お客さま理解への近道は、お客さまに直接聞くこと

ferret:ということは、サービスを使って採用し続けられれば、以前のプランよりメリットが大きいってことですね。

染谷氏:はい。あとは大事だと思ったこととして、出し手(営業)の方は結構気にするんですよ、価格を。だから出し手が不安になって「これ純粋に値上げじゃないの?」とか気にすると思うんですけど、受け手(お客さま)からするとたいして変わらないことが多くあるなと思っています。

これはダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』に書かれているのですが、人間は数字を数字としてちゃんと理解できないんです。10万と20万があった時に、20万って10万の2倍だよねってことを、その大きさでちゃんと理解してなくて、雰囲気で数字を理解してるんです。

実際の値上げ幅をそのまま理解するっていうより、主観的に理解する生き物らしいので、変に気にしすぎず「まずはお客さまに出してみて実験すればいいのでは」って考えたってところはありますね。だから最初の実験では月額20万のプランを作って出したんですよ。

ferret:感覚的にですが、2倍は高いなって思っちゃいます。

染谷氏:そうですね。20万だと全然選ばれなくて。「高すぎでしょ」って結構言われました(笑) プランを並べたときに即断で「月額10万円の成果報酬10%で」って言われてしまったんです。

ferret:他のお客さまに提案しても選ばれなかったのでしょうか。

染谷氏:20万で15社に提案して15敗だったんですね。15戦15敗。全然ダメで(笑)さすがに20万は無理でしょうって話になり、そこから15万に落としたんです。

次は月額15万にして55社にアプローチし、反応してくれたのは30社でした。そして、月額15万を選んだのが23社、月額10万+成果報酬10%を選んだのが7社。約80%が月額15万を選んでくれました。

この実験で分かったのは「値上げって思われるよね」っていうのは、あくまで出し手の懸念であって、お客さまからしたら月額10万+成果報酬10%よりも安く感じてくれるのが分かったって感じですね。

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ferret:プランの設計はもちろんですが、営業担当のコミュニケーションの差も影響しているのではないでしょうか。

染谷氏:営業は当時3人しかいなかったんで全員行ってるのですが、誰が新プランの決定率が高いという傾向もなかったです。15万で普通に決まったから、精緻な実験結果を出す前に、月額15万ならいけるっていう感覚はありました。特に20万が全敗だったので、その差は大きかったですね。

ferret:新規顧客と既存顧客、どちらからアプローチしたのでしょうか?

染谷氏:まず新規顧客で実験しました。月額15万は月額10万+成果報酬10%よりも得って感じてくれる事が分かり、その後、既存顧客の切り替えをしていったって感じですね。

ferret:新規顧客からアプローチをしたということは既存顧客の切り替えの方がリスキーなのでしょうか?

染谷氏:そうですね。価格の実験をするときは新規顧客でまず試して、新規顧客でハマるようだったら既存顧客にも提案していくって流れでやってます。

新規顧客ってフラットな状態なので、判断もフラットになるんです。だからこそ「このサービスはこの価格なんだな」って理解してくれますし、気になる部分は指摘してくれるんですよね。

そこでの経験を元に、今度はよりハードルの高い既存顧客の切り替えの対応にうつります。「こう聞かれたらこう答える」みたいな型ができているはずなので、この順番でやると上手くいきやすいかなって思ってます。