Twitter拡散の効果とデメリット

これらの救助要請に関するツイートのうち、どれだけが実際に消防や警察に届き、どれだけの効果をあげたのかについての分析はまだこれからということになると思います。とはいえ中には、Twitterで拡散されたおかげで命が救われた例もあります。

倉敷市真備町では、80代の祖父母の住む家が水没しかかっているという救助要請ツイートが拡散されることによって、実際にボートの救援を受けられたそうです。「祖父母の命を救うことができた」とツイートを投稿したユーザーはお礼を述べています。

一方で、2017年7月の北九州北部豪雨では、朝日新聞デジタルが記事中に「#救助」と入れたまま記事を配信したことがあります。これが大量にリツイートされることにより、救助タグが埋もれる事態になってしまいました。当時は、「災害時にメディアが混乱させてる」と問題視する声が上がっています。このような事態を避けるため、NHK生活・防災公式アカウントは、あえて「ハッシュタグ シャープ救助」と表記し混乱を避けたことで称賛を受けました。

「#救助」や「#救助要請」は、人命に関わる緊急性の高いツイートにつけられることがあります。場合によっては、生死の明暗を分けることもあるでしょう。投稿には慎重になるべきですが、正しく拡散されれば通報に繋がる可能性もあります。

さらに救命要請ツイートで問題となるのは、大量にリツイートされた同じ場所の「#救助要請ツイート」を見た人たちが、一斉に警察や消防に電話で重複して通報してしまう可能性です。それでなくてもパンク状態にある救援を求める通報を、ツイートを閲覧した人たちの通報で妨害してしまうことも考えられます。

多い場合は9,000回以上のリツイートされている救助要請ツイートを、一定数の人たちが実際に緊急要請を電話でしたとすれば、かなりの数の通報が行われたことになるでしょう。投稿も通行も善意からの行動かもしれませんが、当該の地域や他地域の救助活動を妨げる可能性も否定できません。

救命要請ツイートは投稿するときも、それを拡散する人々も「そのツイートは事実かどうか」「むやみやたらと通報していないか」など注意を払う必要があるでしょう。

Twitterライフラインの試み

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引用:Twitterライフライン(@TwitterLifeline)さん | Twitter

Twitterでは、 救援要請ツイートが適切に拡散されるよう、Twitterライフラインアカウントでは上記のような呼びかけをしています。

同時に、

「Twitterで緊急救助を求める場合には、#救助 ハッシュタグとともに要請内容、写真、住所または位置情報など、具体的かつ正確な情報をつけましょう。救助が完了したら、報告ツイートするとともに、救助要請ツイートを削除してください」

とも呼びかけています。

これはTwitter社が推奨する救助の呼びかけのフォーマットだということです。こうした教訓を学びながら、救助要請ツイートの拡散に関して配慮する取り組みは、効果的な緊急ツイートの拡散と実質的な効果を生むために、今後ますます必要になるでしょう。