最近「働き方改革」のもと「ノー残業デー」「テレワーク・デイ」などが注目されています。

2017年7月24日に政府の掛け声で実施された「テレワーク・デイ」は、より馴染みのある言葉に置き換えると「リモートワーク」のことです。これは、2020年に開催される東京五輪の開催時に交通混雑などを回避するためのリモートワークを、今のうちから始めておこう、という主旨により実施されました。

このように、政府をあげて推奨されはじめているリモートワークを実施するには、「遠隔コミュニケーション」が必須です。そこには、どのようなメリット・懸念点があるのでしょうか。

今回は、遠隔コミュニケーションを円滑に進めるために知っておくべきメリット・懸念点とともに、意識したいポイント、シチュエーション別のおすすめツールをまとめました。

遠隔コミュニケーションのメリットと懸念点

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遠隔コミュニケーションのメリット

1.企業のコスト削減

遠隔でもコミュニケーションを取れるようになると、企業の物理的なリソースが節約されます。

例えば、社内の備品や会議室など全員分必要だったものが一部削減されることで、より投資すべきことに注力した投資が実現できます。

2.従業員のコスト削減

遠隔コミュニケーションにより、従業員は必ずしも会社で仕事をする必要がなくなります。

会社への出退勤時間と通勤コストが削減に加え、各々の家庭の事情に合わせて柔軟に勤務時間の変更も可能です。

3.多くの地域から優秀な人材を確保できる

遠隔コミュニケーションを企業に取り入れると、住んでいる場所にかかわらず人材を登用できるようになります。

一部地域に住んでいる出勤が可能な社員よりも、企業の求める能力を有している遠隔の社員を登用した方が、企業の成長率アップが期待できるでしょう。

遠隔コミュニケーションの懸念点

1.コミュニケーションの速度が遅くなる

遠隔コミュニケーションの大きな懸念点のひとつとして、コミュニケーションの速度の低下が挙げられます。

遠隔コミュニケーションの場合、近くにいれば口頭確認で済むような事柄に関しても、メールやチャットツールを使ったコミュニケーションがメインになります。そのため、メールやチャットに気が付かなかった場合、コミュニケーションの速度が低下してしまいます。

速度を維持したコミュニケーションを取りたい場合は、チャット対応時間をあらかじめお互いに決めておく、ビデオミーティングや電話に切り替えるなどの対策が必要です。

2.コミュニティに知識や経験が蓄積されにくい

意外と気づきにくいポイントですが、遠隔コミュニケーションの懸念点として、コミュニティに知識や経験が蓄積されにくくなることも挙げられます。顔を合わせていれば無意識にやっているような、「今日はユーザーに対してこのような対応をしたらうまくいった」「〇〇のような失敗にたいしてはこうした方がよかった」など、ささいなコミュニケーションが発生しづらくなるからです。

これは、共有の時間を意識的に設ける、日々の進捗や業務内容などの簡単な日報を専用チャットに投稿するなどの対策を意識的に行えば解決できます。

3.仕事の進捗を確認しづらい

常にチャット上でメッセージのやり取りをしている場合を除き、基本的には業務進捗を確認しづらいことも懸念点として挙げられます。「進捗がわからないまま期限が近づき、結果として業務が終わらなかった」となってはリモートワークは成り立ちません。

解決策としては、チャットなどでこまめに連絡を取ることや、Google Calendarなどのカレンダーツールを使用して、メッセージをしなくても進捗を確認できるようにすることが考えられます。

カレンダーを見ればお互いの進捗状況を把握できる仕組み作りをする、3日程度に1度と短いスパンで定期的に進捗確認をする時間を設けるなど、仕組み化してしまうのがおすすめです。

遠隔コミュニケーションを円滑に進める4つのポイント

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1.定期的に対面でのコミュニケーションをする

出社してでもビデオチャットでも構いませんが、定期的に顔を合わせてコミュニケーションをしましょう。
お互いに顔を合わせてコミュニケーションをとる場を設ければ、テキストのみのコミュニケーションよりも思考のすり合わせがしやすくなります。たとえ働いている場所が異なっていても同じ方向を見て業務に邁進できるでしょう。

また、顔を合わせてコミュニケーションすることは、お互いの信頼関係を強固にすることにも一役買ってくれます。顔が見えない相手とやり取りに比べて、お互いに顔を知っている相手とのやり取りには非言語的コミュニケーションがとれるため、より親密度が高まるからです。

参考:
Rubin, Z. (1970). Measurement of romantic love. Journal of personality and social psychology, 16(2), 265.

