企業が発信した広告メッセージが思わぬ反発を受けて延期や中止に追い込まれる、いわゆる「炎上広告」のニュースが今年は頻繁に報道されました。

しかし「炎上を防ぐ」と言っても何をすれば良いのかわからないもの。今回は2019年に実際にあった企業広告の炎上事例をご紹介し、炎上の防止策について解説します。

2019年の炎上事例

SNS向けの広告以外でもSNSを使って拡散され、結果炎上してしまうことがあります。2019年には、次のような企業広告が炎上しました。

西武・そごうの男女差別問題

西武・そごうでは「女の時代なんていらない」から始まる、新春のCMが炎上して話題になりました。以下、コピー全文です。

女の時代、なんていらない?
女だから、強要される。
女だから、無視される。
女だから、減点される。
女であることの生きづらさが報道され、そのたびに、「女の時代」は遠ざかる。
今年はいよいよ、時代が変わる。
本当ですか。期待していいのでしょうか。
活躍だ、進出だともてはやされるだけの「女の時代」なら、永久に来なくていいと私たちは思う。
時代の中心に、男も女もない。
わたしは、私に生まれたことを讃えたい。
来るべきなのは、一人ひとりがつくる、「私の時代」だ。
そうやって想像するだけで、ワクワクしませんか。
わたしは、私。

このCMで西武・そごうが伝えたかったのは「男女という枠組みではなく、私であること(個性)を讃えよう」というメッセージ。

しかし女性にパイが投げつけられ、クリームまみれにされながらも、立ち上がって「時代の中心に、男も女もない」「わたしは、私」と締めくくられるこのCM は、男女差別がある現状を打破しようという内容ではなく、映像と言葉に表現の矛盾が生じているように見えます。

実際に差別や強要を受けてきた女性は怒って当然なのに、このCMでは怒りの感情が排除されているため「気分が悪い」「悪意を感じる」と女性たちからの批判が集まったのです。

ロフトの消費者を揶揄したプロモーション

ロフトが2月にローンチしたバレンタイン広告は、炎上によりわずが数日で停止・削除することとなりました。
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引用:YouTube LOFT公式チャンネルより

広告のメインメッセージは「女の子って、楽しい!」とのことですが、実際に広告動画を見てみると、メッセージとは裏腹に女の子同士の陰湿なやり取りが描写されているのです。(現在、広告動画は削除されています)

動画の中では相手に対する不満を抱えたまま「ズッ友!(ずっと友達)」という文字が出てきたり、5人の集合シーンでは後ろからのカットで髪を引っ張る・つねる・スカートをめくるなど、「表面では仲良くしてても裏でいがみあっている」様子を揶揄しています。

消費者からは「何を意図しているかわからない」「ここでチョコ買ったら仲が悪くなりそう」「女の子は陰湿〜と言いたげな広告を作って、なぜ購買意欲が増進されると思ったのか」など批判の声が相次ぎました。
参考:ロフトのバレンタイン広告が物議で取り下げに。「女は陰湿という考えが透けて見える」「なんの意図?」【UPDATE】|ハフポスト

阪急電鉄の中吊り広告 神経を逆撫で

阪急電鉄では6月1日から、通勤通学する人へ向けた約80種類の応援メッセージが中吊り広告をジャックしました。メッセージは様々な年代や業種の言葉を集めた「はたらく言葉たち」という書籍から抜粋したもの。その中でも物議を醸したのは次のメッセージです。
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引用:阪急電鉄 中吊り広告より

他のメッセージでは心に響く言葉が多くありましたが、上記の広告を載せた車両は11日より運転休止となりました。

「アナと雪の女王」のステマ問題

11月22日に公開された「アナと雪の女王2」の感想ツイートが「ステマではないか?」と話題になりました。

12月3日に7人の漫画家が「アナと雪の女王2」の感想を漫画にしたツイートを同時に投稿。それを見た一部のSNSユーザーから、同じハッシュタグやタイミングなどの怪しさから「ステマではないか?」との指摘が相次ぎ、5日と11日にウォルト・ディズニー・ジャパンが謝罪文を発表。
アナ雪2.png
参考:『アナと雪の女王2』感想漫画企画」にご参加いただいたクリエイターのみなさま、そしてファンのみなさまへ|ウォルト・ディズニー・ジャパン

同時に、漫画家も「映画に招待され、PRを依頼された」「PRの明記はしないように言われた」と一斉に告白し、ステマだったことが明らかになりました。
参考:「PR入れないでと指示受けた」 ステマ問題、漫画家側は知らずに関与か、PR漫画家に実情聞いた

報酬を支払ってのPR依頼にもかかわらず、PRである旨を明記しないこと、もしくはPRを明記しないように依頼することは景品表示法違反にあたります。企業だけでなく、PRを依頼された側の信頼も落としてしまいかねません。

炎上の防止策

それでは、炎上を防止するにはどのようにして広告を作れば良いのでしょうか?炎上の防止策を解説します。

デリケートなテーマは表現に注意する

男女差別はもちろん、育児問題やいじめ問題などもデリケートなテーマです。社会問題を企業広告に取り入れると注目を浴びやすいですが、同時に炎上リスクとも隣り合わせであることを忘れてはいけません。

社会問題を体現するために弱い立場が責められるような広告を作りがちですが、消費者はそういった「弱いものいじめ」に敏感です。デリケートなテーマを取り扱うときには、表現方法に細心の注意を払いましょう。

「あるあるネタ」は消費者目線で見直す

ロフトの事例では、過去にキリンビバレッジが出した午後の紅茶のプロモーション『みなさんの周りにいそうな#午後ティー女子』が「午後の紅茶を買ってる女性を馬鹿にしてるようにしか見えない」などの批判の声が上がり、炎上した事例とよく似ています。
参考:『午後ティー女子』のイラストが炎上。キリンに対して「顧客を悪く描いて何が楽しいのか」の声

どちらも「あるあるネタ」を使った結果、消費者をバカにしたような広告になってしまったのです。

「あるあるネタ」を使うと消費者の共感を集めやすいのは確かですが、炎上を防止するならポジティブなものだけにするか、結果的に消費者をバカにしていないかをローンチ前に徹底的に見直す必要がありそうです。

徹底して調査する

年代も環境も違えば、人の感性も大きく変わります。製作者や企業側だけの感性で広告を作ると、まったく違った感性を持った消費者からの批判を集め、炎上しかねません。

自分や自分が生きている世界の「ものさし」だけで、物事を判断してはいけないということですね。

炎上リスクを抑えるには、時代の流れや現代の消費者の生活、平均月収、環境などを徹底して調査したうえで、ターゲットの感性に合う広告を作る必要があるでしょう。

指針の周知と遵守を徹底する

広告やプロモーション、マーケティングにおける指針は「こうしましょう」という曖昧なものではなく、必ず守るべきルールです。

企業の一部だけがマーケティング指針に従っていても、誰か1人でも破ってしまうと、炎上どころか法令違反を侵す可能性も。

今一度マーケティング指針を見直し、社員全体への周知と遵守を徹底しましょう。広告制作を外注する際にも、指針の再確認をしっかりと行いましょう。

最低限の炎上リスク対策を

自社では「良い広告ができた」と思っていても、いざ世に出してみると意図せず炎上してしまった、というパターンがほとんど。

思い切った広告であるほど多少の批判や賛否両論はどうしても避けられないものですが、それが大炎上することを防ぐことは可能です。

あらゆる点に注意しながら、炎上リスクを抑えた広告制作を心がけましょう。

炎上に対する理解を深める

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