NPOには、活動資金を集めるための資金調達「ファンドレイジング」が欠かせません。事業で収入を得るNPOも存在しますが、それでも寄付を集めるという活動はNPOと切っても切れないものです。

ファンドレイジングを実施する上で、マーケティングの手法や考え方が参考になるケースは多々あります。

今回は、「カスタマージャーニー」というマーケティングの考え方をファンドレイジングに応用した、「ドナージャーニー」について紹介していきます。

NPOの資金調達「ファンドレイジング」とは

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NPOが活動のための資金を個人、法人、政府などから調達することを「ファンドレイジング」と呼びます。普段からNPOに対する人々の関心を高め、寄付や支援を必要とするNPOと引き合わせるような存在は、「ファンドレイザー」と呼ばれます。

ファンドレイジングを行う上で、必要になってくるのはWebの活用です。例えば、Webを使ったファンドレイジングの方法には、Googleに無償で広告を掲載できる「Google Ad Grants」を利用した寄付の募集や、Facebook広告を活用した寄付の募集などがあります。

Webの広告を活用して寄付を募集する手法もありますが、情報発信により認知を獲得し、フォロワーを増やして寄付者を募集する手法もファンドレイジングにおいて注目です。また、オフラインのイベントをきっかけに寄付を始めることもあります。

寄付者との接点は多様であり、様々な人がそれぞれの理由で寄付を検討します。寄付を募集するNPOは、効率よくファンドレイジングを行うために、どんな人とどこで接点を持ち、どうなってもらいたいのかを整理する必要があるでしょう。

ファンドレイジングにも活きる「カスタマージャーニー」とは

ファンドレイジングを行う上でヒントとなるのが、マーケティングでも注目されている「カスタマージャーニー」という手法です。

カスタマージャーニーはペルソナの動きを可視化し、ペルソナが必要としている情報を、タッチポイントのすべてにおいて適切なタイミングで提供するための設計図です。ペルソナとは、商品・サービスを利用する顧客の中で最も重要な人物モデルのことを指します。

マーケティングではカスタマージャーニーを作成することで、ペルソナが自社の商品やサービスを購入するまでに、どのような接点でどのような体験をしてもらうかを整理できます。

参考:
カスタマージャーニーマップとは〜作成するために最低限知っておきたい基礎知識と活用事例

カスタマージャーニーは基本的に営利企業が商品やサービスを顧客に届けるための手法ですが、このカスタマージャーニーをファンドレイジングに応用したのが「ドナージャーニー」です。

寄付者への働きかけを設計する「ドナージャーニー」

ドナージャーニーは、ファンドレイジングにおいて「カスタマージャーニー」を応用して、寄付者が寄付に至るまでの行動や心理を分析して、潜在的支援者に対する最適な働きかけをしていこうという考え方です。

ドナージャーニーを考えるプロセスは、カスタマージャーニーを考えるプロセスにならって、下記のように進んでいきます。

  • ペルソナの設定
  • フェーズの設定
  • フェーズごとの接点を考える
  • フェーズごとのペルソナの行動を考える
  • フェーズごとにペルソナが考えていることを考える
  • 課題の洗い出し
  • 課題を解決するための施策を立てる
  • マップに整理する

具体的な作成のプロセスについては、下記の記事が詳しいので、ぜひ参考にしてみてください。

参考:
「ドナージャーニー」という考えかた | ファンドレイジング・ラボ

ドナージャーニーを考えることで、寄付者のことを考え、自団体が実施している動きを整理できます。

筆者が理事を務めているNPOでも、スタッフがドナージャーニーを考える時間を設けたことで、自分たちがどういった人たちにどう寄付を働きかけるのかについての共通認識が形成されました。

施策が整理されるのみならず、ファンドレイジングに関わるメンバーの認識が揃い、ファンドレイジングが自分ごと化されるという点も、ドナージャーニーの良い点です。

まとめ

スマートフォンやSNSが普及したことで、人々の行動や情報摂取の仕方が多様化しました。それにより、企業も複雑な顧客の行動に対応するためにカスタマージャーニーを考える必要が出てきています。

人々の行動や興味関心が多様化しているという状況は、NPOにとっても変わりません。その中で、どのように活動に関心をもってもらい、寄付をしてもらうのか。それを考え、実践していく必要があります。

今回紹介したドナージャーニーは、ファンドレイジングを考えていく上で参考になる手法です。ファンドレイジングに取り組むNPOの方はぜひ参考にしてみてください。