自社サービスのユーザーインタビューから採用のための社員撮影まで、企業における写真撮影のニーズは年々高まっています。

この記事を読まれている方も、撮る側か撮られる側かは別にせよ、一度は業務で撮影に関わったことがあるのではないでしょうか。

Instagram(インスタグラム)やSnapchatの流行など世の中の流れとして”視覚的にいいもの”の価値が上がっており、Webサイトを見れば各所で笑顔の素敵な社員紹介や嬉しそうにサービスの価値を語るインタビューなど、見ているだけでワクワクするような感覚的なコミュニケーションが写真によって生じます。

一方、ニーズの高まりによって生じる影響は必ずしもいいことだけとは限りません。

一定以上のクオリティの写真を求めようとすると社内にスキルを持った人材がおらず外注することとなり、必要工数の計算や予算の申請など雑務が増えた結果「何となく良いとは思うけど、費用対効果ってどうなんだろう……」と悩んでいる人も多いはずです。

そこで今回は、そんな悩みを解決すべく、「撮影業務を内製化するために必要な3つのこと」として写真を撮る際に必要な"カメラの仕組み"と"撮影シーン別のコツ"、そして"購入にあたって知っておくべきこと"の3点をご紹介します。
  

カメラの仕組み

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カメラとは簡単にいうと「レンズから入ってきた光を画像、映像として記録する装置」になります。なので基本的な操作は全て「記録する光の量を調節する」という事に収束します。

その際に出てくる数値が、「F値」「シャッタースピード」「ISO感度」の3つです。難しく思える一眼レフでの撮影も、基本はこの3つを調整するだけでキレイな写真が撮れるようになります。
※この記事では全体感を理解するためにマニュアルモードでの撮影方法を紹介します

上記3つの値のうち、1. F値はレンズによって、2. シャッタースピード、3. ISO感度はカメラ本体(ボディ)によって規定されます。

それでは順を追ってみてみましょう。
  

1. F値

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F値とはレンズの「光を取り込む穴の大きさ」を決める数字です。これによって「明るさ」と「ピントの合う範囲」の2つが規定されます。この「光を取り込む穴」のことを「絞り」と呼ぶためにF値のことを「絞り値」と呼ぶ人もいます。

F値は、F1.4、F1.8、F2……など小数点第1位まで表記され、値が大きいほど絞りが絞られて穴の大きさが小さくなります。つまり、光を取り込む量が少なくなるため、撮影される写真は暗くなります。逆に値が小さいと絞りが開き、撮影される写真は明るくなります。
※F値はレンズによって上限値と下限値が決められており、一番値が小さい時(絞りが大きく開いている時)を「絞り開放」と呼びます

また、F値が小さい、つまり絞りの穴が大きい時ほどピントの合う範囲は狭くなり、いわゆる「ボケ」が生まれます。人物を撮る時のように被写体だけをメリハリつけて写したい時はボケ感が必要なのでF値を下げ、逆に風景など全体的にくっきり写したい時にはF値を上げるのが一般的です。
  

2. シャッタースピード

シャッタースピードとは「シャッターを切るスピード」のことで「どれくらいの長さ光を取り込むか」を決める数値です。これによって「明るさ」と「ブレ」の2つが規定されます。

シャッタースピードは1/100秒、1/2000秒など分数で表されます。数値が小さい(分母が大きい)ほどシャッタースピードは速くなり、それに応じて速く動くものでも止まったかのように撮影することができます。ただし、その分、光をとりこむ時間も短いために写真は暗くなります。

人や動物など速く動くものを撮りたい時はシャッタースピードを上げ、星や夜景など暗いところであまり動かないものを撮りたい時はシャッタースピードを下げるのが一般的です。
  

3. ISO感度

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ISO感度とは国際標準化機構(ISO)が定めた規格で光を捉える能力を表した数値です。カメラ内にある「撮像素子」という部分が光を捉える力を定めることができ、どれくらい弱い光でも取り込めるかがここで決まります。これによって「明るさ」と「画像の荒さ」の2つが規定されます。

ISO感度は50、100、200などと表されます。値が大きければ大きいほど弱い光でも捉えることができ、イベント会場など少し暗いところでもしっかりと被写体を写すことが可能です。ただし、それに比例して「撮像素子」に電気信号が多く送られるため、いわゆる「ざらつき」が写真に生じ、画像が荒く見えてしまうことがあります。

