昨今、ニュースで「Withコロナ」「新しい生活様式」といった言葉をよく見聞きするようになりました。新型コロナウイルス問題は、私達の日々の生活スタイル、消費行動などに大きな変化をもたらしており、まさに時代の分岐点とも言えるでしょう。

ビジネスパーソン、特にマーケティング担当者であれば、コロナ前後で世間の消費動向がどう変わるのか、ポイントを押さえておきたいものです。そこで今回の記事では、緊急事態宣言中の生活の変化に関するデータなどを用いて、今後の消費行動について読み解いていきます。

「#生活習慣の乱れ」がトレンドワードに

[図1]
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出典:生活習慣の乱れ|ツイッタートレンド速報

[図1]は、「#生活習慣の乱れ」というハッシュタグTwitterでトレンド入りした時期を示したものです。6月2日の午前中、この言葉が突如、Twitterでトレンド入りしました。日本中で多くの人々が「#生活習慣の乱れ」というテーマに関して何らかのコメントを投稿していた様子が伺えます。

[図2]
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出典:生活習慣の乱れ|Googleトレンド

[図2]は、「生活習慣の乱れ」という言葉の検索ボリュームについて、「Googleトレンド」で過去30日間について生成したグラフです。

過去30日間で絞ると、ハッシュタグ「#生活習慣の乱れ」がTwitterトレンド入りしたのとタイミングを同じくして6月1日~3日に検索ボリュームの大きな山ができています。この時期は「生活習慣の乱れ」について、世間で関心が高まっていたタイミングだと伺えます。

6月1日ごろって何のタイミング?

5月25日に、全都道府県において緊急事態宣言が全面解除されました。その後、6月1日ごろといえば、在宅勤務期間が終わって、以前のように満員電車に揺られての通勤が再開したり、学校が再開した時期と重なります。また、厚生労働省からは「新しい生活様式」の提言もなされました。

つまり、世間の人々が「新しい日常」をスタートさせた頃に当てはまります。多くの人々が外出自粛期間中に生活習慣が乱れてしまい、新しい日常が始まったタイミングで「リセットしなければ」と強い問題意識を持ち始め、たくさんのツイートや、検索行動につながったのでは、と推測することができます。

参考:満員電車に逆戻りの6月1日 「在宅勤務できる人は頼む」出社必須の業種の叫び|J-castトレンド

慣れない在宅勤務で生活リズムが乱れる

[図3]
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出典:コロナウイルスに関する調査レポート|株式会社アスマーク調べ

[図3]は、株式会社アスマークによるリサーチ結果「コロナウイルスに関する調査レポート」から一部を抜粋したもので、自粛生活期間中に感じた体の変化を示したものです。

このデータは、首都圏(一都三県)在住の方500人に対する5月26日(火)夜~5月27日(水)朝にかけての回答データをまとめたものです。グラフの中で、赤枠で囲まれた部分に注目してみましょう。

男女共通して「太った」と回答した人が多いことがわかります。次いで、「筋力が落ちた」という回答も目立ちます。また、特に女性では「睡眠時間が不規則になった」「肌が荒れた」という回答も多くなっています。

コロナ太り

[図4]
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出典:コロナ 太り|Googleトレンド

[図4]は、「コロナ太り」という言葉の過去90日間の検索ボリュームについて「Googleトレンド」を用いて示したグラフ及び関連トピック、関連キーワードの上位を抜粋したものです。

前項で外出自粛期間中、男女ともに「太った」と感じた人が多いことを述べました。昨今、世間では「コロナ太り」という言葉もよく聞きます。

そこでGoogleトレンドで「コロナ太り」という言葉の検索ボリュームを調べてみると、4月中旬から5月中旬にかけて、大きな山を迎えていることがわかります。この時期は、ちょうど緊急事態宣言が全国に発出された期間と重なるため、こちらのデータを見ても、やはり外出自粛生活期間中に「コロナ太り」を気にしていた人が多かったと言えるでしょう。

併せて「関連トピック」「キーワード」を見ても、「太った」「ダイエット」「食事」に問題意識を持つ人が急激に増加していることが伺えます。外出自粛で通勤・通学の習慣が無くなると、一日当たりの歩数が伸びない、つまり運動不足につながって太ってしまう、と考えられます。

