「世界的に有名なデザイナー〇〇がこの商品のパッケージデザインを手がけており、多くの芸能人やモデルから脚光を集めています!」

上記の文章は、正しい表現でしょうか?それとも間違っていますか?

答えは、✕です。「脚光を集める」は誤用で、正しくは「脚光を浴びる」と表現します。

慣用句は、日本語の表現を工夫することで、私たちの想像を豊かにしてくれる言葉です。しかし、気付かないうちに間違った使い方をしてしまうこともあります。日常生活ではまだしも、重要なビジネスの局面や、大事なお客様に向けた発信で誤用してしまっては、担当者だけでなく会社全体のイメージ低下に繋がりかねません。

今回は、ビジネスで利用する機会が多く、かつ誤用しやすい慣用句を30句ご紹介します。気付かずに誤用していた表現がないか、この機会にチェックしてみましょう。

慣用句とは

慣用句とは、個々に意味を持っている単語が組み合わされることで、本来とは異なる意味をもつようになる言葉です。比喩表現(物事を直接的に表現せず、例えを用いて表現すること)のひとつともいえます。

広辞苑では、以下のように定義されています。

> 「二つ以上の語から構成され、句全体の意味が個々の語の元来の意味からは決まらない 
ような慣用的表現。「骨を折る」「油を売る」「間髪を入れず」など。イディオム。」
広辞苑第六版

例えば、以下の会話例をみてみましょう。

A「昨日の引っ越しはどうだった?」
B「丸一日かかって、骨が折れたよ。」

Bさんは本当に「骨が折れた」わけではありません。この表現は、「苦労した」という意味で捉えます。

慣用句の誤用は多い

平成27年度「国語に関する世論調査」.png

引用:
平成27年度「国語に関する世論調査」の結果の概要|文化庁

上図は、文化庁が毎年行っている世論調査で、慣用句の意味の理解に関する調査結果です。「確信犯(政治的・宗教的等の信念に基いて正しいと信じてなされる行為・犯罪又はその行為を行う人)」と「琴線に触れる(感動や共鳴を与えること)」という2つの慣用句の意味を正しく理解しているか、平成19年度と全く同じ質問をして比較しています。

本来の意味を回答した割合は点線で示されています。正解率は最高でも49.2%で、この2問だけではありますが、半数以上の方が誤用しています。

慣用句をすべて正しく使いこなせている自信がある方は多くないのではないでしょうか。誤用しやすい慣用句をご紹介するので、腕試ししてみてください。

誤用しやすい慣用句

慣用句で多いのが、「表記の誤用」と「意味の誤用」です。
今回はそれぞれ分けて誤用例、正しい意味と使い方を解説します。

表記の誤用

これから見出しに挙げる慣用句は誤用です。
違和感なく読めてしまった方は、下の正しい意味と使い方を確認しましょう。

嗜好を凝らす

正しくは「趣向を凝らす」です。
意味は「創意工夫をして面白みや味わいを出すこと」です。

頭を傾げる

正しくは「首を傾げる」です。
意味は「不思議に思ったり、疑わしく思ったりするときの動作」です。

頭に留める

正しくは「耳に留める」です。
意味は「注意して聞くこと」です。

的を得る

正しくは「的を射る」です。
意味は「的確に要件をとらえること」です。

心血を傾ける

正しくは「心血を注ぐ」です。
意味は「全身全霊をかけて物事に取り組むこと」です。

物議を呼ぶ

正しくは「物議を醸す」です。
意味は「世間の論議を引き起こすこと」です。

火蓋を落とす

正しくは「火蓋を切る」です。
意味は「物事に着手すること」です。

照準を当てる

正しくは「照準を合わせる」です。
意味は「目標として到達すべきものを心に決めること」です。

二の舞いを踏む

正しくは「二の舞いを演じる」です。
意味は「前の人と同じ失敗を繰り返すこと」です。
間違えやすい慣用句として、「二の足を踏む(物事を決断できずためらうこと)」があります。