上記3つの数字を視覚的にわかりやすく説明したものが以下の画像になります。各数値の関係性を整理してもらえれば幸いです。

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※画像引用元:photoli

また、ここまで読み進めてきて、「数値の意味はわかったけど、どの数値から順番に設定すれば良いの?」という疑問を持たれた方もいるかも知れません。この疑問に対しての正解はありませんが、個人的には、1. 撮影の目的から必要な値もしくは外的要因で変えにくい値、2. 残りの値を利用して全体感を微調整という順序で設定することが多いです。

今回は企業で撮影する機会の多い2つのシーンにおいて詳しく解説します。
  

撮影シーン別のコツ

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1. インタビュー撮影

インタビュー撮影で大切なことは、"主人公(被写体)を意図している印象で撮ること"になります。

被写体が人である以上、ある程度の動きが想定されるため、シャッタースピードを一定値まで保ち”ブレ”がおきないようにしなければなりません。また、”主人公感”を出すために被写体をある程度くっきりと撮影することが求められます。なので、1. 撮影の目的から必要な値もしくは外的要因で変えにくい値、として優先順に「シャッタースピード」と「F値」となります。

参考までに、私は人を撮る際にはシャッタースピードを1/200を下限値とし、F値を2.8~4.0程度に設定できる標準ズームレンズもしくは望遠ズームレンズを利用しています。

F値の下限値が低い単焦点レンズも使う時がありますが、インタビューをする際には会議室など狭い空間が多いため(外的要因)、ズームができない特性上インタビュー中動き回るリスクがあり注意が必要です。

上記を設定した上でISO感度を調整し、撮影をします。

また、数値設定以外のコツとして、インタビューの際以下のようなパターンを撮影しておくと利用する際にバリエーションが広がり便利です。写真を使う記事やサイトの目的、構成をあらかじめ把握し、どのような写真が求められているかも併せて考え撮影しましょう。
  
●ロクロ
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ロクロを回しているようなポーズで、インタビュー撮影で多用されます。躍動感が出るので、被写体の熱意を伝えたいシーンに最適です。

●前ボケ
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少し引いて、インタビュアーや周りの環境を使ってボケを作ります。
被写体が客観的に見えるため、インタビュイーの過去の話など、本題と少し外れた内容を差し込む際によく使われます。

2. イベント撮影

イベント撮影で必要なことは「規模と雰囲気を残すこと」になります。

誰かが登壇するようなイベント撮影では場の雰囲気を作るために全体的に照明を落としていることがあります。そのような撮影の時は、1. 撮影の目的から必要な値もしくは外的要因で変えにくい値、は優先順に「F値」「ISO感度」となります。雰囲気を作るために落としている照明がISOを上げ過ぎて、ノイズだらけになると本末転倒なので、かなり暗めの時にはF値を開放しましょう。

また、懇親会のような社内で行うようなイベントの撮影などでは、集合写真など規模の大きい撮影もあるかと思います。その時は、1. 撮影の目的から必要な値もしくは外的要因で変えにくい値、として「F値」があがります。ピントの合う範囲を広めに設定できるようF値を高く設定しましょう。
  

購入にあたって知っておくべきこと

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上記で説明したような写真を撮るためには、やはり一眼レフカメラが必要です。

ここでは一眼レフカメラを購入する際に知っておくべきことをご紹介します。
  

1. ボディに関して

まず、一眼レフカメラのボディには2種類あります。”35mmフルサイズ”とよばれるものと”aps-c”と呼ばれるものです。これらにはISO感度で説明した「撮像素子」の違いがあります。35mmフルサイズは撮像素子が大きく、価格は10万円以上のものがほとんどです。なので、会社としてよほど写真に力を入れることが決まってない限り、1番最初に買うカメラは aps-c で良いかと思います。

また、ボディには「マウント」と呼ばれるボディとレンズを接合する部分があります。このマウントがメーカーによって異なるため注意が必要です。基本的に異なるライバルメーカーのレンズは別売りのマウントアダプターというものを購入しないと接合することができないので気を付けましょう。
  

2. レンズに関して

これまでの文章でわかるように、レンズで規定されるF値、そしてズームをできるできないかによってかなり撮影の幅が広がります。個人的な意見としてはF2.0程度で広角の取れる画角の単焦点レンズとF4.0程度の望遠ズームがあれば最初は困らないのではないかと思います。
  

まとめ

一見難しそうに見える一眼レフでの撮影も、機材選びで間違えなければ、慣れ次第で世に出せるクオリティまで撮影できるようになります。

今回は内製化という文脈で説明しましたが、合理的面以外にも撮影ができることで周りの人たちが喜んでくれるなど、何より感覚的面で充実することがあるかと思います。

ぜひ同じ悩みを抱えている方にも共有して頂けますと幸いです。