イノベーションを起こすためには「失敗しても死ぬことはないという感覚を持つこと」-さくらインターネット田中代表が語る経営哲学-
上場後3年で債務超過に。「借りたものは返すのは当たり前」だと痛感
西村氏:
上場直後、お金の使い道についていろいろ寄り道したとか……
田中氏:
2005年に上場してものすごく会社買って、10社ぐらい子会社できたんですよね。
とにかく買える会社は全部買ってましたね。リターン考えてない村上ファンドみたいな状態です(笑)
そしたら2007年3に債務超過になって、前の社長辞めちゃいまして。
その時に社長に戻りました。来月潰れるかもしれない会社の社長になったということです(笑)
債務超過の状態で社長に復帰した田中氏は、その経験をとおして借りたお金を返せないことがどういうことかを肌で感じたようです。
田中氏:
金がないならすぐ返せとか言われてましたね。いや、金がないから返せないんだよと。
結構エグいなあと思いましたね。
でも、返せない方が悪いなと思いましたね。
その時は「借りたものは返す」という当たり前のことを学びました。
クラウドを始めたのは「時代にフィットさせただけ」
西村氏:
IRを見ると、クラウドやVPSをやっていないと、売り上げは微減傾向だったわけですか。
田中氏:
2004年にサーバーテコ入れしたんですが、その時一番売れてたのは専用サーバーだったんですよね。
今の決算みると、専用サーバーがまずい状況にあるとわかるんで内心ヒヤヒヤしますよね(笑)
ちょうどクラウドが出てきて専用サーバーが使われなくなったのが2011年頃。
その頃にクラウドを始めたらすごく伸びたんですよね。
僕らはクラウドがくるとかAIがくるとか目論んでなかった。
ただ時代にフィットさせただけなんですよね。
2009年にAWS(Amazonが提供するクラウドサーバーサービス)が上陸し、田中氏自身もその利便性に驚き、JWSのユーザー会である「JAWSUG」にも参加されています。
(参考:[はてな上場パーティでの挨拶とはてなへの想い - さくらインターネット創業日記](http://tanaka.sakura.ad.jp/2016/03/hatena-ipo.html))
AWSの体験をとおしてクラウドサービスの可能性を感じた田中氏は、自社でも2011年にクラウドサービスを立ち上げ、現在では最も成長率の高いサービスに成長しています。
とにかく成長業界へ投資すること
西村氏:
イノベーションは、どうすれば起こせるんでしょうか?
田中氏:
失敗しても死ぬことはないという感覚を作ることですね。僕も時間かかりましたけど。
成長している業界であれば、予想どおり行くかはわかりませんが辻褄は合うと思うので、成長業界にすごい勢いでお金を突っ込むのは正しいと思いますね。
液晶テレビが今の100倍売れるとかはあんまり思わないじゃないですか。
クラウドくるとか、AIくるとかわかりませんが、コンピュータは今の100倍1,000倍延びるっていうのは、ほとんどの人が同意すると思うんですよね。
100倍1,000倍成長すると思える場所にお金を突っ込むことです。
低価格で価値あるものを作っておけば、新規参入しにくい
市場の先駆者であれば、後続してくる競合と戦わなくてはいけない時期は必ず訪れます。
田中氏は、新規参入しにくくするためのポイントとして非常に合理的な考えを述べています。
西村氏:
以前、「ビジネスには利益を載せちゃいかん」とおっしゃってましたよね。
田中氏:
安くしておけばライバルが来ないですからね。
儲かるビジネスは絶対に真似されます。
なので、儲からないようにしとくのがいいですね。
大手が低価格で価値あるものを作っていくというのは重要ですね。
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