現実のスポーツイベントでもバーチャル広告が

メタバース上だけではなく、現実の世界にもバーチャル広告が取り入れられている事例もあります。2021年5月7日にはソフトバンク株式会社が「スポーツバーチャル広告」の提供を開始しました。これはスポーツの試合中継映像に、実際の会場には掲示されていない広告を掲示できる広告サービスで、B.LEAGUE(Bリーグ)やプロ野球の中継で実際に使われています。

バスケの試合の場合、コート上に4つの広告枠が設定され、配信画面上に広告が表示されます。コート上なので試合中は選手やボールの動きに応じてカメラアングルが激しく変わるような場面がありますが、最先端の技術を駆使し、選手と広告が重ならないよう映像処理が可能です。

また、「シュート直後など注目が集まるタイミングで広告を表示」「コートの地面からキャラが飛び出してくる」など、バーチャルだからこそできる演出も。ロゴや車、ブランドキャラクターをCGで再現する演出など、実物の広告に比べて自由度も高く、より具体的な訴求が可能になります。

プロ野球では福岡ソフトバンクホークス、中日ドラゴンズ、オリックス・バファローズ、千葉ロッテマリーンズがすでに同サービスを導入。Bリーグでも約30を越えるチームが導入しています。

一般的な看板広告よりもバーチャル広告の方が有効?

デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社は、2023年にゲーミングメタバース「Roblox」で、メタバース空間内の広告配信サービスの検証実験を実施しました。実験では日産自動車株式会社と連携し、同社の企業広告を配信。検証結果の発表によると、広告接触者のブランド認知や好感度などが、非接触者に比べて平均5ポイント以上アップしたという結果になりました。

メタバース空間内の広告配信サービスの検証実験
出典:DAC、全世界2億人超が利用するゲーミングメタバース「ROBLOX」で
日本初となる広告配信サービスの効果検証を実施

さらに同実験は、第三者調査機関であるニールセンスポーツジャパン株式会社の「クオリティ・インデックス(QI)スコア」(画面上で広告看板が占める割合や露出位置、1回あたりの秒数、他の広告看板の個数などをもとに算出)という指標でも検証。すると、一般的なサッカー中継の看板広告の平均値と比べた場合に、2~5倍のQIスコアが算出されました。

総務省によると、メタバースの世界市場規模は2021年に4兆2640億円だったものが、2030年には78兆8705億円まで拡大すると予想されています。メタバース市場の拡大に伴い、今後も「バーチャル広告」の需要は高まっていくのではないでしょうか。