ECサイトの立ち上げや刷新を任されたものの、稟議のための書類作成が難しく感じている方もいるのではないでしょうか。

説得力のある書類を作るための情報整理は、稟議を通すためだけでなく、その後のスムーズなECサイト構築・運用にも役立ちます。

この記事では、ECサイトに関する稟議書を作るためのポイントや、EC事業にかかるコストなどについて解説します。

目次

  1. EC立ち上げ・刷新の稟議書に含めるべき情報
  2. EC立ち上げ・刷新にかかる主な初期コスト
  3. EC立ち上げ・刷新で失敗しないための注意点

EC立ち上げ・刷新の稟議書に含めるべき情報

ECに関する稟議書を作るには、「なぜECの立ち上げ・刷新をするのか」といった前提となる問題意識や、「どのECカートを導入するべきか」といった判断基準に関する情報が必要です。

その上で、収益計画やスケジュールなどを記載することで説得力が高まります。マクロ視点からミクロ視点へと、より具体的な情報を記載していくことが稟議書作成のコツです。

ここでは、稟議書に含めるべき情報について解説します。

なぜEC構築が必要なのか

ECの立ち上げや刷新が必要な理由は、企業の状況によって様々です。例えば「実店舗での売上が減少傾向で、新たな販路を開拓する必要がある」や「売上規模が拡大して現状のECサイトでは対応できなくなってきた」などの状況が考えられます。

稟議書の始めに、自社の課題をECによって解決できることを示す資料を含めましょう。用意するべき主な資料は次の通りです。

ターゲット分析

ターゲット分析の資料では、ECで獲得したいユーザーの年齢や趣向、購買傾向などのペルソナを設定します。ユーザーが自社を認知してから購入するまでの心理や行動の変化を表すカスタマージャーニーマップも、ターゲット分析の資料として効果的です。

自社・競合分析

直接的な競合になる他社のEC状況や、自社の強みなどを分析します。自社を取り巻く環境についてリサーチし、優位に立てるポジショニングを整理しましょう。

KBF

KBF(重要購買決定要因)とは、顧客が自社のECで商品を購入してくれる理由のことです。商品の機能やデザイン、コストパフォーマンスの高さなどがKBFとして考えられます。

これらの資料により、EC構築や刷新の必要性を伝えることが可能です。

なぜそのECカートにすべきなのか

次に、導入予定のECカートについての情報を記載します。自社の目的や課題をもとに必要な機能などを洗い出し、ECカートの選定理由を示しましょう。

ECカートの導入時に比較すべき主な項目は次の通りです。

・機能
・費用
・サポート内容
・制作支援の有無
・メリット/デメリット

いくつかのECカートを候補として、上記の項目を記載した比較表を作ると、導入予定のECカートを選ぶべき理由を明確化できます。

収益計画およびリスク対策

ECの立ち上げや刷新で見込まれる収益や、対策すべきリスクについての情報も、稟議書に必須の項目です。

収益計画には、目標数値や必要なコストを記載します。売上利益率ECサイトへのアクセス数などの目標数値を、数年先まで見据えて具体的に設定することがポイントです。

対策するべきリスクとしては、情報流出不正購入などのトラブル、集客施策が計画通りに進まないことなどが挙げられます。ECのセキュリティ対策やトラブルを防止するためのルール作り、専門業者への外部委託などの解決策を検討しましょう。

スケジュールとTODOのリスト

最後に、スケジュールとTODOのリストを記載します。いつまでに何を実施するべきか、担当者は誰かなどを明確にすることで、事業の見通しが立ちます。

ECサイトの画面設定や商品情報の登録、システム刷新時のデータ移行などは作業量が多く、遅延が発生しやすいタスクです。余裕のあるスケジュールを計画しましょう。

EC立ち上げ・刷新にかかる主な初期コスト

ECサイトの立ち上げや刷新には、システム開発にかかる費用やデザイン費用、各種ツールの導入費用など様々な初期コストがかかります。収益計画を作るために、コストが発生するポイントを漏れなく把握しておくことが重要です。

