前回までの記事では、主にソーシャルメディア運用においてのポジショニングの重要性と、具体的な戦略に関してお伝えしてきました。

ポジショニング分析はマーケティングの出発点で、重要な点は出発地点からいかにオリジナルの方向性を見出して、独自のブランドを作り上げられるかという部分にあります。そこで次に考えるべきなのが「コンセプトメイキング」です。

ブランド戦略のコンセプトメイキングはマーケティングにおいて非常に重要な要素でありながら、整理して考える事は簡単な事ではありません。

今回は、「Will」「Can」「Must」と呼ばれるキャリア形成でよく使われる考え方を参考にコンセプトメイキングに関して紹介します。

▼前回の記事はこちら▼
コンセプトメイキングが鍵を握る! - ソーシャルメディアの自身のポジション分析 –|ferret [フェレット]

なぜコンセプトメイキングは重要なのか

始めになぜコンセプトメイキング大切なのかについてお話します。

それは、 「いくらポジション分析が優秀で優れたものだったとしても、そこから独自性を見出して上手く表現できなければ、ただのリサーチとして終わってしまう」からです。

例えば、マーケティングリサーチは数字としても非常に有益なものが上がるものの、数字や分析結果から戦略を上手く見出すことができないといった事態に陥る企業もあるかもしれません。

では、どうすれば分析結果を上手く戦略に落として込めるのでしょうか?

重要なキーワードとして、「自分たちが提供できる価値を、他者のそれとは別のポジションで表現する」という事が挙げられます。

ここでは、自分たちの価値をわかりやすく伝えて、実際にその価値をユーザーが理解し、アクションを起こしたくなる事が条件となります。

そのため、いくら自分達が良いものだと思った商品やサービスでも、その価値が適切に伝わっていなければ、商材そのものに本当に価値があったとしても、顧客が理解できていないという事になります。

わかりやすい例が、米Apple社(以下、Apple)の「iPhone」です。今までにインターネットに接続できる携帯電話はいくつも存在しました。iPhoneは、その他の携帯電話同様にインターネットに接続できる価値を持っていますが、機能や外観含めたデザインという価値を持っています。そういった、価値を消費者に伝えることで、幅広くブランドを伝えていくことができます。

加えて、コンセプトメイキングには下準備が必要です。Appleの場合はMusicを起点としたiPodを先にマーケットに浸透させる事で、先にポジションを作り、その後より単価の高い商品を提案するブランド戦略を取っています。

Will・Can・Mustを用いたコンセプトメイキングとは?

今回は、先に紹介したiPhoneを例にとって、Will・Can・Mustを用いたコンセプトメイキングを考えてみたいと思います。

まず、Will, Can, Mustとは何かというと、社会(この場合はマーケット)に対して、求められているものをいかに提供していくのかという考え方の一つです。

ここでいうWillとは、私達が実際に実現したいものを指し、Canはその実現したいものの中で実現可能性のあるもの、そしてMustというのは社会から求められているものとしてここでは捉えるようにします。

このように、社会全体に対して提供できる価値を分解してみて考える事で自ずとどのようなコンセプトを作っていく必要があるのかが明確になります。コンセプトが明確になると、実際にロードマップの作成につながり、さらに具体的な戦略に落とし込んでいく事ができるようになるのです。

Will:自社として新しいプラットフォームを作り社会に浸透させていきたい

Can:すでにOEM先等の目処は立っておりプロダクト開発の土壌は準備ができている状態。今後は自社の資産を活用して、新しいものを作る事ができる状況

Must:社会全体としてインターネットが徐々にインフラになりつつある一方、大衆がネットに接続できる必要が今後出てくる

3つの要素の中心点をコンセプトとして表現する

あくまで例として取り上げているので仮定で各項目を割り振っていますが、フレームワーク化する方法として上記の例のように分類する事ができると考えます。

これに加えて、今までに紹介して来たポジショニング戦略の話を加えることによってより具体的に自社、もしくは自分自身の提供するべきサービスを分解して考える事ができるようになります。

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ポイントとなるのは図の中心点となる3つの要素が重なる部分を明確にする事です。この3つの要素が重なって始めてコンセプト自体が社会に受け入れられるようになります。

考え方として、いかにこの3つの要素を組み合わせて、どこが中心点になり得るかを的確に捉えて、その点をコンセプトとして表現していく事が求められます。

特にMustやCanという要素は時代や、社会の変化によって状況が大きく異なります。例えば、インターネットが誕生して初期の頃は基本的なプログラミングの作業ができればCanの部分で大きなアドバンテージを得る事ができたのではないかと思います。

しかし、フリーソフトの誕生や同じ、もしくはそれ以上のエンジニアの人の数が増えていけばいくほど、自分達ができたこと(Can)の価値というのが相対的に小さくなっていきます。

Mustに関しても同様で、自身と同じ価値を提供できるプレイヤーが増えれば増えるほど、社会からの自分達ができることへのニーズは減っていき、それに伴ってさらに競争が激しくなります。

WillとCanだけでなく、自分が目指す「Will」も必要

このようにWill、Can、Mustというのは常に固定された状態ではなく、常に変化し続けていく状態として理解をする必要があります。

良い側面として、競争が生まれることによって、サービスの質や価値が全体として上がっていく事が挙げられますが、マーケットによっては少数のプレイヤーしか生き残れないような厳しい状況になっていく可能性も大いに考えられます。

そのため、常に全体のMustを意識しながら、合わせて自身、または自社のポジショニングを理解し、それに合わせたCanを提供できるような環境作りを行なっていく必要があります。

その中で忘れてはならないのが、Willの存在です。

特に自分でプロジェクトを起こす際にMustとCanだけでは上手く回らなくなる事もあります。自分達のやりたい事(Will)が上手く全体の要求にフィットしているという事が大切だからです。

市場を分析して、ポジショニングを考え、適切にブランドコンセプトを作り上げていく事は大切なのです。

それだけでなく、そのプロジェクト自体を自分達が何故やりたいのか、なぜ自分達ではなければいけないのかを考えていく事も大切と言えるでしょう。

まとめ

今回はWill、Can、Mustを用いたコンセプトメイキングに関して紹介しました。

戦略を作っていく上で方法論を語ることは重要なのですが、それ以上にWillの部分である「なぜそれをやりたいのか、やるべきなのか」を実際に言語化していくことが大切です。

この話は“マーケティングの基本書”で触れられる事は多くは無いでしょう。しかし、実際に戦略を実行する上では非常に重要な観点です。

是非コンセプトメイキングに関して考える際に、何故それをやるべきなのかを一度考えてもらえると嬉しいです。