企業は事業活動を行う中で膨大なデジタルデータに接し、それらのデータは社内のデータベースや各種システムに保管されています。保管されたデータはあまりにも量が多く、人手では活用しきれません。

そのため、データを効率的に処理して分析を行い、企業の意思決定に役立つ統合データベース=データウェアハウスにロードするには、専用のETLツールが必要になってきます。

本記事では、ETLツールとは具体的にどのような機能を持つのか、企業が導入することでどのようなメリットがあるのか、そして自社に合ったETLツールを選ぶためのポイントは何か、という点について詳しく解説します。

ETLツールとは?どのような機能を持つのか

近年、IT、IoT技術が急速に進歩する中、企業が扱うデジタルデータの量は劇的に増えました。それらデータは複数の異なるシステムに蓄積され、しかも量が多いために、そのままの状態ではうまく活用できません。

何の対策もしなければ、大半のデータはサイロ化され、取り出されて活用されることもなく、人目につかないまま放置されることになるでしょう。

しかしETLツールを利用すれば、それらデータを適切にBI(ビジネスインテリジェンス)へと変換し、意思決定に活用できます。利用には専門知識が不要で、簡単に操作できる点も大きな特徴です。

デジタルデータの抽出、加工、格納を行う

ETLツールの機能としては、大きく分けてデータの*抽出(Extract)、加工(Transform)、Load(格納)*の3つがあります。

データの抽出とは、複数のデータソースから情報を収集、集約することです。一般的に、企業内のデータはMicrosoft SQL ServerやIBM Db2、Oracle Databaseといった専用の管理システム等に保管されています。また日常業務の中で触れるデータは、ExcelやCSVなど多様な形式で蓄積されているのが通例です。

データの内容を確かめ、目的に応じて取り出すという作業を人間が行う場合、高度な専門知識と長時間に及ぶ作業が必要になってきます。それだけで膨大なコストがかかってしまうわけです。

しかしETLツールを使うことで、異なるデータベース管理システムに保管されているデータや多様な形式のデータを効率よく抽出できます。データ内容の識別や妥当性の検証、除外などの処理も行ってくれるので、人間が行う場合よりも時間と手間を大幅に削減できるのです。

続いてデータの加工機能とは、抽出して集めたデータを、レポートとして活用できるようにビジネスルールに合わせて変換することです。

データの加工を行う際は、使うデータの特定とデータのフォーマット方法などのルールを決める標準化、重複・冗長データを除外する重複排除、使用できないデータやデータの異常をチェックする検証、データをカテゴリー化するソート化などが行われます。

他にもユーザーがルールを定義・設定し、その内容に沿った加工も可能です。

最後のデータの格納機能とは、抽出され加工されたデータをデータウェアハウスにロードすることを指します。加工されたデータがデータウェアハウスにロードされることで、業務横断的なデータ分析が可能になり、経営者・管理者が意思決定を行う際の情報源として活用できます。

ETLツールが必要となる理由

企業に蓄積されているデジタルデータが少量で、経営者や管理者が事業を行う上で必要な情報を簡単に取り出せるなら、ETLツールは必要ないでしょう。

しかし、企業内で使用するシステムが複数になってデータ量が膨大となり、データの抽出作業が複雑化してしまうとETLツールが必要となってきます。

また、データを取り出す作業を行っても、統合データベースにまとめるためにデータを整形しなければなりません。欠損したデータの補完や、各システムのフォーマットを同じフォーマットに整理するなど、データを整形する作業には多くの工程・時間がかかります。

データの整形作業を行うための人員を割けず、必要な作業を素早く行いたい場合はETLツールが有用です。

無料で手に入るOSSと有料版がある

ELTには*OSS(オープンソースソフトウェア)*として無料で手に入るものと有料版の2種類があります。

無料版でもデータの抽出、加工、格納という基本的な3機能は利用できるので、必要最低限の機能のみ期待する場合は無料のOSS版でも十分でしょう。

しかし、使い方をきちんと把握したい場合や、トラブルが発生したときにサポートを受けたいという場合は有料版が向いています。

また、有料版ではテンプレートで各種機能を利用できるなど、使い勝手のよいサービスが付属していることが多いです。さらに、利用に際して電話で相談対応を行っているケースもあります。

使いやすく、何かあったときでもすぐに手助けをしてくれることから、有料版を選ぶことが企業にとって合理的といえるでしょう。

ETLツールを導入するメリット

データの抽出、加工、格納という3機能を持つETLツールは、企業に対してどのようなメリットをもたらすのでしょうか。ここでは、データの統合を簡単に行えること、専門性の高い人材が不要となること、人為的ミスを減らし人材活用できること、の3点について解説します。

データ統合を効率的に行える

ETLが行うデータの抽出、加工、格納という作業は、実際のところ人間でも行えます。しかし、例えばデータを抽出する場合だとシステムやデータベースごとに手順は違っているため、それぞれ専門知識が必要です。