ここでは、ECの立ち上げ・刷新にかかる初期コストについて解説します。

ECシステム開発費用

ECサイトの構築にかかる費用です。多くのECシステムでは標準機能の他に、有料のオプション機能が用意されています。標準機能でできることオプション料金の設定について確認し、システム開発費用を把握しましょう。ECシステムを刷新する際は、旧サイトから新サイトへのデータ移行費用が発生することもあります。

ECシステム開発費用は、ECサイトの公開前に請求される場合もあります。請求タイミングはベンダーによって異なるため、検討段階で確認しておきましょう。

デザイン費用

商品写真の撮影画像加工、ECサイトの画面デザインなどにかかる費用です。バナー画像などサイトの見た目を作るためのデザイン費用と、プログラム言語でサイトを構築するコーディング費用が別料金となっている場合もあります。

また、業者によってはECサイトのロゴマークや段ボールなど梱包物のデザインも依頼することが可能です。見積もりの段階で、何のデザインに対していくらかかるかを細かくチェックしましょう。

マーケティングツール費用

マーケティング施策の自動化データ分析などを行うためのツール導入にかかる費用です。

  • パーソナライゼーションツール
  • ソーシャルメディアツール
  • メール配信ツール
  • MA(マーケティングオートメーション)ツール
  • BI(データ分析)ツール
  • SEOツール

マーケティングツールを活用すると、ECシステムの標準機能ではできないデータ分析や業務効率化に取り組めます。

ただし、ECを立ち上げたばかりで顧客数が少ない段階では、ECシステムの標準機能のみで十分というケースもあります。自社に必要なマーケティングツールを検討した上で、導入にかかる費用を算出しましょう。

決済システム費用

クレジットカード決済代金引換コンビニ払い電子マネーなどの決済サービスを利用するための費用です。

多くの決済システム会社では、決済システム導入時の費用は無料に設定されています。ただし、導入するECシステム側で決済システムとの連携テストなどの費用が計上されることもあるため確認が必要です。

ECサイトの刷新時に決済サービスを変更する場合、クレジットカード情報などの移行費用がかかることもあります。

EC立ち上げ・刷新で失敗しないための注意点

EC事業を軌道に乗せるためには、ECサイトの立ち上げ・刷新後にかかるランニングコストを考慮することや、自社に合ったシステム選びなどが重要です。ここでは、ECの立ち上げや刷新で注意すべきポイントについて解説します。

ランニングコストも考慮して予算を決める

ECのランニングコストとして、次のようなものが挙げられます。

・ECシステムの利用料金
ドメイン、サーバーなどのインフラ維持コスト
・集客にかかる広告
・クレジットカード決済の手数料

初期費用だけでなく、月々発生する費用も考慮して収益計画を作ることが重要です。

ECシステムによっては、注文数やアクセス数などに応じた従量課金が設定されている場合もあります。事業規模の拡大でランニングコストが増えることも視野に入れて、予算を割り出しましょう。

自社の目的に合ったシステム・サービスを選ぶ

ECシステムやマーケティングツール、サービスなどには様々な種類があります。ECサイト立ち上げ後に機能不足で運営が滞ったり、オーバースペックなシステムによりコストがかさんだりしないように、自社に合ったものを選ぶことが大切です。

目指す事業規模や扱う商品点数実現したい販売方法などを踏まえて、ECシステムやサービスを検討しましょう。

専門業者のサポートを活用する

ECシステムやマーケティングツールは、機能だけでなくベンダーによるサポート体制にも違いがあります。サポート体制の充実したシステムやツールを選ぶことで、専門業者によるサポートを受けながらECの立ち上げ・刷新が可能です。

特に、ECの立ち上げや刷新を初めて行う場合は、経験豊富なプロのアドバイスを受けることで成功しやすくなります。ECベンダーのほか、広告運用発送代行電話代行など、専門業者のサポートを活用しましょう。

計画を立ててEC立ち上げ・刷新を成功させよう

ECの立ち上げや刷新のための稟議書には、ECカートの選定や収益計画、スケジュールなどの情報を含める必要があります。ECにかかる費用には開発費やデザイン費などの初期コストだけでなく、月額利用料などのランニングコストもあるため、正確に把握しておくことが大切です。