「新しいツールを導入したにも関わらず、生産性が思ったほど上がっていない…」

そのように感じた経験はありませんか?

実は、情報技術に関する投資と生産性の関係については、1970年代から研究対象として盛んに研究されており、今では*「生産性パラドックス」*として知られています。働き方改革が叫ばれる中で、「生産性」は誰もが一度は考えておきたテーマです。

そこで今回は、「生産性パラドックス」とは何かを解説しながら、生産性を妨げる要因と生産性に役立つアプリ&サービス3選をご紹介いたします。

「生産性パラドックス」とは?

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生産性パラドックス(Productivity Paradox)は別名ソローのコンピュータ・パラドックス(Solow Computer Paradox)とも言われ、情報技術に投資をしても、生産性が上がるどころかむしろ伸び悩んでいる状況を指します。

実際、マッキンゼーの調査でも、巨額の投資をテクノロジー分野に投じているにもかかわらず、2004年以降のアメリカ合衆国内での生産性は急激に低下している、といいます。

世界規模では、テクノロジー投資に総額3兆ドル(およそ320兆円)を、2018年前半に史上初めて突破すると言われているなかで、このような逆説が指摘されると、経営者やプロジェクトマネジャーとしては、*「本当に投資をして効果があるのだろうか?」*と疑問に思われるでしょう。

AI(人工知能)や機械学習(マシーン・ラーニング)の発展によって、人間だけでなく機械と一緒に働く労働環境が指摘される中で、本当に機械との協業が生産を上げるのか、ということは再考の余地があります。

また、近年国内でも「働き方改革」が声高に叫ばれており、*「少ない労働時間で最大の効果を出す」(Work Less, Achieve More)*にはどうすればいいかについても考える必要があるでしょう。

参考:New insights into the slowdown in US productivity growth | McKinsey & Company

「生産性パラドックス」が起こってしまう3つの要因

いくら情報技術に巨額を投じても、それが正しい使い方をされなければ、生産性は上がるどころか低下してしまう恐れがあります。

「生産性パラドックス」が起こってしまう原因は諸説ありますが、ここでは生産性パラドックスが起こる原因のうち主要かつ重要なものを取り上げていきます。

1. 業務に適切なデバイスやアプリケーションを使用できていない

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Forrester Researchによれば、情報関連の仕事をしている人々の10人中6人はPCかスマートフォンを所有している一方で、基本的なアプリ以外に業務に適しているものをインストールして使っている割合がかなり低いことがわかっています。

例えば、財務担当者が「Microsoft Excel」を使って情報処理を行うよりも、専用ソフトを使ったほうが業務がスムーズな場合もありますが、現実にはそうなっていることは多くないということが伺えます。

経営者やプロジェクトマネジャーとして難しいのは、どのツールを使った方がよいのか分からなくなってしまうということです。これまで抱えていた課題を解決するために、新興テクノロジーが次々と生み出されています。

例えば、ビジネスチャットで言えば国産ツールChatWorkWantedly Chat、海外製ならSlackGoogle Hangoutsなどがありますが、比較検討せずに使ってしまうと、他のツールを使う場合に比べて生産性が低くなってしまう、ということも起こりうるでしょう。

参考:Augmenting employee performance with AI and other technologies | ZDNet

2. 人間の集中力を無視した業務環境になっている

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機械であれば、1時間あたりの生産性は基本的に同じだと考えることができます。5時間でも15時間でも、1時間あたりに同じ量を生産することができるでしょう。

ところが、人間は機械ではないので、人間がコンピュータやモバイル端末を操作している場合、1時間あたりの生産量はバラバラになってしまいます。生産性を高めるために必要なエネルギーも、意思も、集中力も、始業時間直後にはみなぎっていたかもしれませんが、終業時刻間際にはゼロに近くなっているかもしれません。

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Niel Salzgeber

ライフハック技術に詳しいニルス・ザルツゲーバー氏によれば、1日に12時間働く「ハッスル・スケジュール」よりも、1日8時間、休憩をしっかりと挟んで集中したほうが、結果的にアウトプット量が増えると言います。労働時間を少なくする代わりに、よく眠り、瞑想を挟み、短い昼寝(ナップ)と運動、そしてできるだけ多くの休憩を挟むことを推奨しています。

3. 意思決定プロセスが煩雑

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もう一つ、情報技術に投資をしても生産性が上がらない原因として、意思決定プロセスの煩雑さが挙げられます。

例えば、チャットツールで活発な意見交換を交わしていても、タスクの最終決定を誰が行うのか明確でなかったり、複数の上司に稟議を通さなければいけない場合には、部下が最終的なタスクをこなすまでに時間がかかってしまいます。どれだけ使いやすいツールを使っていても、このような構造上の問題があれば、生産性はむしろ上がるどころか低迷してしまうのです。

適切なツールを選ぶだけでなく、社内の意思決定プロセスを見直し、生産性低下につながる点がないかを再チェックしてみましょう。