また、ずっと家で過ごしていると、外勤の時とは食生活も少し違って、「空いた時間に、つい何かつまんでしまう」といった状況や、「在宅なので、お腹が空いたらいつでもすぐに食べられる」といったシチュエーションも想像できます。その結果、「コロナ太り」に陥って戸惑い、問題に感じる人が急増したのではないでしょうか。

「新しい生活様式」とは

外出自粛は全国的に解除されたとは言え、「Withコロナ」の毎日はこれらも続いていく、ということで、厚生労働省からは「新しい生活様式」が提唱されています。以下に、「食生活」や「運動」と関係が深い部分を一部抜粋。

●買い物
通販も利用
●娯楽、スポーツなど
筋トレやヨガは自宅で動画を利用
●公共交通機関の利用
徒歩や自転車も併用する
●食事
持ち帰りや出前、デリバリーも
一部抜粋:新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」を公表しました|厚生労働省

この「新しい生活様式」を見ると、引き続き「3密を避ける」「なるべくステイホーム」といった点がポイントとなっていることがわかります。

「新しい生活様式」の下で流行るサービス・商品とは

ここからは、「新しい生活様式」の下で、今後はどんな商品・サービスが世間の人々に受け入れられていきそうか?という論点で述べていきます。特に、前半で述べた「生活習慣の乱れ」という、今まさに世間で多くの人々が抱える悩みを解決してくれるような、「食生活」「運動」「睡眠」というカテゴリに焦点を絞って紹介します。

ミールキット、完全栄養食、冷凍宅配弁当

「ステイホーム」が引き続き推奨されていますから、「内食(うちしょく、ないしょく=家庭で調理して食べること)」が伸びると考えられます。従来の、「近所のスーパーで食材を買ってきて調理する」よりもむしろ、注目すべきは「ミールキット」のサブスクリプションサービスなどです。

外食に対して足が遠のいている分、「内食」、つまり家で料理をする機会は増えているかと思います。とは言え、3食、家族全員分、栄養バランスや摂取カロリーにまで細やかに気を配って手料理をするというのはなかなか大変なものです。家庭で料理を担当しているけれど、実はそれほど料理が好きではない、得意ではないという人も決して少なくないでしょう。

そんな人の強い味方になってくれるのが、予め半調理した食材や調味料、レシピが全てセットになった「ミールキット」です。この「ミールキット」の通販を手掛ける代表的な会社に「Oisix」がありますが、直近の決算では売上高が約2割伸長しています。
 
また、1品で必要な栄養素を摂取できる「完全栄養食」というものもこれから伸びそうです。「完全栄養食」とは、例えばバスタ(麺)状になっていて、加工の段階でビタミンやミネラルなど、1日に必要な栄養素を配合して作られているもの。アメリカのシリコンバレーでブームになっているそうで、簡単かつ栄養価の高い常備食として活用できそうです。

そして、「ミールキット」とも少し似ていますが、既に調理済みのものを冷凍加工して宅配される「冷凍宅配弁当」というジャンルもこれからますます伸びそうです。食品宅配各社は「巣ごもり需要」で直近売り上げが急伸しており、ここ数か月でWeb広告を見かける場面も急増したと感じます。

「巣ごもり」で内食シーンは増えるけれど、調理の負担からは解放されたい。そんなニーズに応えるサービスとして、これからますます広がっていきそうです。この「冷凍宅配弁当」は、「妊婦さん向け」「生活習慣病が気になる人向け」「ダイエット食」「体を鍛えている人向け」など、さまざまな健康ニーズに応えるメニューが用意されている点も魅力です。

参考:オイシックス最終決算、宅配事業「Oisix」売上高が19%増|通販通信
パスタ食べればサラダは不要 1品で済む「完全栄養食」|日経ビジネス
〈食品宅配各社〉 コロナ禍で直近売上が急伸/巣ごもり需要を順調に獲得|日流ウェブ