身入りのいい仕事

正しくは「実入りのいい仕事」です。
意味は「収入がいい仕事」です。

熱にうなされる

正しくは「熱に浮かされる」です。
意味は「高熱のためにうわ言をいうこと」「ひとつのことに夢中になること」です。

青田刈り

正しくは「青田買い」です。
意味は「就職活動などで優秀な人材を早期に獲得すること」です。

堂にはいる

正しくは「堂にいる」です。
意味は「学問や技術が優れ、身についていること」です。

公算が強い

正しくは「公算が大きい」です。
意味は「あることが起きる可能性が高いこと」です。

社交辞礼

正しくは「社交辞令」です。
意味は「人付き合いにおいて望ましい挨拶や褒め言葉」です。

意味の誤用

間違いやすい意味と正しい意味を紹介します。
簡単な例文で使い方を再確認しましょう。

激を飛ばす

「激励すること」が誤用で、正しくは「自らの主張を強く訴えること」です。

【用例】
誤「今日の会議で発表する同僚に激を飛ばした」
正「今日の会議でチームに檄を飛ばした」

役不足

「与えられた役割に対して自分の能力が足りないこと」が誤用で、正しくは「与えられた役割に不満を抱き満足しないこと」です。

【用例】
誤「こんな重要な仕事は自分なんかには役不足だ」
正「こんな簡単な仕事は自分には役不足だ」

気の置けない

「相手に対して気を許せないこと」が誤用で、正しくは「相手に対して気配りや遠慮をしなくてよいこと」です。

【用例】
誤「彼女は本心が見えないから、気の置けない関係だ」
正「彼女は幼い頃から仲がよく、気の置けない関係だ」

矢先

「行動を起こしたその直後」が誤用で、正しくは「物事がまさに始まろうとするとき」です。

【用例】
誤「洗濯物を干した矢先に雨が降ってきて、濡れてしまった」
正「洗濯物を干そうとした矢先に雨が降ってきて、慌てて窓を閉めた」

浮き足立つ

「喜んで浮かれている」が誤用で、正しくは「不安や怖れで落ち着きを失う」です。

【用例】
誤「明日のイベントが楽しみで、みな浮足立っている」
正「明日のイベントの準備が整っておらず、みな浮足立っている」

割愛する

「不要なものを切り捨てる」が誤用で、正しくは「惜しみながら手放す」です。

【用例】
誤「この表現は無駄だから割愛しよう」
正「文字数制限があるからこの表現は割愛しよう」

潮時

「物事をやめる頃合い」が誤用で、正しくは「物事を行うのにちょうどいい頃合い」です。

【用例】
誤「この会社に勤めるのも潮時だ」
正「新しい会社に転職する潮時だ」

敷居が高い

「自分には不相応であり手が届かないこと」が誤用で、正しくは「相手に不義理なことをしてしまい行きづらいこと」です。

【用例】
誤「あの店の常連客は経営層ばかりだから、自分には敷居が高い」
正「あの店は以前酔っ払って暴れてしまったから、自分には敷居が高い」

なしくずし

「物事を曖昧にして勢いですすめること」が誤用で、正しくは「物事を少しずつ進めていくこと」です。

【用例】
誤「なんの準備も振り返りもないまま、なしくずしに計画が進んでしまった」
正「この事業計画は、なしくずしに進めていこう」

恣意的

「何かの目的があって行動すること」が誤用で、正しくは「その時々で物事を判断すること」です。

【用例】
誤「あの部下は恣意的に上司に近づいている」
正「上司の恣意的な発言に振り回される」

王道

「正攻法」が誤用で、正しくは「安易な方法、楽な道」です。

【用例】
誤「まずは王道の方法を試してみよう」
正「王道の方法にばかり頼るのは止めよう」

斜に構える

「物事にまっすぐ向き合わず皮肉な態度をとること」が誤用で、正しくは「物事に真摯に取り組むこと」です。

【用例】
誤「彼はいつも斜に構えているから、気に食わない」
正「彼はいつも斜に構えているから、ぜひ応援したい」

煮詰まる

「物事に行き詰まること」が誤用で、正しくは「議論が出尽くしてほぼ結論を出せる状態になること」です。

【用例】
誤「議論が煮詰まって、誰も意見を出さなくなってしまった」
正「議論が煮詰まって、ようやくみんな安心した表情になった」

小春日和

「春の陽気な気候」が誤用で、正しくは「初冬の温かい日」です。

【用例】
誤「5月の小春日和が好きです」
正「10月に入ってから毎日寒かったのに、今日は小春日和ですね」

佳境に入る

「最も盛り上がる場面に入ること」が誤用で、正しくは「最も興味深い、面白い場面に入ること」です。

【用例】
誤「12月も中旬を過ぎ、クリスマス商戦は佳境に入っている」
正「小説でついにあの登場人物の正体が明かされ、佳境に入っている」

まとめ

慣用句は、意識していても間違えてしまうことが多々あります。単語自体の意味とは異なると分かっていても、つい視覚的に正しそうな表記や意味に引っ張られてしまうためだと考えられます。

言葉は使う人々の文化や環境に応じて変化するものです。慣用句も例に漏れず、本来は誤用であるものが広がり一般的になれば、そちらが正しくなる場合もあります。

しかし、相手が「誤用している」と感じてしまった場合、特にビジネスにおいてはマイナスにはたらく可能性が高くなります。一度習慣になってしまうと変えにくいものではありますが、できるところから意識して改善してみましょう。