「仕事や組織に縛られず自由に生きたい」

これは、誰しも一度は考えることではないでしょうか。しかし、自由に生きるということは、同時に"自分自身の選択に責任を持つ"ことを意味します。

今回は、2017年11月9日に幕張メッセで行われたCybozuDays 2017の特別講演、「叶姉妹の多様化の時代に輝き続ける自己プロデュース力の秘訣を語る」をテーマにして行われた、イベントを主催するサイボウズ株式会社(以下、サイボウズ) 代表取締役社長 青野慶久 氏と叶姉妹のお二人のセッションの様子をお届けします。

自分自身の生き方を貫き、変わらない美しさを保ち続ける叶恭子さん・叶美香さんの独自の考え方・人生を生きるコツについて、叶姉妹お二人のコメントともにご紹介していきます。
  

登壇者プロフィール

叶恭子さん(左)叶美香さん(右)

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セレブリティライフスタイルプロデューサー。
公式ブログの運営のほか、2016年11月にはインスタグラムアカウントを開設し、情報を発信している。著書には "叶恭子 幸せの日めくり31のフィロソフィ たとえ100万人が楽しそうにしていたとしても、そこに楽しめるものがない「この世にたった一人のあなた」は、無理に笑うことはありません。" "叶恭子の美しすぎる奇跡のセレブ肌を貴方に「美は1日してならず」" など(ともに叶恭子さん名義)

参考:
【サービス終了】叶姉妹 公式ブログ
  

サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野慶久 氏

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1971年生まれ。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進して離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。総務省、厚労省、経産省、内閣府、内閣官房の働き方変革プロジェクトの外部アドバイザーや一般社団法人コンピュータソフトウェア協会の副会長を務める。

引用元:
青野慶久|アカデミーヒルズ
  

MC:松澤千晶 氏

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1985年生まれ。東京都出身。日本大学芸術学部音楽学科ピアノコース卒。ホリプロ所属。
日本テレビ「Oha!4 NEWS LIVE」女子大生アシスタントを務めたことをきっかけに、日経CNBC、TBSニュースバード等のニュースチャンネルでキャスターを務める。現在はフリーアナウンサーとして活動する。

引用元:
松澤千晶先生のプロフィール|Schoo(スクー)
  

叶恭子さんの考える自分自身の活用法とは

叶姉妹のお二人と青野氏のセッションは、叶恭子さんのCybozuDays 2017のテーマ「壁を超える」に対する一言から始まりました。

「こちら様のイベントのテーマは "壁を超える" ですが、私たちに壁はございません。そもそも壁という概念がございません」(叶恭子さん)

恭子さんは、「人と人の間や自分の中にはもともと壁などなく、端に自分の心の中で壁を作ってしまうだけ。パーテーションのような薄いものならいい」とした上で、分厚い壁を作ることでシンプルに見えていたことが見えなくなってしまうこともあるかもしれないと口にしていました。

一方で、美香さんは "壁" を "既成概念" だと訳した上で、姉からの無理難題を提示された時の自分の行動を例に挙げました。

「仮に姉から何かを指示されたとします。その際、時として思わず否定形・ネガティブな言葉を発してしまうことがあるのですが、そういう場合はいつも姉に叱られます。理由はシンプルで、とやかく言う前に取りあえずやってみなさいということなんです」(叶美香さん)

こうした経験から、まずは実際に行動に起こすようにしているという美香さん。すると驚いたことに、できないことよりも圧倒的にできることのほうが多いことがわかったといいます。その積み重ねの甲斐あって、今では自分自身の自信につながっていくことで、美香さんは恭子さんの無理難題にもネガティブな言葉を発しなくなったそうです。

きっと皆さんも "できない" と思っていたことでも、実際にやってみると案外できてしまったという経験があるのではないでしょうか。
  

楽しむ姿を演じるのではなく、心から楽しめることをすべき

叶姉妹のお二人は、著書だけではなく、インスタグラムを通じてポジティブなメッセージを発信しています。

セッション内では叶恭子さんの著書*「叶恭子 幸せの日めくり31のフィロソフィ たとえ100万人が楽しそうにしていたとしても、そこに楽しめるものがない "この世にたった一人のあなた" は、無理に笑うことはありません。」*から2つの言葉が紹介されました。
  

1. 私の人生において意味があるのはただ1つ。自分でシンプルに選ぶこと

叶恭子さんは、1つひとつの物事に対して丁寧に選んでいくことが自身の人生を作り上げていくと言います。

「日本人というのは選ぶということがとても下手なんだと思うんです。小学校から会社までに自分で選択しないままにきちゃっているんですよ」(青野氏)

企業のトップとして様々な判断を重ねてきただけではなく、婚約時に妻の姓を名乗ることに決めるなど自身の家庭生活でも思い切った判断をしてきた青野氏。

青野氏は、働き方改革が進む中で、多様性を重んじると出勤時間や会社に出勤すること自体が自分で選択できるようになるとした上で「選ぶからには責任を負わなくてはいけない」と指摘します。