オンラインフィットネスや瞑想アプリ

オンラインフィットネス」や「瞑想アプリ」「マインドフルネスアプリ」など、ウェルネス(=広義の意味での健康)系アプリやWebサービスもこれから伸長していきそうです。先述のように、「ステイホーム」で運動不足に陥り「コロナ太り」に悩まされている人が増えています。それを解消したい人々にとって、「オンラインフィットネス」はまさに、今すぐニーズに応えてくれるサービスだと言えるでしょう。

厚生労働省の「新しい生活様式」でも“筋トレやヨガは自宅で動画を利用”と推奨していることから、今後こういったオンラインフィットネスサービスを利用し始める人はますます増えていくと予測できます。

単に画面越しにインストラクターがヨガやエアロビクス、筋トレなどを教えてくれるだけではなく、「オンラインパーソナルジム」なるサービスも複数社、登場しているようです。
 
また、「瞑想アプリ」や「マインドフルネスアプリ」も急成長していると報じられています。コロナ禍の出口が見えず、日々、生活していて何かと先行き不安になってしまうものです。そうなると人は、何か心の拠り所を求めたり、自分を見つめなおしたり、ホッとひと息落ち着く時間を作りたくなるものなのかもしれません。

参考:オンラインフィットネス、新たな商機創出にサービス続々 いつでもライブ配信 無料レッスンも|ITmedia エグゼクティブ
業界初!オンラインパーソナルジムの検索・比較サイト「宅トレNAVI」をリリース。|PR TIMES
瞑想とマインドフルネスのアプリは新型コロナ禍で急成長中|Tech Crunch

自転車

厚生労働省が提唱する「新しい生活様式」の中では、公共交通機関の利用について“徒歩や自転車も併用”と呼び掛けられています。満員電車を避けるために、自転車の需要も急増中だそう。また、「自転車で体を動かし、運動不足を解消して、脱・コロナ太りしたい」という思惑もあることでしょう。

ここにはいわゆる「ママチャリ」だけではなく「ロードバイク」「マウンテンバイク」「電動アシスト自転車」などさまざまなタイプのものが含まれてきます。単に通勤・通学目的だけではなく、休日のリフレッシュ、ツーリングのため本格的にロードバイクデビューする人が増えれば、ロードバイク本体だけでなく、その周辺グッズであるウェアやヘルメット、バッグ、メーターなども売れ行きが伸長しそうです。

スリープテック

睡眠の質を向上させるテクノロジー「スリープテック」の分野にも注目です。先述した、外出自粛期間中の体の変化のリサーチでは「睡眠時間が不規則になった」との回答が多かった、と述べました。

そこから考えると、睡眠を改善したいという需要は高まっているはずですし、質の良い睡眠を取ることは、このコロナ禍で免疫力・抵抗力を蓄えておくためにも必要不可欠な要素です。

例えば、ちょっと値が張ってもオーダーメイドの枕を作る、毎日横になるベッドを買い替える、最新のテクノロジーでスマホアプリと連携して睡眠の質を分析してくれる機能を搭載した寝具を買うといったような消費行動も増えてくるかもしれません。

参考:2020年スリープテック時代到来!まくらぼ×テクノロジーで「バズる睡眠!」|PR TIMES

日々刻々と移り変わっていく、世の中の流れを読み取る

全国的に外出自粛期間は終わりましたが、「Withコロナ」の日々はまだまだ続いていきそうです。それに伴い、今までの暮らしでは感じなかった心配事、悩み事といった、新たな消費者ニーズが浮上しています。

商品・サービスを提供する企業側は、そういった日々、刻々と移り変わる世の中の流れを機敏に読み取り、ビジネス展開を手掛けていくことが求められていくと言えるでしょう。

アフターコロナで注目される新ビジネスとは

医療現場も変化!?アフターコロナで注目の新ビジネスたち

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新型コロナウイルス感染症の流行によって、私たちの暮らしも大きく変わりました。今までなかなか普及しなかったリモート診療や、オンライン学習などのビジネスサービスもニーズの高まりによって、改めて必要性を見直され、普及しはじめています。 アフターコロナ、withコロナ時代に生まれた新たなビジネスの形とは、一体どのようなものがあるのでしょうか?本記事では、アフターコロナの時代に注目したい新ビジネスを、ご紹介します。