実は五輪対策だった

実はこの「ワーケーション」が盛んに提唱されるようになった背景には、行政サイドの2020東京五輪対策だった、という側面もあります。「五輪期間における首都圏人口の分散策」という狙いがあり、2019年11月に、複数の自治体が「ワーケーション・アライアンス・ジャパン」を設立。ワーケーションに関する情報発信などを始めました。

そこには、「首都圏人口の分散策」に付随し、行政や地方自治体によるさまざまな思惑も隠されていました。

首都圏のビジネスパーソンの間でワーケーション参加が普及すれば、従来以上に、地方の観光地に長期滞在する人口増につながります。

宿泊施設にとっては、客室を埋めることが難しかった平日やオフシーズンの稼働率向上につながり、さらにはショッピングなど、観光以外の事業者たちにも恩恵がもたらされます。また、地方が抱える「空き家」や「空きオフィス」の問題解決への期待もありました。

早期から「ワーケーション」の普及に期待を抱いてきたのは、個々のビジネスパーソンや企業側というよりは、むしろ、行政サイドであった、という背景も浮かび上がってくるのです。

参考:官邸発「ワーケーション」は働き方を変えるのか|東洋経済オンライン

ワーケーションのデメリット

[図1]
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出典:【ワーケーション】約4割の方が、今後普及していくと「思う」|日本トレンドリサーチ

[図1]は、「ワーケーションは普及していくと思うか?」という問いに対する回答を示したものです。

これは、「日本トレンドリサーチ」による調査結果で、2020年7月31日~8月4日の期間に男女総計1200人から回答を得たものです。

グラフを見ると、「普及していくとは思わない」と回答した人が60.5%と過半数に上っており、普及にはいくつかの課題や、デメリットを感じている人のほうが多いことが伺えます。

それでは、一般のビジネスパーソンや企業サイドが感じている「デメリット」「課題」とは何なのでしょうか?

①導入・運用コストがかかる

リモートで円滑に仕事を行うには有線インターネット、あるいはWi-Fiが使える環境を整えることが大前提です。それに加えて、ビデオ会議やビジネスチャットなどソフトウェア、パソコンなどのハードウェアを用意する必要もあります。

いずれにせよ、導入・運用にはある程度のコストがかかります。

これらの社内共通システムやハードウェアの整備は、日頃からテレワーク実施が進んでいる企業にとってはそれほど障壁にはなりませんが、まずはテレワーク環境から整えなければならない、という企業にとっては決して小さくはない負担となります。

加えて、ワーケーションを実施する場合の旅費交通費は会社が負担するのか、個人が負担するのかといった点も、改めて検討・議論が必要でしょう。

②情報セキュリティ面での懸念

業務上、取り扱っている情報のセキュリティへの懸念も生じます。

「個人情報を扱う場面ではどのように運用するのか?」「個人個人に付与した端末をどのように管理するのか?」「パソコンやタブレット端末、スマホの盗難・紛失が起きてしまったら?」といった問題への対策を予め講じておく必要があります。

③社員の稼働時間の管理をどうするか

これはリモートワーク全般に言えることですが、遠隔地に居て姿が見えない状況で仕事を進める際、社員の稼働時間把握・管理をどうするか?という問題が生じます。

この課題解決には、「テレワーク用の勤怠管理ツールを使う」「バーチャルオフィスシステムを取り入れる」などいくつかの方法が考えられます。

企業側にとって、「稼働時間管理」の対策を事前に講じておく必要があります。