の消費傾向|ZOZO FASION CHECK NEWS

ターゲットの絞り方と競合との差別化に長けていた

拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)が行ったマーケティングは、自国のユーザーニーズをしっかり捉えつつ、競合との差別化を明確にしています。この視点は、国に関わらずマーケターには必要な要素と言えるでしょう。そして、共同購入を盛り上げるためにWechatを利用して、多くのユーザーと販売量を獲得する仕組みも印象的です。自社にとって適切なパートナーからの支援を得ることにも成功しており、短期間に大きな事業成長を遂げていることに納得します。このように海外企業のマーケティングは、日本企業ではあまり行わないような大胆な発想のもと展開しているケースがあるのです。視野を広げて学びの機会を広げることがマーケターには大切でしょう。

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