Web担当者であれば「アクセシビリティ」「ユーザビリティ」という言葉を一度は聞いたことがあるでしょう。
それぞれの言葉の意味はなんとなくわかるけど、実際どういう場合に使うのか、それぞれの言葉の違いはなんなのかまではわからないという方は多いのではないでしょうか。

例えば、レスポンシビリティとアカウンタビリティはどちらも責任という意味を含みますが、実は明確な違いがあります。
今回は、混同しやすい「〇〇ビリティ」という言葉の意味やその違いをご紹介します。

「責任」の意味を含む「レスポンシビリティ」「アカウンタビリティ」

レスポンシビリティ

レスポンシビリティは*「責任」*を指します。ビジネスにおいては、「業務を遂行する責任」という意味で用いられます。
企業間であれ、従業員同士であれ、契約が生まれた時点で、契約内容を遂行する責任が発生します。

この場合の「責任」には、単に契約内容を遂行するということだけでなく、遂行するために必要な関連業務(進捗確認や検証、目標に届かない場合の対応策の考案)なども含まれます。

チームや個人で目標を設定し、KPIKGIを設定して目標達成に動くという一般的な業務の流れは、レスポンしビリティを果たすためのプロセスと言えるでしょう。

参照:
レスポンシビリティを委ねる - PMstyle
代理母をめぐる応答責任(アカウンタビリティ) / SAFETY JAPAN [美馬 達哉氏] / 日経BP社

アカウンタビリティ

アカウンタビリティは、*「社会に影響力のある団体や個人が、関係者に対して説明する責任があること」*を指します。
日本では「説明責任」と呼ばれることが多く、政府や企業の不祥事が起こった際によく使われる言葉です。

元は「アカウンティング(会計)」と「レスポンシビリティ(責任)」の造語で、会計責任の意味で使われていました。
国の公的機関が、国民から集めた資金を正しく使えているのかを説明する義務を「アカウンタビリティ」と呼びます。

そこから徐々に利用範囲が広がり、公的機関だけでなく、社会的に影響のある団体に対しても説明責任が求められるようになりました。
説明をする対象に関しても範囲が広がっています。
公的機関の場合は「国民」が対象でしたが、企業や医療機関などあらゆる機関にアカウンタビリティが求められる今、関係者全て(ステークホルダー)に広がっています。

レスポンシビリティとアカウンタビリティの違い

それぞれの単語を日本語に訳すと、レスポンシビリティは「責任」、アカウンタビリティは「説明責任」となります。
レスポンシビリティは「業務を遂行する責任」を指し、アカウンタビリティは「遂行した業務内容を説明する義務」を指します。

例えば、Web制作会社がクライアントからサイト制作の依頼を受け、3ヶ月以内に成果物を出すと契約したとします。
Web制作会社は、「3ヶ月以内に成果物を出す」という契約を果たす責任(レスポンシビリティ)があります。
その責任を果たすために、人員を配置し、制作スケジュールを決めて遅れが出ないように工数管理を行います。

もし結果的に期日までに成果物が出せなかった場合、Web制作会社には間に合わなかった理由をクライアントや利害関係のあるステークホルダー全員に対して説明する責任(アカウンタビリティ)が発生します。

レスポンシビリティは*「業務プロセス」に対して、アカウンタビリティは「業務を行った結果」*に対しての責任を負うことだと言えるでしょう。

「使いやすさ」の意味を含む「アクセシビリティ」「ユーザビリティ」「ファインダビリティ」

アクセシビリティ

アクセシビリティは、どんなユーザーでもアクセスしやすい、使いやすい状態を指します。
Webではもちろん、施設や交通の利便性など、オンライン・オフライン関係なく使われる概念です。

利用者の層が幅広いサービスは、アクセシビリティを重視するべきでしょう。

国籍や言語、身体能力や年齢などに左右されない使いやすさの実現を目指すという意味では、「ユニバーサルデザイン」や「バリアフリー」に通じるものがあります。

ユーザビリティ

ユーザビリティは、日本語では「有用性」と訳されます。
ISO規格では、「ある製品を特定の利用者が特定の目的を達成しようとするにあたって、特定の状況でいかに効果的に、効率的に、満足できるかの度合い」と定義しています。

引用:
ユーザビリティ・HCDの定義|U-Site

ユーザビリティは「特定のユーザー」が「特定の目的」を達成しやすくするための方法論です。
例えば、若年層の女性向け化粧品を販売しているネットショップが、ターゲット層の女性に向けて広告を配信したとします。
広告経由で商品ページに訪れた女性に、商品に関心を持ってもらい、購入を完了してもらうための情報や操作のわかりやすさを追求するのが「ユーザビリティ」です。

女性向けの化粧品なので、対象となる女性にとってわかりやすく、使いやすければ良いのです。
ターゲット外のユーザーに対しての使いやすさはそれほど考慮する必要はないでしょう。

ファインダビリティ

ファインダビリティは「情報の見つけやすさ」という意味で使われます。
Webに限らずあらゆるシーンに適用されますが、特にWebの場合は情報量が膨大なため、ファインダビリティが重視されます。

ファインダビリティは、ユーザーが普段から慣れ親しんでいるモノの情報に大きく左右されます。

例えば、普段Macパソコンを使っているユーザーが、パナソニックのレッツノートを利用する際、電源ボタンがどこにあるのかすぐに見つけることは難しいでしょう。
Macはキーボード上に電源ボタンがあるのに対し、レッツノートの場合はキーボードの側面部分にあります。
Macユーザーにとっては「電源ボタンはキーボードの右上にあるもの」ということが当たり前になっているため、それ以外のどこに電源ボタンがあるのか想定しづらいのです。

ファインダビリティを考慮するなら、対象となるユーザーが普段どのようなモノを使い、どのような情報に触れているかを把握したうえで情報を配置します。
対象ユーザーが幅広い場合は、誰にとってもわかりやすい普遍的な設計にする必要があります。

アクセシビリティ・ユーザビリティ・ファインダビリティの違い

ユーザビリティが「特定のユーザーにとって製品やサービスが使いやすいか」を指すのに対し、アクセシビリティは「すべてのユーザーにとってアクセスしやすいか」どうかを指します。対象とするユーザーが違うことを覚えておきましょう。

情報の見つけやすさを指すファインダビリティは、「誰にとっても見つけやすい」「特定のユーザーにとって見つけやすい」双方の意味合いがあるので、アクセシビリティとユーザビリティどちらにも通じる概念と言えるでしょう。

まとめ

レスポンシビリティとアカウンタビリティ、アクセシビリティとユーザビリティとファインダビリティは、どの言葉も最終的にはユーザーの存在を考慮しているものです。
どんな説明をすればユーザーが納得できるのか、ユーザーのためになるのかを考えることが重要です。言葉の意味の違いを理解することが、ユーザーへの対応に役立つかもしれません。