また、情報が蓄積されているシステムに仕様変更が発生した場合は、抽出するためのプログラムも改定しないと対応できません。そのうえ、抽出作業だけのために使うツールのメンテナンス作業も別途行う必要があります。

データの加工、格納においても同様で、人間の手で行うと時間とコストが多くかかり、効率性という点ではETLツールの方が優れています

専門性の高い人材がなくてもデータ統合ができる

さらにETLツールを使わない場合、データウェアハウスに必要なデータをまとめるには専門性の高い人員の配置が必要です。人件費はその分かかり、特に中小企業などの場合は財務資源が限られているので大きなコスト負担に感じる場合もあります。

一方、ETLツールは画像を使った直感的な操作もでき、使用に際して高度な専門知識を必要としません。人材確保や高額な人件費に頭を悩ます必要がない点もETLツールの大きなメリットといえます。

ミスを減らし、人的資源を活用できる

人間の手による作業には人為的ミスがつきものであり、専門能力ある人材であっても起こり得ます。もし作業の途中でミスが発生し、それが原因でデータの品質が落ちてしまうと、それ以降の工程で品質を回復させることは難しいです。

しかしETLツールを導入すれば、すべて自動で作業を行ってくれるので、人為的なミスが生じる確率が大きく減少し、データの品質低下を防げます

ETLツールを比較して選ぶ時のポイント

現在、ETLツール市場には複数の企業・製品が参入しており、自社にツールを導入する際はその中から選択する必要があります。以下では、実際にETLツールを比較して選ぶ際のポイントについてご紹介しましょう。

自社のデータベースの形式に適合しているか

ETLツールによって対応可能なデータベース・データ形式が違います。製品を選ぶ際は、自社で利用しているものに合っているかどうかをチェックしましょう。

ETLツールを導入する目的は、自社内に蓄積されたデータを企業経営の場で効率的に活用することです。

想定していた仕様とは異なるものを導入すると、ツール側に合わせるために別途作業が発生し、導入のメリットを活かしきれないため注意しましょう。

技術的なサポートをどのくらい受けられるか

技術的な支援機能やサポートがどのくらいあるのか、という点も注目すべきポイントです。

例えば、ETLツールの中には、チームで行う開発プロジェクトの管理支援機能を備えた製品があります。データの加工を行う際に指定した定義をマニュアルとして残し、開発を進めるときの確認や引継ぎを行うときの情報共有を効率化してくれるのです。

また、ワークフローの実行状況を常に監視し、何か問題があればメールなどで通知してくれるというサポート機能を提供している製品もあります。この製品の場合、作業中の状態・ログをすべて保存しているので、問題が起こった際の原因の特定と復旧作業を迅速に行うことが可能です。

ETLツールであれば、抽出・加工・格納という3つの機能は基本的に持ち合わせています。しかし、それ以上のプラスアルファの機能やサポートの内容についても確認し、自社のニーズに合った製品を選択しましょう。

専門知識をどのくらい求められるか

ETLツールの中には、データの抽出もしくは加工を行う際に一定のIT知識が求められるものもあります。例えば、データベース内のデータを扱うにはSQLというプログラミング言語の知識が必要です。

さらに製品の中には、コーディングに関する知識がないと使用できないツールもあります。

その一方で、視覚的・直感的な操作で簡単に扱えるETLツールも多く、その場合は専門的な知識がなくても問題なくシステム構築を行えるでしょう。

実際にELTツールを導入する際は、製品の操作性や、操作する上で求められる専門知識はどのくらいなのかを、前もって確認しておくことが大事です。

利用料金はどのくらいか

有料のELTツールは製品、料金プランによって価格が大きく変わり、ETLのライセンス料やサーバー費用などを合計した場合、100万円~1,000万円以上と幅があります。導入の際は、自社が想定している費用に合った製品を選ぶことが大事です。

もし企業内に初めてETLツールを導入するという場合、無料で使用できるOSSを導入してみて、ETLツールがどのような機能を持ち、自社にとってどの程度有用なのかを検証してみるのも一つの方法です。

自社で活用できる範囲を把握したうえで、どのくらいのコストをかけるのが妥当なのか、検討してみるといいでしょう。

ETLツールで埋もれたデータの有効活用を実現できる

ETLツールとは、自社内に蓄積された膨大なデータを抽出、加工し、分析可能なデータとしてデータウェアハウスに格納してくれるツールです。

人間の手でやると高度な専門知識、時間、コストが求められる作業を、ETLツールであれば自動で素早く処理でき、人件費の削減にもつながります。

ただし、導入の際には自社に合った製品を選ぶ必要があること、一定の専門知識を必要とする製品もあることなど、確認すべきポイントも多いです。複数の製品を比較検討することなく、導入するETLツールを安易に決めてしまうと、そのメリットを享受できない場合もあるので注意しましょう。

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