様々な企業がデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいるが、MAツールを導入したはいいものの機能を使いこなせずに挫折してしまったり、現場のオペレーションとの乖離からうまく根付かなかったりと失敗例も多い。

自社に合ったツール選定はもちろん重要であるが、それ以上に重要なのが日々のオペレーションだ。これまでと全く違う動き方を求められる現場の抵抗感をいかに少なくし、スムーズに適応させていくか。歴史の長い組織ほど過去の成功体験に基づく行動パターンが根付いているので、そのハードルは高くなる。

留学情報サイト「留学タイムズ」を提供する株式会社国際教育交流センターは1999年に創立されて以来、世界45ヶ国に5,000校以上の語学学校・教育機関とのネットワークを築き、これまで述べ30,000人以上の留学をサポートしてきた留学エージェント会社である。同社は2019年2月の事業買収を機にこれまでの方法を抜本的に見直し、急速なデジタルシフトを実現し成果を挙げている。

元々は超アナログだったという同社が急速なデジタルシフトを実現できた理由について、代表取締役の平山 大樹氏に話を伺った。

コピー機を捨てるところから始めた、デジタルシフト

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ferret:
平山さんは2019年2月から経営に入られたとのことですが、その時の状況についてお聞かせください。

平山氏:
留学タイムズというサイト自体は20年前からあって、2005年に一度リニューアルをしたもののスマホ最適化もされていませんでした。既存のコンテンツは2,500ページくらいありましたが、それを新しいサーバやCMSに乗せかえることから作業を始めました。土台を整えてから、コンテンツSEOなどに徐々に取り組んでいった上で、MAツールの「SATORI」を導入しました。

SATORIを選定した理由は、個人情報がとれていないユーザーに対して流入キーワードごとに最適化したアプローチを打てる「アンノウンマーケティング」機能が優れていること。ユーザーごとに的確にアプローチを打つことで問い合わせ率が高まり、徐々に現場が忙しくなってきました。

問い合わせ以降のオペレーションは社内のカウンセラーが全て対応していたのですが、増える問い合わせに対してオペレーションが従来どおりのアナログなものだったため、作業が膨らんでしまい本来やるべきカウンセリングに充分な時間を割けなくなってきました。

それまでWebと営業を連動させたフローを経験していないベテランメンバーが多かったため、まずは大胆な変革が必要でした。たとえば社内の打ち合わせや報告など、何でも紙に出力してしまうのでまずはプリンターを撤去することから始めました。また使っているPCもかなり古く、Slackを導入しようとしたらOSが古くて動かないという状態だったためそれらもすべて撤去するなどしました。

思い切ってオペレーションを外注することで、本来の業務に集中

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ferret:
そんな状況からどのようにして軌道に乗せたのでしょうか?

平山氏:
カウンセラーの本来業務であるカウンセリングに集中してもらうため、「CASTER BIZ」を導入してフロー化できる作業は外注することにしました。問い合わせ発生後の一次対応から顧客管理表の入力、そして資料発送の手配までの一連の作業をCASTER BIZに担ってもらうことで、顧客一人ひとりにしっかり向き合える体制に変わっていきました。

それまではカウンセラーの業務時間のうちそうした作業に費やす時間が6割以上だったのが、現在では9割以上をカウンセリングなどの顧客対応に回すことができています。それにより対応スピードが上がるだけでなく、一人の顧客に対して複数の学校を丁寧に案内でき、また案内後のフォローアップまでしっかり行うことで、成約率を4倍に高めることができました。

ferret:
CASTER BIZ導入で、パフォーマンスの向上以外に変化したことはありましたか?

平山氏:
仕事そのものへの捉え方が変わってきていると感じます。これまでは問い合わせ後の作業も含めて「仕事」だという意識が強かったのですが、今では各メンバーが自然と「本来自分がやるべき仕事」は何かということを考えられるようになってきました。

ferret:
「自分のやるべき仕事は何か考えよう」という掛け声だけではなかなかそこまで到達しないように思います。

平山氏:
そうですね。CASTER BIZというサービスを導入することで「そんなことまで頼めるんだ」ということを肌で体感できたのが大きいです。今では自発的に「これ、キャスターさんに依頼できないですかね」と相談が出るのが当たり前になってきています。

これからの展望について

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ferret:
既に問い合わせ数が過去の10倍、成約数も4倍とかなりの成果が出ているようですが、これからどのような展開を考えられていますか?

平山氏:
CASTER BIZはほとんどの業務をお願いできるので、さらに業務切り分けを推し進めていきたいですね。たとえば現状カウンセリングの日程調整はカウンセラーが行っているのですが、予約確定メールの送付が遅れることによって離脱が発生してしまうことも多いです。CASTER BIZに任せることで、1時間以上は待たせないようなオペレーションに変えられるかなと思っています。

見込み顧客に送るメルマガの作成も、今は週に一本カウンセラーが書いているのですが、CASTER BIZでメルマガ作成のノウハウがあるスタッフに依頼することも考えています。突発的に一通だけ、とかでも対応してくれるのが心強いですね。

今は月間30時間のプランなのですが、既に予定以上に業務をお願いしてしまっている状態です。でも、30時間以上の作業についても翌月の時間から前借りの調整ができたりとかなり柔軟に対応してくれるのは助かります。フロントと呼ばれる窓口の担当者のレスもとにかく早くて的確で、レス待ちによる業務の滞りがありません。社内に相談するよりよっぽど早いですね。

このフロントを起点に、あらゆる相談に柔軟かつ的確に対応してくれるので、今回のような想定外のグロースにも慌てることなく、遠慮なくアクセルを踏むことができます。社内でこの作業をこなせるスタッフを賄おうとすれば当然採用コスト(時間もお金も)がかかりますし、その後の教育にももちろんコストがかかります。それらのコストもCASTER BIZならゼロにできます。これからの事業成長の構想は、CASTER BIZ抜きでは考えられません。

カメラマン:片岡龍太郎