「自由に生きていていいですね、とよく言われるんです」という恭子さんも青野氏同様に、自由の奥にあるのは確固たる覚悟があり、単なる自由ではないと言います。

ちなみに、恭子さん曰く、叶姉妹は美香さんが主導権を握っていて、美香さんがいないと生きていけないそうです。美香さんがリードしてくれているからこそ、叶姉妹が成り立っているのだと。青野氏はこれを「各自で得意分野を持ち寄って役割分担をしているチーム」だと表現しています。

ただ、それに対して叶恭子さんは「責任は自分だけのものでない」と考えることとは違うと明言しています。

「最終的には自分の責任です。自分の人生は自分が選択すること。その中に誰とどう過ごすか、どのように仕事をするかが発生するのです。私が選んだことは私が選んだこと。美香さんが選んだことは美香さんが選んだこと。それが一緒なら、なお嬉しい。それがチームワークということです」(叶恭子さん)

叶恭子さんが言うように、あくまで選択は自己責任であり、選択の積み重ねが人生と言えるのかもしれません。そのためには、チームが前提で選択を行うという考え方にはならないようです。
  

2. 心から楽しみ、感じることが、人生を後悔なく生きる基本

叶姉妹のお二人はこの言葉を「言葉にするものでもない普通のこと」と表現しています。

しかし、実際には多くの方にとっては仕事や家庭のしがらみなどによって、夢中になっていることを全力で楽しむのは難しいのではないでしょうか。

この言葉に対し、青野氏は次のように述べています。

「働き方改革には楽しさが欠けています。一律に休ませて、一律に残業カットして……と、仕事なんて楽しいものではなく、辛くて当たり前という考え方でいることが影響しています。さらに、会社の社長だと売り上げや利益があって、それが日経新聞に掲載され、ダメ出しされる、というように、売り上げ利益をあげることが会社がやるべきことなんだと考えるようになってしまいます。でも、実際は8時間フルで働くのに楽しくなかったら、きっと辛いですよね。まずは楽しみがあって、その楽しみを続けるためには売り上げと利益が必要で、こういう因果関係の中で物事を考えていかなければなりません」(青野氏)

だからこそ、日本人は "楽しみ" の優先度をあげた方がいいと言われています。

また、科学技術の進化により、人間にとって嫌な仕事は減っていくと指摘しています。

「もし仕事が辛いと思っているなら、その仕事はなくなりますよ。”楽しみ”というのがこれからのキーワードになっていくはずです」(青野氏)

一方で、「仕事を楽しんでほしい。それが働き方改革」と述べる青野氏に対して、叶恭子さんは以下のように話していました。

「わざと楽しんでいる姿を演じることは、もっと楽しくないということを指します。本来であれば、心から楽しめることをすべきですよね。”仕事は楽しい”と押し付けるのは人様によって違うはずです」(叶恭子さん)

叶姉妹のお二人は自身のスタンスとして「人はみんな違う。むしろ同じと思うことこそ可笑しい」ということを常に意識しているそうです。そのため、自分の考えを人に押し付けることをせず、そもそも押し付ける必要がなくなるのだと口にしていました。

「皆さんにはご自身の選択肢があるわけですから "こうする方法がありますよ" と話しますが、こうするすべきだとは絶対にしません。"こういうのが心地いいな" と思うことの選択をすることがヒントになればいいなとは思います」(叶恭子さん)
  

サイボウズの複数の女性社員から寄せられた質問

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セッションでは、叶姉妹のファンだというサイボウズの複数の女性社員から寄せられた質問が紹介されました。
  

Q1. 人と比べないにはどうすればいいんでしょうか

A. 人のことを何も気にしなきゃいけないんじゃないでしょうか

実にシンプルな答えに会場内で笑いが起きながらも、叶恭子さんはこうも補足します。

「自分が気にするから比べてしまうからです。嫌な上司や言葉があって、会社の環境として逃げ場がなかったとしても、その方を椅子だと思えばいいんです。椅子とか冷蔵庫とか、壁や靴でも構いません。話を聞くのも適当に"風かな?"と思ってみてください」(叶恭子さん)
  

Q2. 大きな失敗をしたことはありますか?ちなみに、その際、どのように対応しましたか

A. 私、失敗いたしませんから

冗談めかし、原因を追求した上で次の機会に生かすという恭子さんですが、失敗しないように準備することが大切だと言います。

「私たちは失敗しないために、ものすごく努力しています。人様が思う答えよりも、15倍ぐらいの答えを用意しています。もし、私どもに関わった失敗事項があったら、なぜそうだったのかを徹底的に追求して考えます。"そうだったんだ!" という事実をちゃんと自分たちで知っておく必要がありますね」(叶恭子さん)

一方、恭子さんは美香さんが何かチャレンジして失敗しても「美香さんよく頑張ったじゃない、ここまでできたのよ」と美香さんの健闘を称えてくれます。この言葉があるからこそ、美香さんは納得した気持ちになり、何もしないよりは行動をした方がいいという姿勢になれるそうです。