2.わかりやすいメッセージを心がける

テキストでのコミュニケーションは、対面で話すときに比べて内容が正確に伝わりづらい場合があります。

例えば、対面であれば「さっきの話だけど〜〜」で伝わるようなことであっても、テキストのみのコミュニケーションだとどの事象を指しているのかわかりにくいでしょう。

テキストを整理したりリマインドや引用機能を活用したりなどで、相手に伝わりやすいメッセージを送るように心がけてみましょう。

3.少しでも不明な点があれば確認を

わかりやすいメッセージを心がけたとしても、常に正確に伝わるとは限りません。勘違いをしたまま進めてしまうリスクを防ぐために、「懸念点はすぐに確認すること」が重要です。

少しでも懸念点があるときは、躊躇なく必ず確認作業を行いましょう。

4.明るい言い回しを心がける

テキストでのコミュニケーションは、どうしても冷たく淡白な印象を与えがちです。ただ必要な情報を伝えているだけだと相手が圧迫感や不安を感じてしまう場合もあります。

最も避けるべきことは、それによりメッセージを誤解して受け取られることです。

コミュニケーションする相手にもよりますが、「!」や絵文字、顔文字などを利用してコミュニケーションに温かさを加えてみるのもひとつの手でしょう。

シチュエーション別におすすめのコミュニケーションツール

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現在リモートワークが徐々に浸透しつつあるため、様々なコミュニケーションツールが存在します。

ただしすべてのケースにおいて万能に使えるというわけではなく、それぞれに強みと弱みがありますので、ケースに応じてどのようなコミュニケーションツールを使うべきか検討してみましょう。

業務連絡用ツール

日々の業務連絡やチャット上でのミーティング、比較的小さいサイズのファイルのやり取りなどであれば、ChatWorkやSlack、LINE、Facebookメッセンジャーなど、普段から使用しているチャットツールを使用しましょう。

基本的にはどのツールを使用しても問題ありませんが、企業で一括導入している場合もあるため、どの手段が最適かあらかじめ聞いておくとよいでしょう。場合によっては、コミュニケーションを取る相手に合わせて使い分けも必要になります。

ChatWork
Slack
LINE

会議用ツール

多くの言葉が飛び交いコミュニケーションが最も活発に行われる会議の場では、できる限り対面に近いコミュニケーションを成立させることが重要です。

なるべく顔が見えていて、リアルタイム性が高いツールを選びましょう。

おすすめなのは、Skype、Zoom、Googleハングアウト、Appear.inなどのビデオチャットツールです。
相手の顔が見えるコミュニケーションツールを使うと、ほぼ対面のコミュニケーションと同等の質を確保できます。

Skype
Zoom
Appear.in
Google ハングアウト

ノートやメモ、ファイルの共有用ツール

アイデアメモや作成したノート、ファイルなどを共有する際は、共有したノートやファイルをいかに見やすく整えられるかやタイムレスに共有できるかが重要なポイントです。

その点でおすすめなのが、EvernoteやGoogleドライブ、Dropboxです。
Evernoteは、ノートブックやタグなどの分類方法を使い、まるで紙のノートのようにメモや議事録を取れるツールです。作成したノートはURLを発行して簡単に共有できます。
GoogleドライブやDropboxは、タイムレスな共有に加え、オフラインでも確認できたり整理して管理できたりする点も非常に便利です。

Evernote
Google ドライブ
Dropbox

雑談用ツール

新たなアイデアの想起、ストレスの軽減など、リモートワークにおける雑談の重要さは再認識されるようになっています。しかし、その雑談を業務用のコミュニケーションツールでしてしまうと、公私の切り替えがうまくいかず、業務に支障をきたす恐れがあります。

そこで、雑談をする際は、グループやスレッド、ツールを分けてみましょう。Remotty、Sococoなど、雑談に特化したツールを活用すると、小さなことでも気軽にメッセージを送りやすくなります。また、LINEやChatWork、Slackなどのグループで雑談専用のグループを作る手法もおすすめです。ビジネス以外のことでも、気軽に会話ができるでしょう。

Remotty
Sococo

まとめ:リスクも理解した上でリモートワークの検討をしよう

遠隔コミュニケーションを企業に取り入れると、コスト削減・リソース確保と、企業の成長を後押しする強力な武器となります。

しかし、出社してお互いが目の前にいる状態で業務を行う際とは異なるため、コミュニケーションの点で懸念点もあります。対面よりも意思疎通が難しくなることを前提として、コミュニケーション不足にならないような工夫が必要となるでしょう。

加えて、リモートワーカーには自制心も求められます。「まだ期限まであるから今日はいいか」「出社する必要がないからお昼すぎまで寝ていた」など、業務に影響が出かねない行動をしてしまうのであれば、リモートワークには不向きです。

メリットばかりに注目せず、起こりうるリスクを理解した上で、リモートワークを検討してみましょう。