自社のホームページを少人数で運営している場合、デザインのことは外部に委託したり、あるいはチーム内にデザイナーが不在のときもあるのではないでしょうか。

しかし、昨今では経営陣にデザイナーをCDO(Chief Design Officer=最高デザイン責任者)として招き入れたり、ビジネスにおいても問題解決の考え方としてデザイン思考が取り入れられたりして、ノンクリエイティブ職でもますますデザインや発想力の重要性が増してきています。

ところが、デザインを少し知っている程度だと、デザイナーとの間で齟齬そごが起きたり、誤解を産んでしまうこともあります。

今回は、ノンデザイナーが持っているかもしれないデザインに関する7つの誤解について紹介していきます。

「あっ、確かにそう思っているかもな・・・」
そんな風に感じる項目があるかもしれません。
ぜひチェックリストとして活用してみてください。

ノンデザイナーが持っているかもしれないデザインに関する7つの誤解

1. 「デザインは直感だ」

芸術家であれば、自分のインスピレーションや直感に従って白紙のカンバスに筆を思うままに動かすことが正解かもしれません。
しかしながら、もし自分たちが作っているホームページが何らかのビジネス上の目的で運用されていたり、あるいは成果を求めていたりするのであれば、直感や主観を必要以上に取り入れるのは見直したほうがいいかもしれません。

実際、デザイナーであっても、これなら売上が上がると確信したデザインでさえ、期待していたほど成果が出ない場合があります。
ビジネスの共通語は「直感」や「感想」ではなく*「数字」であり、Webマーケティングで言えば実際の売上やPV(ページビュー)、CVR(コンバージョン率)などで語るべきです。
デザインにおいては、お互いの意見だけではなく、必ず
A/Bテスト*などを通じて仮説と検証を繰り返して導き出すことが大切です。

2. 「デザインには正解がある」

「このデザインにしたら売上が上がったらしい!」
Webマーケティングの世界でも、ベストプラクティスから学ぶべきことは確かにたくさんあります。
しかし、そうした成功事例はあくまでも1つのモデルケースにすぎないので、自社のホームページにそっくりそのまま当てはめたからといって、100%成果が出るとは限りません。

時には、ベストプラクティスから外れて、新たな発想、それも一見馬鹿げているような発想に挑戦することも大切です。

例えば、ガリレオ・ガリレイは近代科学の父と言われていますが、地動説を唱えた際には、教会に告発されました。
当時は全く馬鹿げているようなアイデアでも、チャレンジすることでそれが本当だと証明することができるかもしれません。

もちろん、そうした発想や仮説には、正しい検証が必要です。
みなさんも小学校の理科室で実験を経験したことがあるでしょうが、Webデザインにおいてもそうした仮説検証が重要なことを忘れてはいけません。

3. 「デザインに理屈は不要」

これは最初にご紹介した*「デザインは直感だ」*という誤解とも通じるところがありますが、デザインにもデザイン理論があるので、Web関係者であれば最低限知っておいて損はありません。

特に、「色彩に関する理論」(色の組み合わせ方など)「余白や配置に関する理論」(図版率やジャンプ率など)は、どんな人でも知っておくとよいでしょう。
電車の中にある広告や美容室で読むような雑誌はこうしたデザインの教材の宝庫となるので、こうした理論から新たなアイデアが生まれるかもしれません。

参考:
ノンデザイナーでも一定レベルのデザインができるようになる基礎知識・サービスまとめ

4. 「デザインはデザイナーのもの」

議論の余地があるかもしれませんが、一般的にビジネスベースで話ができるWebデザイナーは*「デザインはユーザーありき」だと考えています。
ユーザー体験に重きを置くUXデザインにおいても近年
「ヒューマンセンタードデザイン」*(人間中心のデザイン)が唱えられているように、「このページを見た時にユーザーはどう感じるか」「どちらのボタンの色のほうがユーザーは押しやすいか」とユーザーありきで考えていくことが大切です。

5. 「デザインはデザイナーだけが設計するもの」

前項とかぶるように見えるかもしれませんが、少し違った角度で見てみることにしましょう。
一般的に芸術作品はインスピレーションに従って芸術家が単独で作り上げていくものです。
しかし、昨今のWebデザインは、デザイナーだけでなくさまざまなステイクホルダーとコミュニケーションをとることが重要になります。

これからのデザイナーには、デザインに関するスキルだけでなく、コミュニケーションスキルも求められます。
このデザインにはどんな意図があるのか、どんなフィードバックが必要なのかを、仮説を立て、さまざまな人を巻き込んで検証していくことが大切です。

6. 「デザインは情報量が多いほうがよい」

子どもに白紙の紙を渡して絵を描かせると、実に想像力豊かに余白を埋めてくれます。
もともとあった白い部分が完全に隠れてしまうこともよくあることです。

しかし、Webデザインの世界では「余白」(ホワイトスペース)が担っている役割は非常に重要です。
左上からオブジェクトを詰めていくデザインも中にはありますが、情報量が多くなって、かえって読みにくくなることもあるのです。

一画面ごとの情報量を削るのは、はじめは勇気がいるかもしれませんが、ユーザーを中心に考えた時に、余白をしっかりととってデザインすることは非常に重要です。

7. 「デザインはオリジナリティが重要」

デザインは確かにオリジナリティが重要ですが、何よりもバランスが重要です。
奇をてらったデザインは確かに斬新でインパクトがありますが、遊びすぎるとユーザーにとって使いにくいデザインになってしまうことがあるからです。

また、オリジナリティを存分に発揮しても、多少は慣習に従わなければならない部分もあるでしょう。
例えばSNSのアイコンが全くのオリジナルで、Facebookのアイコンがディープブルーではなくポップなピンク色をしていたら、ユーザーは困惑してしまいます。
また、三本線のハンバーガーメニューを押したら、メニューが出現するのではなく全く関係のないページに飛んだりするという場合も、ユーザーは困ってしまうでしょう。

要するに、オリジナリティの中にも、ユーザーが想定できるような操作性を保ってデザインを行うのがよいでしょう。
ビジネスの種類によっては、斬新なホームページよりも従来型の一般的なホームページのほうがしっくりくるかもしれません。
ケースバイケースですが、TPOを考えてデザインすることも時に重要です。