●恭子さんが挙げる「美香さんがよく頑張った」3つのエピソード

・エピソード1. カリブ島の孤島でランチ
カリブ海の上空を飛行機で飛んでいた際、「あの島でランチがしたい」と窓からとある小さな島を指差しました。美香さんは現地のガイドに聞き、カリブ海に浮かぶ無数の島の中から指差した島を探し出しました。そして、半日後にはセッティングして、実際にランチを行いました。

・エピソード2. ホテルのバルコニーから見える花火
あるホテルのスイートルームのバルコニーから「この場所から花火がみたい」と叶恭子さんが言いました。そして「金曜日にね」と伝えたところ、美香さんはホテルのコンシェルジェの方などと協力し、実際にバルコニーから見えるように花火をセッティングして金曜日に間に合わせたそうです。

・エピソード3. ピラミッドを登る
過去に「ピラミッドに登りたい」と叶恭子さんが言ったところ、美香さんはガイドの方に許可をとり、ピラミッドにも登れるようにセッティングしました。しかし、実際は暑かっため、恭子さんは登らず、美香さんとグッドルッキングガイが代わりに登りました。
※現在は登ることは許可されていません

  

Q3. 人に流されず、自分を貫くにはどうしたらいいですか

A. 自分自身が流されない努力をすることです

恭子さんは人に流されてしまう理由として、自分を持っておらず、仲間外れにされることを恐れているからだとしています。そのため、孤独を恐れなければ流されることはなく、流されることすら意識しないのではないかと言います。

「全てはご自身の中にあって、ハピネスもご自身が作るものです。よく幸せ探しの旅に出ると口にする方がいらっしゃいますが、幸せは自分の心の中にあるものです。1杯のティーでも幸せを感じることができますし、自分探しの旅をしなくても自分はここにいるわけですから」(叶恭子さん)
  

Q4. 叶恭子さんにとって幸せとは何でしょうか

A. 幸せはご自身の心の中にあります

「"幸せはお金じゃない”なんて綺麗事は言いません。でも、全ての幸せがそこにあるわけではありません」

"幸せ"という言葉と同様に、結び付いて言われることの多い”お金”というワード。恭子さんは単純に金銭に縛られることが不幸な訳ではなく「幸せはお金にもある」と語っていました。企業のトップを例に取り、「何か従業員にしてあげたいことがあったら、”お金があればこれができるのに” と考えることはないのか」と叶恭子さんは問いかけました。

「お金が全てではありません。でもお金は大切です。男性だったら女性がショーウィンドウに並んだティファニーを "素敵だな" と言ったら買ってあげたくもなるでしょう。“幸せはお金じゃない”なんて綺麗事は言いません。ただ、ティファニーが幸せがどうかを考えると、確かに一瞬は2人ともハッピーでしょう。でも、1ヵ月後、2ヵ月後はわかりません。全ての幸せがそこにあるわけではありません。一瞬の幸せがそこにあるのです」(叶恭子さん)

そう、叶恭子さんは明言します。

また、「夕日が綺麗なんだと思うことが幸せかもしれませんし、ティファニーやブルガリで "なんて綺麗なんだろう" と思って、それを腕にはめて帰るというも幸せかもしれません」と恭子さんは冗談めかしていいましたが、間髪いれず「ただ、世の中の女性はダイヤモンドが好きです」と口にして会場を沸かせました。
  

Q5.自分自身を輝かせるにはどうしたらいい?

A. そう他人に問うことを捨てた方がいい

ビジネスパーソンに向けての「自分自身を輝かせるにはどうしたらいいのか?」という質問に対し、恭子さんは以下のように答えました。

「まず、今のご質問自体を捨てた方がいいと思います。自身を輝かせるにはどうしたらいいかと人に尋ねることがもうダメです」

それに対して恭子さんは、「もちろん、これは半分ジョークですが」と前置きした上で、それほどまでに ”自身を輝かせるにはどうするべきか” 自分の中で試行錯誤するパッションがない際は輝きが出ません。

「ダイヤモンドでもそうですが、何回も磨かなくてはいけません。もとは黒い原石で、皆さんもブラッシュアップすることを諦めないで継続してほしいです。ダイヤモンドをスクエアカットなのか、ラウンドカットなのか、はたまたどうするべきなのか……それすらもご自身が見付け出すことです」(叶恭子さん)

とても丁寧な一瞬一瞬の選択が積み重なったことが将来になるのだと、恭子さんは口にしていました。
  

まとめ

一見自由に生きているように見える叶姉妹のお二人。けれど、その奥には自分のとった選択肢に対する確固たる覚悟がありました。

仕事や家庭など、人生を歩む中で数多くの判断を重ねる必要があるビジネスパーソンこそ*「自分の選択肢を自分で選ぶ自由と責任」*を感じなくてはならないのかもしれません。

最後に叶恭子さんは、会場のビジネスパーソンに対して以下のように問いかけました。

「明日どうなるかわからない不透明な世の中こそ、ご自身が透明でいる。それが自分自身を輝かせるコツだと私は思います」

それこそ、叶姉妹のお二人の考え方であり、人生を生きるコツなのです。