歴史人物に学ぶプレゼンテーション術

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澤氏:
突然なのですが、アウグストゥス、チンギスハン、ナポレオンと世界を統治した人たちがいます。僕は、この歴史人物のプレゼンテーションに思いを馳せることがあるんですね。この3人はどうやって、何十万人の人々を動かしたのだろうって。だって、当時はマイクもスピーカーもなければ、ラジオもテレビもネットもない。マイクロソフトのPowerPointだってリリース前ですよ。(会場笑)

そう考えると、メディアは使えないわけです。チンギスハンがいくら声が大きかったとしても20万人とかに届くわけがないですから。それで、どうしたかというと「伝言ゲーム」なんです。伝言ゲームを制するものは世界を制する。一般的に伝言ゲームは、伝言した最初と最後でズレが生じるのを楽しむゲームですよね。でも、世界を制するわけですから、最初と最後が全く同じ状態。単に言葉だけでなく熱量も含めてなんですよ。

たぶん、チンギスハンにしろナポレオンにしろ、目の前にいる家臣とかに「俺、そろそろ世界統治しちゃおうかな。どう思う?」とか言うじゃないですか。家臣は「良いっすね!」とかそんな感じでやりとりするわけですよ。

その時の熱量が、民衆にまで伝わっていかなければならない。これは、脅迫だけではうまくいかないわけですよね。「言うこと聞かないと殺すぞ」と言ったもんなら、逆に家臣が仲間を集めて反逆されてしまいますから。

だから、「我々の生活をもっと良くして民衆を喜ばせよう。だから領土を広げよう」ということで、だんだん伝わっていき、兵士たちが動くというわけです。これがリーダーシップと呼ばれるものです。リーダーシップというのは優れたプレゼンテーションから出てくるものです。

それは、単に喋りがうまいとかじゃなくて、オーディエンスの心をどうやって掴むかという点が大事。プレゼンテーションの根幹ですね。ハッピーになるのは自分ではなく、民衆。皆のために誘うから、人々が動くわけですよね。

「情報」ではなく「体験」を伝える

澤氏:
有名な経済学者にピーター・ドラッカーという方がいます。この人は何十年も昔に、「物を売るな、体験を売れ」と言っています。体験(エクスペリエンス)という言葉は、いまでもITのの世界でしょっちゅう出てくるキーワードなんですけど、体験を伝えるというのはオーディエンスに追体験してもらうことでもあります。

「ミシュランの星付きのレストランに行かない?」と言われるよりも「昨日行ったお店が本当に美味しかったからこんど一緒に行かない?」の方が魅力的に感じませんか?文字だけの情報を見せられるより、熱量を持った体験の共有を語られる方がよっぽど行きたいという気持ちになるんです。体験は人を動かします。

今すぐプレゼンテーション力アップに使えるテクニック

澤氏:
ここからは、プレゼンテーション力向上に使えるテクニックの話になります。僕がよくやっているのが「画像検索」です。たとえば、「Security」と検索すると、カギやパスワード、盾やガードマンが出てきます。あくまでこの画像をスライドに使うわけではなくて、ここから連想する脳のトレーニングになるのです。

「セキュリティのプレゼンテーションをするから、ガードマンを例え話に使ってみようかな」とかストーリーのヒントになります。そして、最終的に画像をスライドに使う。関係ない写真は視覚的なノイズになるので良くないです。オーディエンスの思考が止まってしまいます。

あと、皆さんは自分の動画を撮影したことがありますか?(会場 半数近く挙手)

意外といらっしゃるんですね。では、現実の自分とのギャップに落ち込んだことがある人挙手!(会場爆笑)

実は、自分のことって動画でみないとわからないものなんですよね。自信があってもプレゼンテーションがうまくない人って自分の姿を見ていないんです。喋りに酔ってるんですね。自分の姿にフィードバックを行う上でのチェックポイントとしては、立ち方・手の位置・頭です。

また、最後の決めゼリフも決めてください。たとえば、スティーブ・ジョブズの「Stay Hungry, Stay Foolish」という言葉がありますよね。最後にセリフをきちっと決めるとオーディエンスの満足度があがります。僕は、プレゼンテーションの最後に駆け上がるようなイメージで「ありがとうございました!」と言っています。「ご清聴ありがとうございました」と良く聞きますが、説明的で締りが悪いので、「ありがとうございました!」です。

また、知人が言っていた話なのですが、自分の横に「情熱大陸」のカメラが回ってると思えって。(笑)そうすると、ちょっとした仕草にも注意が行き渡るようになるので、それを意識していれば、人前に出た時恥ずかしいことが起きる確率がどんどん減っていくので、それが良いんじゃないかなと思います。取材を受けてると思って生活してみてください。

ありがとうございました!

西村氏:
澤さん、ありがとうございました!